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異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


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追加の援軍・妹

 

「……敵を倒さなくても、最低限これ以上周りに逃げないようにすればいいのよね?」

「え? ああ、まあそうだな。でも、母さん何かやるつもりか? 新樹が移動すれば敵が生まれる範囲も移動するから壁を作ったりしても意味ないと思うぞ?」


 実際、壁を作ったり大穴を作ったりしたけど、神樹の移動に合わせて無意味になった。


「大丈夫よ」


 だが、俺が無理だと言っても母さんは優しく微笑み、立ち上がった。


 そして、先ほどの親父のように戦場の方へと歩いて行った。——かと思ったら、少し歩いたところで足を止めた。


「っ……!」


 直後、母さんからなんともいえない強力な圧を感じ、ビクリと体を跳ねさせてしまった。

 この感じは、おそらく魔力だろう。つまり、母さんは何か魔法を使おうとしている。それも、かなり強力な魔法を。


「——《地割れ》」


 そんな俺の考えはあっていたようで、母さんが口を開いて言葉を発すると魔法が発動し、大地が裂けた。


 ここから見て神樹の両脇、縦に二本の線が刻まれたかのように大地が裂け、その裂け目に変異生物が落ちていく。

 正確にどれくらいの範囲なのかというのは分からないが、神樹は最低でも数キロの直径をしているはずだ。だが、母さんの作った裂け目はそんな神樹と比べても見劣りすることはなく、ここから見ただけでも神樹の直径よりも長い距離だってことがわかる。

 ぱっと見だと、神樹が縦に三つ並んだくらいの長さか? ……やばいな。


「正面は仕方ないけれど、こうして左右を移動できなくするだけでも横に流れる分は減るでしょう? 本当は向こう側もやれればいいのだけれど、流石にこれだけ距離が離れていると難しいわ」


 そんな光景を生み出した母さんは、疲れた様子を見せることもなく「あ、でもその分攻撃に回る敵が増えちゃうわね」なんて困り顔で言ってる。

 けど、それは気にしなくてもいい。援軍が来たことで余裕ができたわけだし、倒せるだけの戦力はいるんだから。


「でも移動したら……」

「その時は左右の割れ目をさらに伸ばせばいいだけよ。どうせ使った魔力なんて一日もあれば回復するもの」


 これだけやって一日で回復するのか。……母さんが戦ってるのなんて数年前のドラゴン戦くらいなものだったけど、こりゃあ母さんも十分に化け物だ。


「こりゃあ盛大にやったな。この馬鹿騒ぎが終わったとしても、この国は大変だろうなあ」

「だ、ダメだったかしら……?」

「いいんじゃねえのか? どうせ放っておけば滅んでんだ。地面が少し傷ついた程度じゃあ感謝こそすれ、批難なんてしねえだろ」


 地面が少し傷ついた? ……これ、少しか?

 ……ま、まあ、死ぬよりはマシだろ。このままだと国が滅びたかもしれないし、世界の危機だったかもしれない。それを考えると、大地に大きな線が二本引かれたくらいは許容範囲だろう。


「傷ついた程度じゃ済まないと思うけど、俺も大丈夫だと思うよ。ありがとう、母さん」

「ヴェスナーちゃん。私、役に立てたかしら?」

「もちろん。母さんが来てくれて良かったよ」

「ほんとう? なら良かったわ」


 俺の言葉を受けて、母さんはなんだかホッとした様子を見せた。

 その態度を不思議に思い、親父へと視線を向ける。


「カラカス守れって言ったのに無理してこっちについてきたから、負い目感じてんだろ。役に立たなきゃ意味がねえってな」


 あー、うん。なるほどな。

 確かに母さんだったら俺から頼まれた仕事を放棄するってのは心苦しく感じるものだろうな。

 それでもここまでやってきてくれたのは、ひとえに俺のことが心配だったから。

 そう思うと、こっちにきたことくらい笑い飛ばすことができる。


「そんなこと気にしなくていいのにな」

「お前はそう言うだろうが、あれはもう心配することが好きなんだろうな」


 いまだに子離れできないどころか必要以上に心配している母さんに対し、俺はこっそりとため息を吐く。

 だが親父はそんな俺の肩に手を置いて母さんのことを見た。その表情は、どこか楽しげというか、優しげで柔らかいものだった。少なくとも俺みたいに呆れを含んだものではない。


「心配していられるってことは、心配することができる立場にいるってことだ。前みたいに『自分は子供を捨てたんだ』なんて意識があれば、心配することすら自分を傷つけることになる。だが今はなんの障害もなく心配することが……息子のことを考えることができてる。それが嬉しいんだろ。これまでの十数年、そんなことすらできない人生だったんだからな」


 まあ、以前の母さんは俺のことを今以上に心配していたというか、ある種の偶像化してる感じだった。それが『ちょっと大袈裟に心配している』程度になったのだから、落ち着いたと言えるだろう。


 にしても……


「……そこまで母さんのことを語れるなんて、随分と〝理解〟してくれてるようで」


 誰かのことをこうも柔らかく語ることができるってのは、それほどその人のことを好きでいるってことだ。出なければここまで堂々と、悩むことなく語るなんてできやしない。

 母さんと再婚した親父が、母さんのことを考えてくれるのは嬉しいし、ありがたいことだと思う。思うんだけど……


「んだよその目は。あ? 文句あっかよ?」

「いきなりその辺のチンピラになるなよな」


 俺が親父のことを見ていたからか、親父はその視線に気づくとこっちを見て眉を寄せながら悪態をついてきた。

 だが、その悪態は普段の親父らしくなく、まるでその辺を彷徨いている小物みたいな言動だ。

 なんでそんな風になってるのかって言ったら、まあ照れ隠しだろうな。


「ま、これであとは援軍が来るまで現状を維持し続ければいいだけだな」


 もうすでに離れて行った変異生物達は仕方ないがこれ以上どこかに逃げることもないだろう。であれば、あとは向かってくる敵を処理するだけだ。

 そうして時間を稼いでいる間に援軍が来るから、合流したあとはもう神樹を叩くだけ。それで全部が終わる。


 そう。これで終わるんだ。だから、ここいらで気合いを入れ直さないとな。


 ——◆◇◆◇——


 親父達が合流してから二週間後。神樹が覚醒からもうすぐ一月が経ち、俺たちはもうそろそろカラカスとの国境に辿り着きそうなところまで来ていた。

 神樹の移動速度自体はそれほど速くないためなんとか堪えることができてるが、国境を越えるまであと数日と言ったところだろう。


 このままカラカスの領土内……というか植物が溢れている場所まで辿り着けば、神樹からの攻勢は激しくなるだろうと思われる。何せ周囲には植物だらけなんだ。それはつまり、神樹にとっての武器がそこらじゅうに散らばっていることになる。そうなったらおしまいだ。


 だから、多少の無茶があったとしても、今のうちに神樹を倒すべく攻撃を仕掛けたほうがいいんじゃないか、と悩んだその時……


「伝令! ザヴィート王国より援軍が到達いたしました!」

「援軍? ……やっとか!」


 考え事をしていたこともあるが、あまりにも援軍が来るのが遅すぎて、一瞬伝令からの言葉は何を言われているのか分からなかったが、すぐにその言葉の意味を理解し、俺はバッと顔を上げると到着したという援軍を迎え入れるように指示を出した。


「——お兄さま。お待たせいたしました」

「ん? ……え? なんでお前が……」


 そうして俺の前に姿を見せた援軍の指揮官だが、その姿は見覚えがある人物だった。

 最後に会ったのが一年以上前だったので、その時に比べれば成長し大人びている気がするが、間違いなく俺の妹——フィーリアだった。


「援軍をお送りする旨はお母さまにお伝えいたしたはずですが? ですので、こうして援軍を引き連れて参りました」


 俺が驚いた様子を見せたのがそんなにおかしかったのか、フィーリアはくすりと笑みを浮かべている。

 だが、俺が言いたいのはそういうことではない。


「いや、それは聞いてるし、ありがたいけど……でもなんでお前? お姫様だろ?」


 俺が驚いたのは、そういうことだ。フィーリアから援軍が来るのは理解していたし、待っていたが、だからと言ってフィーリア本人が来るもんだとは思わないだろ。驚くに決まってる。

 というか、こいつもそんなことは理解してるだろ。


「お兄さまとの関係を考えて、というのが主な理由ですね。王国からここまでくるにはカラカスの領土を通る必要がありますが、万が一止められたとしても私がいれば問題なく進むことができるだろう、と」


 まあ、そうか? 援軍を出したと言っても、それが本当に援軍なのかは一般の奴らからしてみれば分からない。もしかしたら自分たちの元へと攻め込んできた可能性だってあるんじゃないかと思うかもしれない。

 だがそこに俺の妹であるフィーリアがいれば、多少なりとも安心要素にはなるだろう。


「そして、聖国との関係を考えて、というのが二つ目です。こちらの状況の詳細はわかりませんでしたので、どのような状態であっても理不尽を押し付けられないようにするためには王族がいる必要がありました。ですが、他にも王族はいるものの、まともに動ける王族は私かルキウスお兄様だけでしたので」


 なるほどな。これがどんな終わり方をするとしても、おそらくは聖国の王、あるいはそれに準ずる立場の者と話をすることになるだろう。その際に相手をするのがたかが指揮官程度では、場合によっては色々と不都合が出てくる可能性もあるかもしれない。

 そんな場合に備えたるのであれば、確かに王族であるフィーリアは適していると言えるだろう。


「最後に、兄と母、それから義理の父が戦場に立つのに、そしてそれを助ける力があるのに、見ているだけというのは少々カッコ悪くありませんか? 私だけ除け者にされるなんて、悲しいではないですか」


 なんだよその理由……。

 別に除け者にしたつもりもないんだけど……まあ結果的にそうなるか? いや、でも戦場に出るのに除け者とか気にする必要なくないか? 家族全員で同じ戦場に立つとか、ちょっとおかしいだろ。何かが間違ってる気がする。


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