インスパイア
「はあ・・・・・はあ・・・・・」
やはりというか、なんとなくそんな気がしていたが、幽霊の狙いは僕らしい。
上手くアカシくんたちと逸れた振りをして走り続けた。
「実は、ハンネさんに頼まれていたんです」
そんなの、初耳だ・・・やはり僕はハンネさんに心配ばかりかけている。
「そこに行けばハンネさんの仕事場があるはずです!」
近くにあったのは不幸中の幸いだろう。
僕は走り続けた。フクトミさんの話では、もう目と鼻の先だ。
「うわっ!」
しまった・・・・・。
あともう少しなのに・・・・・曲がり角で、人にぶつかってしまった。
(まずい・・・追いつかれる・・・)
「どーしたんすか?そんなに慌てて?」
ハンネさん??
「説明は後です!!」
フクトミさんがそう言うと、ハンネさんも幽霊を認識している。
やはり、僕の能力が働いている・・・・・?
「また幽霊すか・・・・まあ、丁度良かった」
相変わらずダルそうだ。
「一応聞きますけど、あなた、悪い幽霊ですよね?」
幽霊は自信満々で答えた。
「さあな?お前がハンネか?」
ハンネさんを知っている・・・?どういうことだ・・・?
「呪いころ・・・・呪い・・・が・・・効かん?」
「あー、もういいすか?忙しいんで」
「ふっっっっ!!!!」
やはり、こうなるのか・・・・・。
ハンネさんの回し蹴りが腹に突き刺さった・・・・。
「あぐっ!?!?」
「・・・・なんで?・・・・なんで・・・・触れるの・・・・?」
そして塵となって消えてしまった。
「・・・・・オオォ!!?」
ハンネさんが急に驚いたような大声を出した。
「ど、どうしたんですか?まさか・・・・怪我でも」
「ありがとうございます!サトウくん!お陰でインスピレーションが降って来ました!」
初めて見る、眩しいほど輝いた笑顔だった。
「イ、インスピレーション??な、なんのことですか????」
そういうと、あっという間に走り去ってしまった。
お礼を言う遑もなかった・・・・。
「ハンネさん、アッシのこと忘れてない?」
「ま、まあまあ。なんかおかしかったですよ。今日のハンネさん」
しかし、気になる。
幽霊がハンネさんを知っていた・・・・?
もしかして僕を狙ったのは、ハンネさんを誘き寄せるため・・・・・?
何か、嫌な予感がする。
不安が大きくなるとともに、僕の霊力はこれ以降急速に高まっていく。