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彼女を恋愛脳にする方法  作者: 冬馬亮
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義弟は考える


その後、体調が回復したと言いながら、何故かまだお腹を押さえた状態でアンドレが戻ってきたところで話が終わり、そのままエウセビアとアンドレの二人は帰ることになった。



彼らを乗せた馬車を見送りながら僕は思った。


アンドレはやっぱり演技には向いていない。



まあ、アレはアレで新発見があって面白かったとは思うけど。




とにかく、嵐のような訪問はこれで終わった。



今日は午前中に全ての勉強を終わらせていたから、彼らが帰った後の予定は特にない。


アデルは刺繍の続きをすると言うから、僕は部屋で読書をするよと言って自室に戻る。



勿論、それはただの言い訳だ。


頭を整理するための時間が欲しかった。



僕はベッドの上にごろんと寝転がり、先ほどエウセビアから聞いた話を思い返す。



僕も随分とうっかりしていたものだと呆れてしまう。



初めて会った時から、それこそずっとアデルは言っていたのに。



セスの邪魔はしない。

セスの邪魔にはなりたくない。


ごめんね、ごめんなさいね、と。


口癖のように、ずっと。



あ~あ、馬鹿だな、僕は。



--- 素敵な令嬢を見つけて幸せになって ---



この言葉ばかり気にしていたから、肝心な事を見過ごしていた。


アデラインがどんな気持ちで僕を迎えたか、なんて、少し考えれば分かりそうなものなのに。



僕なんか眼中にないと言われている気がして、変な焼きもちとプライドで目が眩んで、そうして大事なものが見えずにいた。



注意を向けるべきは、僕の男としてのプライド云々じゃなく、アデラインの自己評価の低さだったのに。



君が、僕の幸せの邪魔だなんて。


そんな不安を抱えながら、僕の隣にいてくれてたなんて。



目を瞑って考える。



今までアデルが口にしてきた全ての言葉を、思い出せるだけ思い返す。



そうだ、君は最初から遠慮していた。

初めて会った時から、僕に謝っていた。



エウセビアがいなかったら、アンドレが気づかなかったら、きっと。



きっと僕は、あのまま。


アデラインが一歩ずつ僕から離れようとしていた事にも気づかずに、勝手に両想い気分になって独りで盛り上がって、そしていつの間にかアデラインに手が届かなくなっていたかもしれない。



本当に、他の誰かと結婚する事になっていたかもしれない。



「・・・そう考えると、アンドレとエウセビアって僕の命の恩人?」



そんな事をふと考えて、恩人という言葉にぷっと吹き出した。



今度会ったら、あの仮病は胸痛か、それとも腹痛か、どっちの設定だったのかと聞いてみたいところではある。



実際に聞いたら殴られそうだけど。



最初の印象は最悪だった。でも。



アンドレのこと、馬鹿ってバカにして悪かったな。


馬鹿はむしろ僕の方かもしれない。



髪をぐしゃぐしゃと乱暴に掻き回して、盛大に溜息を吐く。



「大丈夫。まだ間に合う。侯爵の決めたリミットまであと一年半あるもの」



間に合う。間に合わせる。



とにかく。


誤解が分かった時点で即、行動だ。



「・・・よし」



気持ちを切り替え、僕はむくりと起き上がった。



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