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◇17◇ ヘリオスは盗み聞きが嫌いなようです。

「――――で、話なんだけど」


「え、ああ、はいそうでした!」



 妙にドキドキし始めた心臓を押さえて、私はヘリオスに向き合う。「なんでしょうか?」



「ボスウェリア子爵に、フランカを預かってる、って手紙を出したが、今のところ返事がねぇ」


「そ、そう、ですか。そうですよね」



 ……なるほど。

 忙しくて手紙も書けないとか……じゃないわよね。



(お父様は、もう私とは他人になりたいのかな)



 そう思ったら、ちょっと泣きそうだ。自分から家出したくせに、我ながら、勝手だわ。


 だけど、これで良いのかもしれない。

 もしお父様やお母様が連絡をくれたり、会いに来てくれたりしたら、それがライオット伯爵やメイス侯爵夫人に知られてしまうかもしれない。

 ガイア様やヘリオスに迷惑をかけるのは避けたいもの。



「それとあと……」



 ヘリオスは、少し、言うのを躊躇してから、つづけた。



「ライオット伯爵を王宮に告発する。

 だから今、余罪について調べてる」


「え?」


「あいつほっとくと、フランカみたいな目に遭わされる人間がまた出てくっからな。

 きっちり罰を受けさせる。

 一応、報告。

 余計なお世話って思うかもしれないけど、これは――――」


「本当ですか!!

 ものすごく嬉しいですありがとうございます!!」


「全肯定かよ」


「いや、だって……そこまでしてもらえたら、私、もはや思い残すことは」


「縁起(わり)ぃわ!」



 あきれたように言うヘリオス。



「でも嬉しいです!!」

「そんなにか!?」



 自分でもびっくりするほど、それは嬉しかった。

 私みたいな目に遭わされる人が出ないようにしたい。それってヘリオスが、私の痛みも怒りも共有して、肯定してくれているということなのだから。



「……まぁ、俺だけじゃねぇし、もう一人協力してくれてる奴がすげぇデキる奴なんで、俺はその裏取りを地味にやってるだけ……顔が近いわ!! あと無駄に目ぇキラキラさせんな!!」


「後者は不可抗力です!!」



 はーっ、とヘリオスが息をつく。

 呆れているようで戸惑っているようで、でも照れてもいるようで。

 なんだかこの反応はちょっとかわいい。。。


 テラスに風が吹き抜けて、ヘリオスの綺麗な銀髪が夕日を浴びてきらめいた。

 伏せた銀のまつ毛が、妖精の羽から振りまかれる銀粉のようだ。

 やはり夢のように美しい人だ。気がついたら視線が動かせなくなり、うっかり息を止めて見つめてしまう。本当に心臓が止まっても、気づかないまま死ぬかも。ぐらい美しい。


 思わず、口を開く。



「……本当に、ヘリオスはなんでここまでしてくれるんですか?」


「ん?」



 だって、ヘリオスにとって私は、ただ、『道を歩いてたら絡まれていた赤の他人』のはずだ。



「普通、通りすがって助けてくれるような人もそうそういないですけれど、初対面の私の話を聞いてくれて、安全な居場所と仕事を紹介してくれて、家族の心配まで……。

 いえ、まったく悪いということではなく!

 ただ私は、ものすごく、ヘリオスに感謝してるんです!」



 そう問いかけると、ヘリオスはなぜかそっぽ向いて「(ヴィクターと同じこと言ってやがる…)」何か小声でつぶやいた。



「ヘリオス?

 何か私、悪いこと言いました?」


「……いや。

 理由らしい理由があるわけじゃねぇんだが―――」



 少し言い(よど)んで、不意に何か気配を察したようなヘリオスは、慌てたように後ろを見た。



「……?」私も後ろを見た。



 で、察した。テラスから続く廊下、壁の陰に隠れているようで、人の身体がわずかにはみ出している。

 何人か、使用人の皆さんが隠れて聞いてる??



(え、何で? 私たち、そんな盗み聴きされるような変な会話してないわよね?)



 戸惑っていると、ヘリオスが舌打ちした。



(わり)ぃ、()りんぞ」


「え、おりる……?

 んひゃあっ!?」



 私はいきなりヘリオスに、足を掬い上げられるように抱き上げられた。



「え、ちょ、ヘリ……」



 そのままヘリオスはテラスの手すりを越えて、



「あ、ヘリオス様!?」

「しまった、気づかれた!?」

「ちょっと! そんなところからぁぁぁっ!」



 使用人のみなさんの、悲鳴のような声を後ろに残し、跳んだ。



(ふええええええ!!???)



 人間のそれとは思えないほどのジャンプ力で、お城の屋根のいろんなところを足場に飛び移りながら、文字通り()()()いった。



 ―――――「ここまでくりゃ、大丈夫かな」



 最終的にはお城の外まで出てしまったヘリオスは、一面広がるひまわり畑の前で、ようやく私を地面に下ろしてくれた。



「どうした? フランカ?」


「な、何でも、ないですっ……」



 呆然としていたところから我に還ると、めちゃくちゃ顔が熱くなる。


 恥ずかしい。すごくドキドキしている。

 近かった。ヘリオス、すごくいい匂いがした。あと、私より少し体温が高い気がする。

 身体にヘリオスの胸の感触、足と背中にヘリオスの腕の感触が残っている。



 それ以上に、抱き上げられたままヘリオスが跳ぶと、まるで空を飛んでいるみたいな気持ちになった。



(……殿方に抱き上げられるのって、貞操的にはどうなのかしら??)



 わからない、けれど――――すごく心臓がうるさいのが答えかもしれない。



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