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◇60◇ この人と一生を共にします。【本編完結】



   ◇ ◇ ◇



 身体を丁寧に磨きあげてもらい、コルセットのひもを絞められ、ドレスを着付けられていく。


 侍女だった頃はガイア様のお着替えをお手伝いしていたけれど、自分がされる側に回ると、やっぱり魔法をかけられていくみたいな時間だ。


 丁寧にメイクをほどこされて、髪は華やかに編まれながら、大粒のダイヤモンドをちりばめた髪飾りで彩られていく。

 耳に、そろいのイヤリング。

 そしてアイスブルーの輝きを放つブルーダイヤモンドのネックレスを首もとに。


 ぱちりと目を開けると、鏡に別人が映っている。本当にヘアメイク技術の力ってすごい。



「お綺麗です。

 とてもよくお似合いですわ」


「あなた方のおかげですわ」



 着付けやお化粧をしてくれた女性たちに、淑女らしく優雅に微笑んでお礼を言う。

 内心は(いえほんと。全部あなた方の超絶技巧のおかげです)と思ってますけど。


 それに、ヘリオスが用意してくれたドレスも、ため息が出るほど素敵なのだ。

 私の身体にぴったりフィットするこのドレスの胸元には、薔薇飾りと宝石。優雅なドレープはウエストでキュッとしまり、それからスカート部分はふわりと膨らんで後ろに長く延びる。


 着てみたらもう、感動で言葉を失ってしまった。



 こんなにも、素敵にしてもらったんだもの。

 あとは、無事問題なく結婚式を終えられるように、がんばらなきゃ。



 ――――――こんこん、と、ドアがノックされた。



「フランカ?

 準備は終わったか?」


「どうぞ」



 ヘリオスの声だ。

 私が返事をすると同時に、部屋にいた侍女たちがドアを開いて、ヘリオスが部屋に入ってきた。



(………うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!

 結婚衣装!! スタイルよすぎ!! 似合いすぎ!! 素敵!! 好き!! 最高!! 生きてて良かった!!!)



 私の結婚相手が素敵すぎて、脳内の絶叫が口から飛び出そうになるのをかろうじてギリギリの理性で抑えた。

 天使が奏でる天上の音楽が聴こえてきた気がした。


 良いものを見たわ。たぶん今ので寿命が20年ぐらい延びたと思う。

 でも人前だから! いまは褒める言葉も我慢して淑女モードでなきゃいけない。



「見惚れてしまいましたわ。

 太陽が降臨したかのような眩しいばかりのお姿、何度私の魂を奪えばお気がすむのでしょう」



 多少淑女風に直したけど9割9分本音の賛辞を口にして微笑み、スカートの裾を持ち上げて、(カーテシ-)をする。


 顔を上げると、……あれ? またヘリオスに目をそらされていた。



「あの? ……どうかなさいました?」



 そっぽ向いた顔を片手で隠して、もう片方の手を『待って、ちょっと待って』といわんばかりに手のひらを私のほうに向けている。


 何かしら、このデジャヴ。



「あの?」


「……ごめん、言葉が出てこない」


「???」



 ヘリオスが語彙力を失っている。

 片手で隠している顔は、どうやら赤くなっている……?



「しばらく時間くれ………噛み締めてるから、あと、ちょっと」



 んーんん?


 何だかよくわからないけど……直立して待機している侍女たちが吹き出すわけにもいかずにめちゃくちゃ苦しそうな顔してるので、せめて、そのポーズはやめてあげてくれませんか??



 しばらく、『あとちょっと』待ったら、ヘリオスの中で感情の処理か何かがようやく終わったらしく。


 まだ顔が赤いままなんだけど、私のほうに近づいてきてくれて「……綺麗だ」と言ってくれた。



「良いと思う。

 世界一かわいい」



 直球。

 いいです、嬉しいです。ヘリオスの本音っぽく聴こえるから。優しさで褒めてくれているだけだとしても調子に乗ってしまいます。



「――――時間どおり参列者はそろった。兄貴にカサンドラも、あとテイレシア様の一家も間に合ったし……それと」


 ヘリオスがドアのそとに目を向けると、待機していたらしい従者の方が、花束を持ってきてくれた。



「お花………?」


「リボンに名前が書いてある」



 花束を受けとり、束ねてあるリボンを見てみると…………そこには、アルマとルドルフの名前が連名で書いてあった。


 …………ルドルフだけじゃなく、アルマまで。



「妹さんは王立学園で、弟さんは公立学校でどっちもうまくやれてるみたいだからな。結局子爵夫人の考えが正しかったんだろ。

 ……もうボスウェリア家のことも、心配いらないと思う」


「はいっ……!!」



 良かった。

 きっと2人とも、自分の幸せをつかむことができるだろう。



「では、移動しましょうか。待機場所へ」



 侍女に声をかけられ、私は花束をべつの侍女に渡して、ヘリオスの腕をそっと取る。

 従者の先導で私たちが歩き出すと、ヘリオスがコソッと話しかけてきた。



「……てか、なんでまだ敬語?」

「鋭意努力します」



 コツン、と私の頭に軽く自分の頭をぶつけるヘリオス。



「……努力、する、わ」

「よろしい」



 盗み見た彼の横顔は満足そうで、すごく綺麗だった。

 長いまつげごしに光が入り、アイスブルーの瞳がきらめく。目が離せない。



 どん底だったあの時期のことを思い出したら未だにつらくて、信じられないけど、こちらがいまは現実なんだ。

 私はこの人と結婚する。

 この人と一生を共にする。


 絶対に私はこの人を幸せにするんだ。


 そう決意しながら、私はヘリオスとともに長い廊下へと歩を進めていった。




【本編 了】

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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