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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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分からない 気づかない



「・・・で? 一体どういう事かな?」



僕たちは今、サロンにいる。


メンバーはもちろん、僕とアデラインと家出息子のアンドレだ。



「どういう事かと問われても、先ほど説明しただろう。父と兄と喧嘩した。だから家を出た。そしてここに来た。以上だ」


「・・・」



僕は黙ってこめかみのあたりを指で揉んだ。



頭が痛い。誰かこの馬鹿をなんとかしてくれ。



デュフレス公爵。貴方の大切な息子なのだろう。

さっさと引き取りに来て欲しい。



「・・・喧嘩の理由は?」



分かりきっているけど、一応、聞いておこう。



「・・・エウセビアと別れろ、と」



そっぽを向いて、拗ねたように口を尖らせている。子どもか。



男がそんな仕草をして可愛いなんて思ってもらえるのは、せいぜい10歳までだぞ。まあ別に狙っている訳でもないのだろうが。少しは考えろ。



・・・いかん。


動揺しすぎて、頭の中でツッコミが止まらない。



「あの、アンドレさま」



口をきく余力がなくなった僕の代わりに、アデラインがおずおずと声を上げた。



「別れるも何も、最初から演技というお話でアンドレさまはお引き受けしたのですよね? 演技を止めれば済むお話です。なのに、何故そうされなかったのですか?」



そう、そこだよ。


エウセビアから提案されて、恋人のフリを始めて、まだたったの4か月。



最初に想定した期間が一年から二年だった事を考えると、確かに短いけどさ。



エウセビアへの感情は、お前はまだ無自覚の筈。


そのお前が怒って家を出た理由、それを僕たちは聞かせてもらいたい。



そこが一番大事なところだから。



「・・・む?」



アンドレが首を傾げている。



そう言えば、という表情だな。


つまり、今まで自分で一度も疑問にも思わなかったという事か。



「・・・」



アンドレは眉間に皺を寄せ、深く考え始めて、そのまま黙り込むこと10分ほど。そして。



「・・・分からん」



分からんのか~い!



僕は、全身から力が抜けていくのを感じた。


隣のアデラインも、困った顔をしている。



冗談としか思えない反応だが、当の本人は至って真面目だ。



「そういえば、どうしてなのだろう?」



本当の本気で頭を捻っている。



僕とアデラインは思わず顔を見合わせた。



早く気づいてもらわなければ。


これは僕たちが答えを教えてはいけないやつなんだから。



アデラインが、意を決したように口を開いた。



「・・・アンドレさまは、以前、まだ婚約者を定めたくない、と仰いました」


「うむ」


「それで、意見を同じくされていたエウセビアさまと恋人のフリをすることで同意されましたわ」


「うむ」


「出来ることなら一年か二年は自由の身でいたかったという希望は存じております。ですが、もともとが本当の恋人同士ではなく、あくまでも契約上の仮の恋人役。それを別れろと反対されて家出をなさる程のことでしょうか」


「うむ・・・む?」


「なのに敢えてそれをなさった。それ程の理由が、アンドレさまにはお有りの筈なのです」



アデラインが頑張った。

頑張ったけど。



「言われてみれば・・・確かに。うむ、もともとがフリな訳だから・・・うん?」



ああ、じれったい。


アンドレがいよいよ思考の深みに嵌りだしたよ。



側から見れば、とんでもなく分かりやすい答え。



僕もアデラインも、下手するとジョルジオ殿だって見当がついている。



なのにこの質問は、どうやら本人にとって世界一の難問らしいのだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アンドレさん、ポンコツかわいいです(笑)。主役カップルの他に感情移入して読める2人がいる話は美味しいです。さて続き続き。
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