フクトミさんとモモコさん 其の5 〜第1部完〜
「ありゃ?なんですか?」
幽霊の体が砂のように崩れて行くと、きれいさっぱりなくなってしまった。
「・・・・・ヤツの霊気が消えました」
「?・・・・どこかに隠れたってことですか?」
「・・・・・この世のどこにもありません。ハンネさん・・・・多分、除霊したんだと思います・・・」
この人には、最初からお経なんて必要なかったのだ。
蹴りだ・・・・・この常識外れの男は、蹴りで除霊をしてしまった。
「じゃあ何よりですね」
ダルそうなハンネさんに戻っている。
モモコさんはその恐ろしさにガタガタ震えていた。
「すげえだろ!?俺の兄貴分なんだぜ!」
「ハッ!・・・そうね、私ったら助けてもらったのよね・・・・」
「これで懲りてください。次は助けませんよ」
「・・・・・はい」
「モモコ・・・・・俺は行くよ・・・・・」
「いいんですか?フクトミさん」
「ええ・・・・アッシは世の為人の為に働きます。すまない、金はどうにかして必ず返すよ」
僕らが家を出る時も、モモコさんは茫然自失状態だった。
しかし、僕らがマンションのエントランスを出た時だ。
上から大声で、モモコさんが叫んだ。
「マルちゃん!またいつでも来て!私にも償いをさせて!!」
フクトミさんは振り返らずに親指を立てた。
「さて、一件落着ですね。帰りますか」
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「良かったですね」
「はい・・・・ありがとうございます・・・」
そう言うと目から一筋の涙を流した。
なんだか、今のフクトミさんは、ちょっとだけカッコいい。
ハンネさんの除霊を目の当たりにした僕は、また自分の何かが変わって行くのを感じていた。