表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

569/589

神樹、あるいは始祖の樹

 

「で、話を戻すが、あの樹からなんか変な感じはするか? 無駄に親しみやすかったりとか、なんかそういう感じのやつ」

「え? ……うーん? ……んー……そうねぇ。なーんか微妙? あの子やフローラに似てる気がするけど、それよりももっと〝遠い〟気がするような?」


 どうやら、リリアも俺と同じような感覚があったようだ。

 同じようで何かが違う感覚。それをリリアは〝遠い〟と表したが、果たしてそれは合っているのか……。


「フローラに似てるってことは、やっぱり聖樹の気配ってことでいいのか?」

「んー……どうかしらねー? 似てるだけで別な気がするのよねぇ……」

「それは呪われているからとか邪神の力が混じってるから、とかじゃなくてか?」

「知らなーい。そこまでわかんないわよ、もー!」


 自分でもわからないのに、それを俺が問い詰めるようにしたからだろう。リリアは声を荒らげた。


「フローラには聞かないの? 多分そっちの方がよくわかるんじゃない?」

「フローラは、今寝てるよ」

「え、そうなの? なんで?」


 リリアは初耳だとばかりに目を丸くして驚いた様子を見せたが、そうだろうな。実際今初めて伝えたわけだし。

 だが、フローラが寝ているというのは事実だ。


「あの樹が出てきて少ししてから、なんだか体調悪そうにして意識を失ったんだよ」

「大丈夫なの?」

「わからん。でも、今のところ依代からの憑依は解けてないし、結界を張ったり浄化をかけたりしてるから多分大丈夫だと思う」


 本当にやばかったら体を抜け出して俺の中へと戻ってるか、あるいはこっちの分体は消滅してるだろう。それがないってことは、まだ平気だってことだ。

 だが、平気とはいえど、問題がないわけではない。フローラは精霊だ。依代を使って体を得ていると言っても、その本質は変わらない。

 おそらくは精霊という肉体を持たない存在なので、なんらかの力の影響を受けやすいんだろうと思う。一応依代はあるけど、あれはあくまでも取り憑いて操ってるだけで、フローラ自身の体ってわけじゃないからな。


「それに、この状況じゃ落ち着いて対処するってこともできないから、今は様子見をするしかない」


 どうにかしてやりたいとは思うけど、現状ではどうしようもない。設備も情報も時間も、何もかもが足りなさすぎる。


 なので、今はどうにかしたいと思っていたとしてもどうすることもできない。できることがあるとしたら、それはこの問題を一刻も早く解決することだ。


「さて、現状についてだが……あいつがなんなのか、わかるやつはいるか?」


 リリアと合流できたことだし、外で立ち話している必要はない。

 そう考えた俺は、再び自分用のトーチカに戻り、婆さんたちの話し合いを再開することにした。

 婆さんたち、と言っても他に参加しているのは俺の付き人の三人と婆さんの付き人、それからリリアとお供エルフくらいなものだ。つまり身内と言ってもいい者だけ。

 もっとも、婆さんとリリアの付き人たちはほとんど何も話さないし、ソフィア達だって俺が求めなければ話さないだろうから実質三人での話し合いだ。


「いいかい?」


 そうして再開した話し合いだが、早速とばかりに婆さんが口を開いた。


「婆さん? なんかわかったのか?」

「さっきのあんたらの話で一つ思いついたことがね。あんたらはあれを聖樹に近い存在だって感じてるんだろう?」

「まあ、そうだな。聖樹かはわからないけど、親しみはある」

「なら、あれは聖樹と同類なんじゃないかい? 同類って言うより、その大元、あるいは本体といった方がいいのかもしれないけどねえ」

「大元? 聖樹の大元って……っ!」


 植物の母とも呼べる存在が聖樹だ。そんな存在の大元なんて、と思ったが……ある。確かに、そんなものが存在している。

 それは……


「神樹」


 あるいは、『始祖の樹』と呼ばれるこの世界で一番最初に発生した植物。


 そうか、その可能性があったな。聖樹に近くて、でも聖樹よりも〝遠い〟存在となると、それしか考えられないか。

 逆になんで今までそんなものに気づけなかったんだって思うかもしれないが、それは仕方ないことだろう。だって、俺の中ではすでに神樹は死んでいるんだから。


「の、可能性はあるだろうねって話さね」

「いや、でも神樹って邪神との戦いで倒れたって話だろ?」


 ロロエルに聞いた話では、神樹は邪神との戦いで枯れたって話だ。だから俺は聖樹が原因だとは考えても、その先の神樹にまでは考えが及ばなかった。だって死んでるんだから当然だろ? それとも、神樹がアンデッドになって復活したとか? まあ教会での殺した奴が起き上がるという現象を見ていればあながち間違いじゃないとも思えるが、それが神様である神樹でも起こることなのかというと……微妙だろう。


 そう思って後ろにいたソフィア達へと振り返ってみたのだが……


「ですが、今のところそれが一番の有力候補になるのではありませんか?」

「それに、あくまでも〝倒れた〟であって、〝死んだ〟訳じゃあないんじゃないかい?」


 ……まあ、厳密にいえばそうか。確かにはっきりと『死んだ』や『枯れた』って言葉にしたわけじゃない気がする。


 じゃあつまり、こういうことか?


「神樹は邪神を倒した時に一緒に倒れたけど、実は一時的に力を失っただけでどちらも死んではいなかった。邪神が封印された時に、一緒に封印されてしまい、それが今になって復活ってか?」


 もしあそこのお化け大樹が神樹なんだとしたら、そういうことになる。


「聖樹に呪いが流れ込んでくるほど邪神の力に侵食されていたんだ。封印されてる間に完全に乗っ取られて〝ああ〟なった、と考えることは十分にできると思うんだけどねえ」

「あ〜……うん。あり得るなあ」


 トーチカに空いている窓から外——神樹らしき存在へと目を向ける。

 そこにあるのは相変わらず触手が集まってできたような不気味に蠢く大樹だが、あれが本当にエルフ達が祀る神樹なのか?


「でも、あれって本当に神樹なのか? 聖樹が邪神に乗っ取られた姿ってのもあり得るんじゃないか? 一応あそこには聖樹の幹が保管してあったわけだし」

「その辺は知らないよ。あくまでもあんた達の感覚を元に立てた憶測でしかないんだ。実はあんたの言う通り、あれは聖樹が変質したものだって可能性も十分にあるさ。ただ、こんな事態なんだ。最悪を思っておいた方がいいだろう?」


 まあそれはそうだな。楽観論で備えて失敗するよりも、悲観論で備えておいて後で取り越し苦労だったなって笑ってる方がよっぽどいい。


 というわけで、あれが神樹だってのはいいとしよう。封印が解けたってのも、いい。

 でも、なんでそれがここで甦ったんだ?

 そもそもどこで戦ってどこで封印されたのか知らないけど、封印された場所って、多分だけどここじゃないだろ?

 一番近いだろう場所は切り倒された聖樹のところか? それならあそこが最初に呪われたのも理解できる。

 ならこんな街中じゃなくてそっちの聖樹の方に……って、ああ。あっちは俺たちが浄化してたな。邪神と融合だか乗っ取られたんだかした存在にとっては、こっちの方が過ごしやすいのか?


 それに、そういえばこっちにも聖樹があるんだった。聖樹と言っても、本体ではないけど。


「あそこに現れたのは聖樹の幹があったからか?」


 そう。どこにどう隠したんだか知らないけど、この街には聖樹の幹が存在していた。

 なのでそれに引かれて、ということも考えられるだろう。


「他に良さそうな場所がなかったってのもあるだろうけどね。聖樹本体の方はあんたらが浄化しちまったんだろう?」

「まあそうだな。じゃああれが神樹だと仮定して……聖樹が依代になった可能性もあるかもなぁ」

「依代? ああ、フローラみたなもんか。それは有り得なくもないだろうねえ」


 そもそもどこにどんな形で保管されていたのかわかっていなかった聖樹だけど、教会にあったことは間違いない。

 神樹がここにやってきたのが聖樹の幹が理由なんだとしたら、その依代となった可能性は十分にあるだろう。


「——あー。話を邪魔して悪いんだけど、一ついいか? ……あいつ、なんか動いてねえか?」


 ちょうど窓から外が見える位置に陣取っていたカイルが、そんなことを口にした。

 動いている。それは確かにニョロニョロと動いているな。それは俺もみた。

 でも、カイルが言っているのはそういうことではないだろう。こんな時にそんなわかりきってることを言う必要はないわけだし。

 であれば、その『動いている』と言うのはどう言う意味か……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ