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壊れかけの拡声機から流れる不協和音。
塗装は剥がれ落ち、一定の緩いスピードでガタガタ進む回転木馬。
ギシギシと不安な音を立てて回る、ゴンドラが吊り下げられた円状のもの。
動かない動物を模した乗り物。
此方の方が下手なやつよりよっぽど雰囲気のある幽霊屋敷。
この世界にある何処かの廃遊園地。
廃遊園地と言う割には、どのアトラクションも絶賛稼働している。
絶賛とは名ばかりで、此処に従業員や客は俺を除く誰一人居ない。
じゃあこの遊園地で遊んでいるのかと聞かれれば、別にそういう訳でもない。
こんなアトラクションには乗り飽きたし、とうの昔に興冷めだ。
「楽しい」なんかじゃ俺の感情は満たされない。
じゃあ何なら、この空っぽの感情は満たされるのか。
いい加減、新しいことが起きてほしい。
無意味で無駄な期待をしながら、明る日も明る日も廃れたモノと遊ぶのはウンザリだ。
でも無理だ、結局今日も繰り返しで何も変わらない、何も起きやしない。
━━━否。前言撤回しよう。
今日に限っては面白い事が起きそうだ。
アナタの背後に容易く近付けば、こう告げてやる。
「ようこそ。ボクはルート。君達のifであり、観測者であり、そして修正者だ。よろしく〜。」