表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
74/168

知らないだけ



「お二人とも素敵でしたよっ!」



ダンスが終わって、フロアの端に寄れば、そこには嬉しそうに目を輝かせるサシャがいた。



ふふ、相変わらずの安定した懐きっぷりだ。



まあ、僕たちはこのテンションの高さにはもう慣れたけど、未だ苦手意識のある人たちもいるんだよね。


そう、たとえば僕の兄たちとか。



こういう夜会の場では、兄たちとも会う機会があるんだけど、見ているとどうもサシャとの関係はギクシャクしたままのようだ。



僕たちを巻き込むような騒ぎを起こした張本人だから、兄たちが警戒するのも分かるんだけどね。



・・・きっと、あの人も今、そんな感じなのかな。



僕たちより少し離れたところに佇む、以前貴族年鑑の写真で覚えた人物が視界に映った時、そう思った。



さっきからずっと、眉間に皺を寄せてこっちを見ているよ。



お前は気づいてるかな、アンドレ。




「・・・少し暑いな。飲み物をもらって、バルコニーにでも行こうか」


「それはよろしいですわね。ここは人の目も多くて緊張しますもの」


「そうですわね。あまり注目も集めたくありませんし、参りましょうか」



僕の提案に、エウセビアは笑いながら同意した。


うん、彼女は気づいてるね。


あれ、でも珍しい。アデラインも気がついた?



気づいてないのはお前だけか、アンドレ。


やっぱり、お前は並大抵の鈍感力じゃないようだ。




さて、ちょっと場所を変えて。


それでもまだ、あの人がこちらの様子を伺ってくるかを見てみよう。



「これこれっ、このワインです。うちの商会のイチオシの品はっ! もう香りが違うんですよ。ぜひ試してみてください!」



うわぁ。サシャがいると、緊張感が削がれるな。


いや、確かに美味しいワインだとは思うけどさ。



「これは販権を手に入れるのに苦労したんですよ~。なにせ最近では一番の人気商品ですから」



あ、でも、こういう時、サシャがいるといいかも。


色々と話を回してくれるから、周囲を観察したい時にもの凄く助かる。



あ、いやその、話を全然聞いてないとか、そういうんじゃないよ?


ただ周囲の目を誤魔化しやすいというか、うん。



僕はグラスを口につけながら、ちらりとホールの方に視線を向ける。



・・・あ。



ああ、やっぱり。



間違いない、こっちを見ている。



う~ん、どうしたらいいのかな。


あの様子では、今夜すぐにとは言わないまでも、いつか苦言を呈しにやって来そうだ。



・・・まあ、気持ちは分かるけど。



あの人は、アンドレたちがフリをしてるだけって事を知らないんだから。


期限を決めて、それが終わった後は、貴族としての自分たちの責務を担うつもりでいるって事を、まだ知らされてないんだから。



義弟が何か問題を起こすのではないかと、恋に溺れているのなら早く目を覚ましてくれと、そう願っているだけなんだろうだから。



そうだよね? 


ジョルジオ・デュフレス令息。




アンドレの異母兄さん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ