第三幕六話
革命が起きると、平和な日々は忘れ去られていく。一つの連絡によってその事に気づかされてしまった。
『ランス副騎士様、獣族の軍が三万攻めてきたと警備隊から連絡が来ました。』
『分かった。』
魔法は使えないし、『恩寵』もない獣族は数で攻めてくる。全員、運動神経が良すぎるから、騎士は沢山発掘できるらしい。しかし、三万は流石に多い。
「ランスは待機してて。私が行ってくるよ。」
「でも……。」
「いや、今行くべきなんだよ。私が空前絶後の騎士長だと証明するためにちょうどいい功績だからね。じゃあ、お留守番はお願いね。」
「任せろ、いってらっしゃい。」
レイチェルは手を振って、転移した。
「エド、映像をお願い。」
「かしこまりました。」
エドも転移して、こちらに映像を共有しに行った。そこで、俺はミシェルとレイチェルの戦い以上に衝撃的なものを見た。
私は確実な勝算と攻略法を思いついて、転移した。警備隊は隠密に敵の情報を伝えるのが仕事だ。ジャスミンを通して連絡したから、まだ敵は侵入したばっかりである。だから、まだ敵が固まって配置しているだろう。
『ジャスミン、獣族の近くのエルフ達にバリアをはらせて。それで、獣族を包囲して。あ……あと、私が入れるように天井は空けておいて。』
『かしこまりました。』
バリア魔法で囲うのは確かに敵の侵攻をある程度、防げるだろうが、こちらからも攻撃が出来ないから、あまり良くないとされている。しかし、今はそれが最適解なのだと信じている。
私は他のエルフ達が築いたバリアの天井の穴からゆっくりと落ちていく。
「吾輩は獣族の総大将、レパードだ。騎士長をなくした愚かなエルフ共よ、バリアなんてこすい手を使わないで出てこい。」
「こすい手ではないですよ。」
私は上空一メートルから声をかける。
「貴様、何者だ?」
「私はエルフの新騎士長、レイチェルです。」
「は……バカな奴だな。一人でバリアに入ってくるなんて、自滅かよ。」
「バカはあなた達です。」
「重力……」
重力魔法をバリアの内部にかけると、三万の獣族が次々に呻き声をあげながら、地面にひれ伏していく。
「ぐはっ。」
「なぜ……身体が重すぎる。」
私は三万の獣族を見下ろしながら、地面へとゆっくり、ゆっくりと降りていく。だが、レパードだけは立ちあがろうとしている。
「く……おい、俺は立てたぞ。」
「見ればわかります。あなただけは重力魔法を解除してあげます。」
「ありがとな……これで、お前を殺せるぜ。」
レパードは恐らく彼の全速力でこちらにかける。砂煙が舞い上がり、普通は目で追えないスピードだ。しかし、私にはスローモーションのように見える。剣を軽く避けて、レパードの右足を切り落とす。
「あ……ぐぁぁぁぁああ。」
私はそのまま彼の左手も切り落とす。
「うぁぁぁぁああ。」
レパードの叫びがこだまする。
「大丈夫、あなたは生かすしてあげます。その代わりに、他の獣族は殺します。」
「重力……」
さっきよりも更に大きな魔法陣が地面を覆い尽くす。遥か彼方の空から、隕石が降ってくる。私は、私とレパードを除くバリアの範囲内に隕石の雨を降らせた。
「嘘……だろ。」
「隕石降ってくるぞ、頑張って立ち上がるぞ。」
そんなことを言いながら、隕石に押し潰されていく三万の獣族を眺める。
「は……なん……だよ、これ。」
レパードは隕石に潰されていった獣族の味方を見て、愕然としている。
「あなたはこのことをちゃんと獣族に伝えてくださいね。そしたら、獣族はもう二度とエルフに攻め込む気は無くなるでしょう。」
「え……う……あぁぁぁぁああ。」
レパードは道道の石につまづきながら、獣族の陣地へと走って戻っていく。私はそれを見て安心して息を吐き、血塗られた地面からランスの元へと転移した。
俺はこの光景を見て震えた。そのくらい、レイチェルの強さは圧倒的で美しかった。これだけの力があれば、簡単にエルフを滅ぼすことができるだろう。これだけの力が一魔女にあるのに何故、魔族は戦争に勝ててないのだろう。
「ランス、ただいまぁ。見てた?」
「見てたよ、それはもうらけもう獣族を見てられなくなるくらいには見てたよ。」
レイチェルは満足そうな表情を浮かべている。
「ねえランス、これで獣族はもう大丈夫かな?」
「ああ、大丈夫じゃない。レイチェルが怖くて来ないだろ。」
「はは、確かに。」
この感じだと、レイチェルがやろうとしたら、いつでもエルフを滅ぼすことができそうだ。自分が死ぬかもなのに、怖いと思えない自分を少し怖く思ってしまった。




