フクトミさんとモモコさん 其の1
「久しぶりですね、変わりないですか?」
「ハンネさんのお陰で、毎日学校に行くのが楽しみです」
僕たちは2週間ぶりに再会を果たした。
ハンネさんが仕事で忙しかったらしい。
何の仕事をしているのかは、怖くて聞けていない。
「何よりです。それでは行きますか」
僕らはタクシーに乗り込むと、フクトミさんの元嫁であるモモコさんの家に向かった。
「てっきり、ハンネさんが車で来るのかと思いました」
「ああ、私は運転はしないんですよ」
そういえば、僕らが出会った夜も運転していたのはサクラさんだった。
僕はハンネさんのことを知りたくてたまらなかった。
「事故とか面倒くさいじゃないですか」
僕は少しずつ、ハンネさんの無敵とも言える思考を理解し始めていた。
この人は決して隙を作らない。
ロックスターのような見た目に反して、酒も煙草もやらないそうだ。
改めて見ると、細身だが引き締まった体をしている。
”一部の無駄もない肉体”という表現がピッタリだ。
あの時、その気になればアカシくんたちを返り討ちにすることもできたのだろう。
「暴力を振るうのは最低です。力で屈服させても、必ず綻びが出ます」
「フクトミさんを蹴ったじゃないですか・・・・」
「あれは正当防衛ですから」
そしていつでも直球でド正論を振りかざす。
そうこうしていると、フクトミさんが結婚2ヶ月目にして別居した、モモコさんの住んでいるマンションまでやってきた。
フクトミさんは、やはり緊張しているようだ。
ハンネさんもそれを気遣ってか、フクトミさんの背中をポンと叩いた。
2人はまるで親友のようにも見えた。僕は、フクトミさんが少しだけ羨ましくなった。
しかし、マンションの4階が近づくに連れ、霊感ゼロのハンネさんを除いて、あるものを感知した。
「・・・・!・・・フクトミさん・・・・これって・・・」
「はい!間違いありません!霊気です!!」
きっと、いや間違いなくモモコさんだろう。