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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第0章

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004.彼女の家とシャワー

 俺は今寒さと痛みに耐えながらあの子の家に向かっている。

 あれから置いていったジャケットを着せてもらったがそれでも寒いものは寒い。


 案内してくれている彼女はリードと俺の荷物をしっかり持って数歩先を歩いている。

 あれから家に招待する申し出を断ったが、家が近いからと入浴も含めて押し切られてしまった。


 後ろ姿の彼女を見る。

 背は俺の顎あたりに頭頂部がくるだろうか、綺麗なショートの栗毛で前髪を花柄のピンで留めている。

 年はきっと俺より1個2個下だろう。

 さっき見た感じ容姿は目はくりっと大きくかわいい感じで、アイドルだと言われてもなんの疑念も抱かないだろう。


「あー、どのくらいで着きそう?」

「もう着きますよ。アレです。見えますか?」


 無言が気まずくなって適当に話題を選んだが、そう言われて指差した家を見る。

 その先には2階建ての一軒家。ホントに近いんだな、5分も歩いてない。


「ど・・・どうぞ」

「お邪魔します」


 モモを抱えた彼女に招かれるまま扉をくぐる。

 扉をくぐった先は白を基調としたシックなデザインの内装だった。目の前に階段があり、扉は階段のとなりと左右の三つが見える。

 モモ抱えながら器用に靴を脱ぐ川瀬さんに合わせて俺も靴を脱ぐ。あ、水浸しのままだけど大丈夫だろうか。


「このまま上がっちゃうと床濡れそうだけど大丈夫?」

「大丈夫です。あまり濡れてたら拭いておくので・・・・・・あっ、お風呂の場所わかりませんよね、こっちです」


 そう言って連れられた浴室。なんだろう、違和感を感じる。

 それよりそろそろ寒さとへばりつく服の不快感でどうにかなりそうだ。


「着ている服は洗濯機に入れておいてください。入っているうちに洗濯しちゃいます。――――着替えはどうしましょう・・・・今家に着られそうなものが」

「それなら、持ってくれた荷物を持ってきてもらえる?ちょうど簡単な着替えも入っているから」

「わかりました。洗濯するタイミングで持ってきますね」


 彼女は安堵した表情を見せた。

 そしてそのままフェイスタオルをモモにかけて拭き始める。


「えーっと、さっそくお風呂使わせてもらうけど、服。いいかな?」

「えっ?----あっ!ごめんなさい!!私がいたら脱げませんものね!!」


 そう言いながら顔を真っ赤に染めてモモを抱え直して出ていった。





   シャーーーーーー



 あぁ~~~。生き返る~~!!

 さすがに左手にはお湯かけられないけど、十分気持ちいい。


「あのぅ、手もですけど大丈夫ですか?」


 扉をノックされシャワーを止めた後、伺うように声が聞こえた。


「ありがとう。問題ないよ。これから洗濯?」

「はい。私はリビングに居るので終わったらどうぞ。廊下に出て扉が空いている部屋です」


 その後聞こえてくるのは洗濯機の起動音と洗面所を出ていく音。

 もう浴室入って10分弱か。十分温まったしそろそろ出なきゃな。



   ◇◇◇



「モモも、今日はごめんねぇ」


 私は玄関でモモの身体を拭きつつ、懺悔するかのように謝る。

 あの人が来なかったら一体どうなっていたか想像もつかない。警察沙汰になっていたのかな。


 ・・・・・・あ!そういや名前聞いてなかった!あがって来たら聞かなくちゃ!!

 って男の子を家に上げるのなんて初めてだよ!それどころかお風呂を貸すだなんて。

 助けてくれた後のこと考えたら自分らしからぬ行動しちゃった気がして恥ずかしい!


 それに歩くときも全然会話もなかったし、無愛想な子だと思われちゃったらどうしよう・・・・・・


 とりあえず!モモも拭き終わったしあの人のために温かい飲み物でも準備しなくちゃっ!!



   ◇◇◇




 まさか買ったその日に出番がやってくるとは。もっとちゃんとしたの買うべきだったかな。

 荷物の上に置いてくれていたバスタオルで温まった身体を拭きながら買ったものを軽く後悔し、左手の様子を見る。


 おそらく犬歯が思い切り入ったのだろう。軽く歯型ができてる中、掌の一部分だけが深く傷ついている。

 これは痕残りそうだなぁ・・・・・あんまり目立つところじゃないし仕方ない。


 まずは手当てしてもらわないと。

 今日の買い物で調達したもの―――長袖Tシャツとチノパンに着替え洗面所を後にする。


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