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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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ファン誕生



後日、ヤンセン男爵がサシャを連れて謝りに来た。



それはもう、平謝りの謝りまくり。



いつもサシャを通して僕の話を聞いていたという男爵は、娘の思い込みの激しさを考慮しつつ、盛ってるだろうと踏んで、話半分に聞いていたらしい。



「いやはや、半分どころか全部とは・・・何とお詫び申し上げたら良いか・・・」



まさか、ここまでぶっ飛んだ勘違いをしているとは思ってもいなかったんだって。



まあ、流石にこれ程の妄想っぷりは予測できないのかもね。



ひたすら平身低頭の姿に、僕たちの方が気の毒になる始末だ。



同じくサシャも、申し訳なさそうに父親の横でぺこぺこ頭を下げている。



う~ん、気は悪くないんだろうけどね。



僕はもちろん、きっちりと釘を刺してから、笑って許してあげたけど。



掛け値なしにお人好しのアデラインは、それはもう簡単に、いともあっさりと許しの言葉をあげてしまった。



女神のような慈愛に溢れた微笑みで。



ヤンセン男爵からしたら、侯爵家に睨まれでもしたら、と戦々恐々だった事だろう。


もとより商会の働きが評価されて叙爵された身だ。



ノッガー家から圧力でもかかるような事態になれば、販路なんて、間違いなくあっという間に潰れてしまう。



商会の手伝いにおいては有能だという話だから、その辺りはサシャも心配していた筈。



それを、ある事ない事どころか、ない事ばかりを吹聴して歩いたサシャを、にこやかにあっさりと許した訳だから。



・・・単純なサシャなら、まあこうなるだろうね。



「アデラインさまって天使みたい・・・」



それはもう、うっとりとした眼差しでアデラインを見つめているのだ。



いやいや、確かにそうだよ?


アデルは天使みたいに可愛くて、天使みたいな優しくて、天使みたいに純粋だ。


サシャ、その点において君の意見は正しいと思う。



しかしだ。



「貴女こそが王子さまと結ばれるべき方なのですのね・・・」



いくらなんでも手のひら返しが凄くないか?



「あんなに失礼な事をした私を快く許して下さるなんて・・・サシャ・ヤンセン、一生をかけて天使さまにこのご恩をお返しします!」


「あ、あの、どうかわたくしのことはアデラインとお呼びください・・・」


「えええええ? よろしいのですか? そんなご褒美まで・・・」



あはは。


切り替えが早すぎて、最早なんともコメント出来ない。



「セシリアンさま。その、本当にうちの娘がご迷惑をおかけして・・・」


「あはは・・・」


「懸命に教育を施したのですが、どうもあのイノシシ娘の性格を矯正するのは難しく・・・」



うん、男爵。


貴方もさぞや苦労されてるのでしょうね。


冷や汗たらたらで謝罪を重ねるヤンセン男爵に、僕はもう笑うしかなかった。



「天使さま、いえアデラインさま。どうか私の王子さまをよろしくお願いしますね」



かくして僕は、何故かサシャから、アデラインによろしくされてしまったのだった。



こんな下らない経緯でアデラインのファン第一号が誕生した訳だが、意外にもこれが吉と出たのもまた驚きである。



「アデラインさま。この私、サシャに、何でもお申し付けください。どんな物でも必ずや手配して取り寄せてみせますからねっ!」



実生活に於いては残念だが商売に於いては有能だったこのファン第一号は、ドレスや宝石の調達、珍しい織物や茶葉などの外国製品の手配で、この後も大いにノッガー家の役に立ってくれたのだ。



・・・子犬のように懐かれて、ちょっと辟易したけれども。


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