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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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意外な話


サシャ・ヤンセン男爵令嬢の噂は僕が思っていたよりも広がっていて、なんとあの義父の耳にも届いていた。



それが分かったのは、まとめてパーティの一か月前。



僕は義父の呼び出しを受け、向かった執務室でヤンセン令嬢の話を聞かれた。


なんでも、パーティに是非とも出席したいと向こうから言ってきたらしい。



小さい頃に会ったことがあるきりでそれ以降の接触はないこと、今回の噂の原因となるような行動は一切していないことなどを説明。



驚いたことに、義父はそれを聞いて安堵したように見えた。



「好きな相手を見つけても構わないとは言ったが、出来ることならお前には婿になってもらいたいと思っている」



意外すぎる言葉に、一瞬、動きが止まった。



「・・・それは、どうしてでしょうか」


「お前は、私があちこち探してやっと見つけた子だからな」



答えになっているような、なっていないような。



首を捻る僕を見て、珍しく笑みを浮かべた侯爵はこう続けた。



「もしアデラインに他に好きな男が出来た場合は反対するつもりはないが、お前で決まることを私は願っている」

 


よく分からないけど、どうやら義父は僕とアデラインとの結婚を望んでいるらしい。



どうでもいいと思っているのだろうと誤解していた僕にしてみれは意外な話だった。


とにかく、噂が全くのデタラメだと分かってホッとした侯爵の様子に、同じくこちらも安堵したという訳なんだけど。



実は、その時の侯爵との話はアデラインにはしていない。


僕とアデラインとの結婚は、義父が望んでいるから、とか、そういう理由で決めて欲しくなかったから。



つまらないプライドって言ったらそれまでなんだけどね。



その代わり、サシャ・ヤンセンの話は、アデラインにもきっちりと説明しておいた。


もとより、前にトル兄から彼女の話が出た時のことをアデルはちゃんと覚えていたらしい。


だからお茶会の時に噂のことで色々言われた時も、なんとなくは事情を理解していたみたいなんだよね。



ただ、僕の気持ちがどこにあるか、というところを周りから言われると・・・そりゃあアデルの性格からしたら落ち込むよな。



義父にとって、そして僕にとって自分は邪魔者なんだと、ずっと責め続けてきた子なんだから。



だから。



「ねえ、アデライン。僕はね、君が好きなんだよ。君が許してくれるなら、ずっと君の隣にいたいんだ」



僕はそうアデルに言った。



お早うのハグの時も、お休みのキスの時も、繰り返し、繰り返し、僕の気持ちを伝えた。



嫌だったら断ってくれていい。


でも許してくれるのなら、側にいたい。


押し付けたくはないけれど、でも受け入れてくれるのなら何だってするから。



そんな気持ちを。




小さい頃のことはあまりよく覚えてないけど、いつも僕の後ろをくっ付いて回ってたっていうサシャという女の子。


何を思って騒ぎ立ててるのか、何を考えているのかも分からないし興味もない。


彼女の中で、幼い頃の僕との思い出がどれだけ美しく飾られているかは知らないけれど、僕には彼女の気持ちを慮る余裕も暇もない。



そもそも、そんな義理もない。



僕の一番は、僕の最優先は、いつだってアデラインの幸せ。



それ一択だから。




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