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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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義兄の気持ち



二回目の話し合いは三日後という事になり、その日ジョルジオはしょんぼりと帰って行った。



馬車に乗る背中は寂しそうで、何だかこちらが悪いことをしている気分になる。



あの人、アンドレのこと、もの凄く好きなんだなぁ。



まあ確かにアンドレは裏がないから安心して付き合える人間だよな、すぐに本音を言っちゃう馬鹿だけど。



駆け引きとか出来ないタイプで、ちょっと危なっかしい所が多々あるけれど、そこがどうにも放っておけないというか何というか。



いや、ただお世辞もろくに言えない口ベタ馬鹿ってだけなんだけど。



悪気はないんだよ、うん。馬鹿で世渡りが下手なだけで。



でもあれで学業はなかなか優秀だっていうから、ホント成績なんて当てにならない。



まあ、あいつの真っ直ぐさは美点ではあるんけどね。


狡猾さゼロだからな。生き馬の目を抜く貴族社会では・・・




「・・・散々な言いようだな」


「え? あれ、アンドレ? 僕、口に出して喋ってた?」


「ああ、しっかりと聞こえたぞ。馬鹿だ馬鹿だと連呼してくれたな」


「・・・ええと、あれは一応褒めてるつもりなんだけどね」


「あれでか?」



口ではそう言ってるけど、アンドレは別に怒っていない様で、今も楽しそうに笑っている。



「・・・三日後、また来るって」


「ああ」


「次はちゃんと説得しろよ?」


「努力はするが、結果は約束出来ない。人の心は他人にはどうこう出来ないからな。ただ納得してもらえるまで話し合いを続けるだけだ。エウセビア嬢を諦める訳にはいかない」



困ったように眉は下げているが、それでも淡々と決意を表明する姿に、ふと先程の話を思い出した。


クギを刺しておかなくちゃ。



「・・・もう『決闘』っていう単語は使うなよ?」


「・・・あ」



その言葉に、アンドレはぽりぽりと頬を掻いた。



「分かった。エウセビアみたいに笑ってくれるかと思って言ったのだが、逆効果だった。まさか泣かれるとは」



いやいや、普通、決闘って言われて笑わないからね。



「それだけお前が愛されてるってことだろ?」



アンドレがふっと笑う。


照れたような、恥ずかしそうな、少しはにかんだ笑みだ。



「・・・そうだな。異母兄は昔から私を大事にしてくれていた」


「だからこそ、味方になってくれたら頼もしい存在だ。三日後の話し合い、頑張れよ」



僕の励ましにアンドレは力強く頷いた。


頷いてたんだけど。



三日後。


話し合いは20分で終わった。


その二日後、再びの話し合いでジョルジオは15分で退席。



今日に至っては、8分だ。



じわじわと退出までの時間が早まってるのは何でだ?



心配になった僕は、サロンから出てきたジョルジオを呼び止めた。



だけど、彼の答えは僕の予想したものとは違っていた。




「・・・応援する?」


「ええ。初心に帰ったと言うか」



そう言うジョルジオは、どこかスッキリした顔をしていた。



「異母兄だけが頼りだ、と頭を下げられてしまっては、こちらが折れるしかありません。まだ父の説得が残っていますがね」



これからアンドレも家に戻る支度をすると言う。



これは何とも拍子抜けというか、肩すかしというか。


そこで、いやいやいや、と首を振る。


これからアンドレとジョルジオは父親を説得しないといけないんだ。


まだ気を抜いちゃいけない。



「・・・」


「令息?」



ジョルジオが、もの言いたげに僕を見つめていることに気づき、軽く首を傾げると、彼は軽く咳払いをした。



「いや、その・・・アンドレと友人になって下さったのですよね。最初にその話をあの子から聞いたときには少し驚いたのですよ」


「・・・そうなのですか?」



ジョルジオは少し考えてから再び口を開いた。



「ノッガー令息もお気づきでしたでしょう? あの子は昔、貴方の婚約者であるアデライン嬢に恋心を抱いてました。貴方への態度が悪かったのも知っています・・・ですから、こんなに仲の良い友人同士になって下さるとは思ってもいなくて」


「・・・ああ」


「お心が広い方だと感心しました」


「心が広いと言うならジョルジオ令息の方でしょう。アンドレを跡取りにするためにこうして何度も説得に来て、最後にはあいつの希望を叶える事にしたんでしょう?」



なかなか出来る事じゃありません、と言ったら、ジョルジオは照れ臭そうに笑った。



「あの子を後継者に、と私が拘ったのにも、実は理由があるんです・・・まあ、幼い頃のちょっとした口約束なんですけど」



アンドレの支度を待つ間、少し話に付き合って貰えませんか、と言われ、僕が頷くと、ジョルジオは少し安心した様に笑った。



「あの子には姉がいたんですよ。私と違い、ちゃんと血の繋がった姉が・・・私は会った事がありませんけれど、アンドレによく似ていたそうで、彼より一つ上で・・・エステラという名でした」


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