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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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社交は必要だとは思ってるけど


僕は生来、人付き合いが苦手な方ではない。


アデルも誰とでも無難に過ごせるタイプだしね。



だけど、どういう訳か、僕たちには友人がすくない。



どういう訳かとか言ってるけど、実は訳なら知っている。


こちらが友人になるのを遠慮しているからだ。



え? 矛盾してないかって?


してないよ。人付き合いは本当に苦手じゃないもの。


ただ、相手が男性の場合、あちらから敬遠されるんだよね。

それは勿論、僕がアデラインの婚約者だからという理由で。



そして相手が女性の場合、まあ普通に考えて友情など期待できない。

そもそも婚約者がいる男性に、笑顔で近づいて来て腕や背中に手を添えてくる女性って、問題アリだと思わない?


友人うんぬんの以前に人間としておかしいだろ。



だから今回、アンドレとエウセビアという友人が出来たのは、僕たちにとって本当に奇跡みたいな出来事だった。



つまり何が言いたいかっていうと、友だち付き合いをしないから、社交界での情報が僕たちの耳には全然届かないってこと。


或いは、届いたとしても随分遅いってこと。


だから、大抵のことは後になって耳にするケースの方が多いんだ。



今までは、それで別にいいと思ってた。

実際、それで大丈夫だったんだけどね。



それにしても、トル兄ってどうやって情報を仕入れてるんだろうな。





「・・・って、本当ですか? セシリアンさま」



そんなことを延々と考えていたから、会話の途中でいきなり名前を呼ばれた時、ちょっと驚いた。



「・・・さあ? 僕には何のことだか分かりませんが」



よく分からない話の時は、断定を避ける。


とりあえずの安全確保だ。



「まあ、誤魔化さないではっきり仰ってくださいな」


「そうですわ、セシリアンさま」


「本当は分かってらっしゃるんでしょう?」


「・・・」



ナンデ、キミタチニ、ソンナコトヲイワレナイト、イケナイノカナ?



僕の心の中は、ブリザードが吹き荒れる。



はい、説明しましょう。

ただ今、僕たちはお茶会の真っ最中です。



茶葉の取引がある家からの招待だったから、断るに断れなくて出席したんだけど。



来るなりアデラインとは離されて別のテーブルに座らされ、あまり親しくもないご令嬢たちに囲まれた挙句、何やかんやと質問攻めにあっている。



何で婚約者がいる身の僕が、わざわざアデラインと離れて別のご令嬢方に囲まれなきゃいけないの?


挙句、やいのやいの言われてさ。



だいたい誰だよ、そのヤンセンとかいう男爵って。


いきなり知らない人の名前を出されて、そこのご令嬢とどういう関係ですの?って聞かれてさ、それこそどういう意味ですの?って聞き返したくなったよ。



その「隠していても知ってますのよ」的な表情でこっちを見るのは止めてくれ。


思った通りの答えが返って来るまで、人の言うことを真面目に聞く気もないくせに。



・・・なんだろう、この面倒な展開は。



人目を憚らずに大仰な溜息を吐くと、それに気づいた向かい側の令嬢が慌てて口を噤んだ。



「おかしいですわね。確かにヤンセン令嬢はそう仰っていたのですけれど」


「ええ、そうよね。わたくしも聞きましたわ。セシリアンさまとは小さな時から親しくしているって」



だけども、それに気づかなかった他の令嬢たちは、まだ会話を続行しようとしている。



しつこいなぁ。


何が面白くて、さっきから全力でこの話題に乗っかってるんだ?



「本当に僕にはなんの話か分からないんですよ。その令嬢の事も知りませんし。他の誰かとお間違えでは?」



もう帰っていいかな。出席して義理は果たしたし、もういいよね。



そう思って腰を浮かそうとしたところで、横に座っていたご令嬢がまだ粘ろうとした。



「人違いではないと思いますわ。ヤンセン令嬢は確かにセシリアンさまの名を仰いましたもの」


「そう言われても僕には覚えがありませんのでね。これ以上話しても意味がないかと。だいたい、そのご令嬢と僕が知り合いだろうとそうではなかろうと、どうでもいい事ですよね?」



そう言うと、ご令嬢方は互いに顔を見合わせて、微妙な表情を浮かべている。



まあとにかく、この令嬢方の言いたい事は分かった。



どうやら僕は、その顔も知らない令嬢と噂になっているらしい。



っていうより、今気づいたけど、あっちのテーブルでも、似たような話題で盛り上がってるんじゃないか?



「・・・これ以上、ここで有意義な会話が楽しめるとは思えませんので、失礼させていただきます」



僕は席を立ち、アデラインを迎えに行く。



やっぱりというか何というか、アデラインは困惑した表情を浮かべている。



・・・何なんだよ、そのヤンセン令嬢って。



その謎の令嬢にも腹が立つけど、ここで一生懸命その噂で盛り上がる令嬢方にも呆れてしまう。



わざわざお茶会に呼びつけて、そんな根拠のない話を聞かせるって。


悪趣味にも程があるだろ。



アデラインをエスコートして外に出た。


馬車に乗って、帰途に着く。



ああ、アデラインがしょんぼりしている。



もし、僕が無事にアデラインと結婚してノッガー家を継げたらの話だけど。



その時は、この家との取引を絶対中止してやるからな。



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