夏休み
僕たち学生にとっては一大ベントだ。
夏休みが、もうそこまで来ていた。
僕はアカシくんたちや、他にも沢山の友達と夏休みを満喫することになった。
カレンダーには予定がびっしりだ。
「何もかも、ハンネさんのお陰だな」
あの後、ハンネさんに会うことはなかった。
幽霊もたまに視ることはあったが、浮遊霊や害のない地縛霊だけだ。
「アッシも同じ気持ちです」
僕の守護霊となったフクトミさんは、ほとんど自由に動き回れるらしく、
夜な夜な町をパトロールして霊たちの治安維持に貢献しているらしい。
お寺や神社とも頻繁に連携を取っているそうだ。
最近は僕の傍にいる時間の方が少ない。
「しかしユウさん、ハンネさんに会いたくないですかい?」
家で宿題をしている僕に、珍しくオフのフクトミさんが言った。
「まさか、ハンネさんは忙しいんです。もちろん僕も」
吹っ切れたように振舞っていたが、本当は寂しかった。
フクトミさんとっては兄貴分だったのだろうが、僕にとっては憧れの人だった。
この人のようになりたい、この人の一挙手一投足を見逃すまいとした、初めての人だった。
アカシくんたちや先生のように、僕も忘れるように努めなければならないだろう。
いつでも鮮烈に思い出せる。たった3日間 行動を共にしただけの、烈火の如き男を。
「行こーぜ、ユウ」
「うん、アカシくん」
「悪りい!ユウ!数学の宿題見せてくんね?!」
「ミドリタくん、また?」
「ユウってさ、好きな人いるの?」
「まさか、いないよ」
僕の毎日は楽しく充実している。これ以上何を望むって言うんだ?
少しずつだ。少しずつ、忘れればいいさ。
夢から醒めるように・・・・・。
--------夏休み--------
みんな部活やアルバイト、夏期講習などで多忙な日々を送っている。
僕も例に漏れず、勉強や遊びに勤しんでいた。
「肝試しって、マジで怖えーな」
「今度は置いてかないでよ」
「わかってるよ!脅かすなよ!」
「ははは、アカシ、一番ビビってるじゃねーか」
「ほんとよ、女子もいるのよ?」
「ほっとけ!昔から苦手なんだよ・・・」
内気な僕が、こんなに楽しい夏休みを送れる日々が来ようとは、少し前まで思いもしなかった。
しかし、残念ながら事件は起こってしまうのだ。
ぞく・・・・・・
「・・・・・今の感覚・・・・まさか?」
(フクトミさん、聞こえますか)
(ユウさん!感じましたか?!)
モモコさんの時よりも強い霊力だ・・・・・。
一体なぜ?僕の霊力は封印されているのに・・・・。
しかし、今は町の最端部にいる・・・神社は遠すぎる・・・・どうする・・・?
(ユウさん!仕方がありません、ハンネさんのところに行きましょう!)