いざ、神社へ
翌日の日曜日。
僕は自転車でこの町の中心、紹介された神社に向かった。
到着すると、巫女さんが境内を竹箒で掃除している。
絵に描いたような神社の風景だ。
眠っていたフクトミさんが霊気に当てられて起きたようだ。
「お気づきでしょうが、あの巫女さん、アッシが視える人です。今までの誰より強い霊力を感じます」
「はい・・・僕より何倍も強い・・・・・」
これまで何人か霊力の強い人とすれ違うことはあったが、誰も僕には及ばなかった。
それは運が良かっただけらしい。これが本物の霊能力者なのだろう。
「幽霊が何の用かしら?」
いつの間にか僕たちの後ろに回っている。
「こんにちは。僕はサトウ ユウと申します。こちらは幽霊のフクトミさんです」
「あなたたちね?話は聞いてるわ」
「案内するわ。ついて来て」
するとフクトミさんが尻込みした。
「アッシは流石にまずいでしょう。ここで待ってますよ」
「別にいいわ。その気になればそんな低級霊なんて消し去れるもの」
「それは絶対に許しません・・・・・」
「・・・・・おかしな奴ね。冗談よ、悪い気は感じないし」
「アンタが来た理由も大体想像がつくわ」
どうやら僕は、ほんの少しだけ強くなれているようだ。
「父さん、例のお客さん。除霊について聞きたいそうよ」
「おお、奥に通してくれ。ミコト、お前も同席しなさい」
「ったく、めんどくさいわねえ」
巫女さんってお淑やかなイメージがあったけど、現代の巫女さんはこんな感じなのだろうか?
「なるほど。素晴らしい霊力です」
「あのう・・・・僕、ここで修行できませんか?」
「修行ですか・・・・・うーむ」
神主さんは色々と教えてくださった。
まず僕のような神職でない霊能力者は、色々と問題があるそうだ。
詳しくは話せないが、霊能力者を取りまとめる組織があり、除霊にも報酬が支払われる。
何より、神職でない者が除霊で死なれては困るということだ。
「わざわざ首を突っ込むような世界じゃないってことよ」
・・・・・・甘かった。思い違いも甚だしい。
「・・・・・わかりました。突然押し掛けてすみませんでした」
神主さんは僕に霊力を抑える祈願を掛けてくれた。
フクトミさんはいつの間にか僕の守護霊になっていたらしく、
霊力を抑えた状態でも視ることができるようになっていた。
「残念でしたね、サトウさん」
「しかし、神主さんの言うことも尤もですぜ。命の危険に晒されかねないんですから」
「・・・・・・サトウさん?」
「うぅっ・・・・・・・ぐすっ・・・・・」
僕は、自分の思慮不足を恥じた。わかっているつもりになっていただけだった。
文字通り命がけの仕事だ。そんなこと、言われるまでもないのに。
取り立てて長所のなかった僕が、霊能力者だなんて言われて、知らず知らずのうちに舞い上がっていたのだろう。
実生活では何の役にも立たないし、腕力が強くなったわけでもないのに・・・・。
「どこが強くなっているんだ・・・・・弱いままじゃないか・・・・・」
僕は自分に対する不甲斐なさで泣いた。
これから先の人生で、今が美しい思い出になることを願いながら・・・・。