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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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密会、もしくは密談



「助かったよ、サシャ嬢。ありがとうね、急だったのに動いてくれて」


「いいえぇっ! セシリアンさまのお役に立てて嬉しいです!」


「お礼と言っては何だけど、今年の小麦の取引はヤンセン商会を優先させてもらうよ」


「わぁっ! 嬉しいです! 今後ともどうぞヤンセン商会をご贔屓に!」



電話越しでも感じる熱量って、なかなかすごいと思う。



そう思いながらサシャとの電話を切った。



サシャに連絡を入れてから三日後、商会の離れの間を確保したと連絡が入ったのだ。



商会の表玄関から入るのだが、そのまま違う建物に行くことが出来て、相手はまた別建物の入り口から来ることが出来るという。


表立って出来ない取引とか密談とかで使うらしいんだけど・・・表立って出来ない取引って何?


ヤンセン商会、実は裏でも何かやってんのかな。



そのことはこれ以上考えちゃ駄目な気がして、頭の中を切り替える。



アンドレとエウセビアが会う場所はこれでいいとして。



エウセビアにはアデラインから連絡をしてもらってる。



今回は手紙じゃ間に合わないから、直接あちらの屋敷にアデルが電話をかけて。



そうして決まった日取りが明日なのである。



アンドレは今や熊さんの様に部屋の中をぐるぐると歩き回っている。



何でも歩いていると考えがまとまるような気がするのだとか。



自分の感情が掴めなくて、この先どうしたいかもあやふやで、でも家に言われるがままにエウセビアと距離を置くのは嫌で。



異母兄との話し合いが三日後に迫った今、その前にどうしてもエウセビアに会っておきたいらしい。



エウセビアの願いと、自分の迷走する考えが一体どこにあるのかを確かめたいのだろう。



アンドレは僕たちと一緒にいるから良いとして。



僕は明日の密会を思い、今頃ひとりで色々と考え込んでいるであろう侯爵令嬢のことを思い浮かべる。



頭がいい人だけに、引くのも早いだろうな。



それも多分、アンドレの未来のために。



いつか必ず離れなければならないのだとしたら、せめて今のこの瞬間だけは引き離さないでいて欲しかった。


せめてそのくらいの思い遣りは示して欲しかったけど。



周囲は二人の思惑を知らないのだから、傷が深くなる前に別れさせようとするのは、当たり前と言えば当たり前なのだ。



・・・結局、誰も悪くないんだよね。



強いて言うならば、貴族らしからぬ感傷に浸っている当事者二人が一番迂闊なのだ。



意に沿わぬ結婚なんて普通。


家同士の繋がりでしかないんだから。



だけど。



僕はふっと溜息を吐いた。



そんな貴族の常識は、アンドレたちには当てはめたくなかった。


甘いと言われても、幻想だと馬鹿にされても、心から想い合う人と結ばれて欲しかった。



特にあの二人は、家格が釣り合わないとか、家同士の仲が悪いとか、そんな障害がないのだから。



ただお互いが後継同士だというだけで。



「全く、ねえ」



もうちょっと、だったのに。


もうちょっとで、アンドレは自分の気持ちに気づくのだろうに。



明日。


エウセビアとアンドレは、サシャが手配した離れの間で密かに会う。



勿論、僕たちも付き添うけど。



さて、どうなるだろう。



結果は神のみぞ知る、だ。



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