フクトミさんとモモコさん 其の2
404号室の前に到着すると、やはり濃い瘴気のようなものが部屋から漂っていた。
「・・・・ん?開いてますよ?これ」
僕らは迷わずドアを開けた。
どうやら、モモコさんは買い物帰りだったのだろう。
買い物袋と食品が床に散らばっている。
偶然にもそのお陰で、僕らは労せずして部屋に入ることができたわけだ。
問題は目に飛び込んで来た光景だ。
モモコさんと思しき女性が宙に吊り上げてられている。
吊り上げているのはもちろん幽霊だ。
人の姿を留めていない上に、フクトミさんとは比べ物にならない強力な霊気を放っている。
「フクトミさん、あれは幽霊でいいっすか?」
「幽霊です!ヤバイです!かなり強い力を持ってます!一旦逃げましょう!・・・・え?」
「ふっっっっ!!!!」
言うが早いか、ハンネさんの回し蹴りが炸裂していた。
幽霊は吹き飛び、苦悶の声をあげた。
「あごォ!!・・・・なんだお前ら!人ん家に勝手に入って来やがって!」
立ち上がれないまま、吐瀉物を吐きながら幽霊が叫んだ。
「あなたの家なんすか?」
「この女の家に決まってるだろ!!」
「じゃあ言われる筋合いはないすね。バカなんですか?」
いつものハンネさんだが、なんだか少し・・・怒っているような・・・。
「・・・・・馬鹿はお前だ・・・・呪い殺して・・・・・」
「モモコ!今助けるぞ!」
「ええい!人(?)の話を聞けい!!」
「なに・・・なんなのこいつ・・・?」
完全にパニクっている。そういえば僕も最初はそうだった。まともな人間なら当然の反応だ。
「めんどい・・・・」
ハンネさんは幽霊にゆるりと近づくとサッカーボールキックを放った。
「ぐふっ!!」
「動けますか?」
「・・・・う・・・動けるわけね・・・・・・」
「じゃあしばらく寝ててください」
やはり、この人は恐ろしい・・・・。
「土足で上がってすみません」
この非常事態でも常識に基づいた謝罪をしているが、逆に非常識な気がして来た。
「モモコ!怪我はないか?!」
「・・・・・え・・・マルちゃ・・・?」
フクトミさんを視たモモコさんは、遂に気絶してしまった。