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032.グループ作成

「さて、今週末の林間学校について説明していくぞー!」


 4月も最終週に入った月曜日最後の授業、クラスでは眠気に限界に達したのか机に伏せって寝ている生徒もいる中、教壇に立った先生が林間学校について説明しようとしていた。


「その冊子にあるように林間学校は今週の土日に行う。そしてそれが終わったらゴールデンウィークだ!他の生徒に比べて代休の分連休は長くなっているからしっかり遊んでこい!」


 そう。この行事は土日にある。それでも文句を言う人が一切いないのは代休によって次の土日まで休みが続くため通常5連休のところ7連休となるためだ。

 先生はスケジュールや注意事項を喋りながら寝ている生徒の頭を生徒名簿を使って起こしていく。その内の一人に優愛さんがいた。


「晩ごはんだね!お姉ちゃ・・・」


 昼食は足りなかったのだろうか、彼女は起こされた拍子に立ち上がって素っ頓狂なことを言う。しかしすぐに教室だと気づいたのか顔を真っ赤にしてまた顔を伏せてしまった。


「晩ごはんは学校が終わってからにしろよー。さて、そこでこれから4~5人グループを組んでもらう!夕食作りをするから男女混合でも良い、せめて包丁使えるやつ一人は各グループにいるように!!」


 先生が話し合うように促すと教室が一斉にざわめいた。席を立って友人と固まる者、その場で周りの人と交渉する者と様々だ。

 俺はとりあえず、と席を立って智也のもとへ向かった。


「智也、いい?」

「あぁ、いいぞ。それで、残りはどうする?・・・・・・まぁ、お前の中ではもう決まっているだろうがな」


 既に考えを読まれていた。読まれている通りに動くのも癪だが他に候補もいないのでまず一人目、すぐ前に座っている翔子さんに顔を向けると目が合った。とりあえず笑顔で返す。


「っ・・・・・ 慎也くん、私も いい?」

「うん。今誘おうと思っていたところだよ。翔子さんは料理できる?」

「・・・自信ない。でも、包丁くらいなら」


 それなら十分だろう。後はいつもの姉妹か。そう思って彼女たちの席を見ると伏せっている優愛さんに優衣佳さんがなにか話しているのが見えた。俺は2人に断りを入れて姉妹のもとへと向かう。


「優衣佳さん、どうしたの?」

「あら、それがこの子、さっき起こされた時のことをまだ引きずっているようで・・・優愛、いい加減顔を上げなさい!」

「や~!恥ずかしいよぉ・・・慎也くんだって「この食にしか興味のないメス豚め!」って絶対言うもん!!」


 優愛さんの中の俺は一体どんな人物なのだろう・・・


「そんなこと言うわけないでしょ・・・・・・それじゃあ、私だけ慎也くんのグループに入れてもらおうかしら」

「それは駄目!!!」


 優愛さんがガバっと勢いよく顔を上げ、俺と目が合った。とりあえず笑顔で返すが俺が近くにいることに気がついていなかったのだろう、涙目のまま顔を赤く染めて優衣佳さんのお腹に顔をうずめてしまう。


「慎也くん・・・さっきの、聞いてた?」

「えっと・・・・食にしか~ってこと?俺はそんなこと言わないから安心して」

「うわぁぁぁん!いっそ殺してぇぇぇ!!」


 優愛さんはそのまま更に深く顔をうずめてしまった。


「えっと・・・慎也君はグループのお誘いかしら?」

「あっ、うん。そうだよ。2人どもかまわないかな?」

「ええ。喜んで受けさせてもらうわ。優愛がごめんなさいね。優愛、慎也君がグループに誘ってくれたわよ」

「うううう・・・・・・慎也くん、ありがとぉ・・・・食べてばかりの私でも、入れてくれる?」

「もちろん。優愛さんの魅力は明るさでもあるんだから、落ち着いたらまた素敵な笑顔を見せてね。それじゃあ優衣佳さん、俺は戻るよ」

「ありがと。また後でね」


 俺は抱きしめられたままの優衣佳さんに一言行って智也と翔子さんのもとへと戻る。そこにはニヤニヤした笑顔をした智也が待っていた。


「よお。無事グループに入ったようだな」

「まぁ、ね。それで、その笑みは?」

「いやぁ、お前はいくら見ても飽きないなぁって思ってなぁ」

「それは光栄だね。それでこの5人で智也も問題ない?」

「もちろ――――――」

「大外~~!すまん!こっちヘルプ構わないか~!?」


 智也に最終確認をしたところでクラスメイトから呼び出しがかかった。


「どうしたー!?」

「こっちのグループ、マトモに料理できるヤツがいないんだ!お前そこそこ出来ただろ!?こっち入ってくれ!!」


 智也は少し考え込んだ。俺が声をかけようとしたところで、彼の嫌な笑みが見えてしまい少し戸惑う。


「おう!もちろんいいぞ! すまんな慎也!俺はあっち行くからあとは4人でよろしくやっておいてくれ!!」


 そう有無も言わさぬ速さで畳み掛けて智也はクラスメイトのグループに合流してしまった。俺は思わず翔子さんと顔を見合わせる。


「えっと・・・・・どうしよう?」

「ん・・・男子、慎也くんだけ。問題ないなら、いい」

「問題って・・・・当然あるでしょう」


 学校行事なんだし倫理的に。


「いや、別に構わないぞ」

「!?」


 いつの間に近づいていたのか直ぐ側に先生が現れていた。先生は生徒名簿を肩に乗せながら俺たちの疑問に答える。


「冊子見たらわかるがグループ活動なんて軽い散歩と食事くらいだ。別の棟にある寝室に行ったりしないなら問題はないぞ。・・・当然、しないよな?」

「も、もちろんです!」

「ならいい。それじゃあこの紙にメンバーを書いて提出するように」


 翔子さんにプリントを渡した先生はそのまま各グループへ配りに去っていった。俺は思わぬ緩さにあっけにとられる。


「慎也くん、名前書いた。あの2人に聞いてきて」

「あっ、そうだね。ありがとう」


 翔子さんからプリントを受け取った俺はそのまま自分の名前を書いて優衣佳さんのもとへ向かう。


「優衣佳さん。メンバーのことだけど智也が別のとこ行っちゃってさ、男俺1人になって大丈夫?」

「あら、最初から男子は慎也君1人の予定じゃなかったの?他にいるなら断ってたわ」

「優衣佳さん!?」

「・・・・・冗談よ。あんなに大声で話してたんだもの、事情は理解してるわ。その紙に名前を書くのね、貸して頂戴」

「ビックリしたよ・・・はい、あとは2人の名前だけだからよろしくね」


 優衣佳さんは二人分の名前を書いてプリントを俺に返す。問題ないことを確認して提出に向かおうとしたところで、服が引っ張られる感覚がして後ろを振り返る。


「慎也くん・・・」

「優愛さん。もう平気?」

「うん。ごめんね。恥ずかしいところ見せちゃって」

「とんでもない。少し幼児退行した優愛さんも可愛かったよ」

「む~~~~!!」


 優愛さんは両手で俺の腹部を小突いてくる。しばらく小突く拳を受け止めていると優愛さんが満面の笑顔をこちらに向けてくる。


「慎也くん、林間学校楽しみだね!」

「・・・そうだね!」

「・・・2人の世界作ってないで早く提出しちゃいなさい」


 優衣佳さんから催促が来たので俺は先生にプリントを提出する。智也は既に席戻っているみたいだし軽く恨み言でも言っておこう。


「智也。さっきのは確信犯だったでしょ」

「当然だろ?むしろ俺がいたら邪魔になりかねんしな」

「邪魔だなんてあるわけ・・・」

「昨日、俺が渡した割引券使って4人でカラオケ、行ったか?」

「えっ?あぁうん。それについては助かったよ」

「もう十分4人でチームになってるんだ。俺がいたって邪魔になるだけだろ?それに、お前らは外野から見てるほうが面白いからな」

「・・・・・・・・・後半が本音でしょ」

「当然!」


 智也の真意が知れたところで授業終わりのチャイムが鳴り、ここまでかと俺も席に戻る。



「これからホームルームだが、連絡事項は特にない。ただ、グループ決まってないヤツは前日までに書いて提出すること。それじゃあ解散っ!」


 先生らしい簡潔な説明で本日の学校も終わりだ。日直の号令と同時に翔子さんが俺の席に近づいてくる。


「慎也くん、いい?」

「どうしたの?」


 放課後に彼女から来るなんて珍しい。林間学校絡みのことだろうか。


「これから、私の家に・・・来てほしい・・・」

「・・・・・・・・・・へ?」


 俺は翔子さんの言ってる内容が理解できず、つい聞き返してしまった。

評価いただきました!本当にありがとうございます!!

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