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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第1章

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020.節約上手なお弁当

「おまたせ。食べずに待っててくれたんだね。優愛さんは限界だったみたいだけど大丈夫だった?」


 俺と井野さんは食事を受け取り、先に席を取って待っててくれている二人を探すと、奥のほうにその姿を見つける。二人は隣り合ってお弁当を開けずに待っててくれていた。お茶の入ったコップを二人の向かいに二つ置いてくれていることからそっちに座ればいいのだろう。

 俺が優愛さんの向かいに座ると井野さんも「失礼します」と声をかけて俺の隣に腰を降ろす。


「これくらい全然平気!食堂もメニュー豊富だったけど購買のデザートもいろんな種類あったね!」


 そう言う彼女のお弁当箱の上にはシュークリームが。人が詰めて混雑している購買戦に参加したのだろう。


「それじゃあいただきましょうか。あんまり話してると私のぶんも優愛が食べちゃいそうだし」

「そんなことしないよ~。いただきま~す!」


 優衣佳さんの催促に優愛さんがいち早く反応し、その後俺たちも「いただきます」と声を揃える。

 二人のお弁当箱の中身はチキンライスに卵焼き、ほうれん草の茹でものと色とりどりな見栄えで健康も考えられたバランスの良い内容だ。


「優衣佳さん。そのお弁当凄く美味しそうだね。冷食が無さそうだけど全部作っているの?」

「ありがと。これの殆どは昨日の残り物よ。朝作ったのは卵焼きくらいかしらね。慎也君も昨日の残り物でお弁当作ったりしないのかしら?」

「昨日はそこまで頭回らなくって・・・でもそうだね。今度作る時の参考にさせてもらうよ」

「えぇ。食事代はかなりの節約になるわよ」




 食事も進み、みんなが食べ終わった頃に井野さんから声がかかる。


「あの・・・そろそろ、いい?」


 そう聞こえて隣を見ると井野さんが俺の袖を軽く引っ張っており、身長差のためか軽く上目遣いでこちらを見ていた。


「そうだね、自己紹介でも言ってたけどこちらが姉の優衣佳さんで、隣でシュークリームを口にしているのが妹の優愛さん。二人とも、この人は井野 翔子さん。中学からの友達で色々と世話になった人だよ」

「よろしく。井野さん・・・でいいかしら?」

「翔子でいい・・・よろしく」

「ムグムグ・・・・・・よろしくね。翔子ちゃん」

「ん・・・」


 今は井野さんが少し緊張しているようだがすぐに打ち解けるだろう。


「前坂くんは・・・二人とどこで知り合ったの?」

「あぁ・・・そのことだけどね、話していいかな?」


 俺は二人に顔を向けると首を縦に振り肯定してくれた。


「それじゃあ3日前のことなんだけどね――――――」




 俺は出会った時のことをかいつまんで話した。もちろん向こうの家庭の事情等は伏せて。

 話し終わる頃には食堂にいる人達も食べ終わったのかまばらになっていた。

 話している間に手持ち無沙汰になった優愛さんが俺と伊野さんのの器を返却しに行ってくれた。感謝。


「・・・・わかった。前坂くん・・・」

「どうしたの?」

「・・・・・お人好し」

「だね~。でも私はそれに助けられたから~」

「井野さんのそれは褒めてるの・・・?」


 一連のあらましを聞いたあとの第一声がそれだ。その後の井野さんはジト目でこちらを見続けている。

 優愛さんに褒められたのと井野さんの目線でなんだか気恥ずかしくなってしまう。


「ところで翔子さん、慎也君とはいつ知り合ったのかしら」

「ん。中2の秋頃」

「へ~。秋なんて微妙な時期だね」


 井野さんは優衣佳さんの質問に簡潔に答える。確かに優愛さんの言う通り秋はクラス替えも無いし修学旅行は3年の秋だったので微妙な時期だろう。


「当然・・・私と前坂くんは・・・一度も同じクラスになったことがなかった」

「あら、じゃあ文化祭とかかしら」

「いや・・・・・」


 井野さんは一度言葉を区切り、突然俺の腕を抱いて答える。


「前坂くんは・・・生徒会の副会長として知り合って・・・・それからずっとそばに居てくれてる」


 ――――――気温が一気に氷点下になった気がした。

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