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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第1章

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015.はじめてのお家訪問

「それじゃあ俺は帰るけど、ホントに買い物任せちゃっていい?」

「もちろん。メモも貰ったしね。私もよく使ってた店だし心配いらないわ」


 学校からの帰り道。みんな同じ方向であるため途中まで一緒に行こうという話になり帰路を共にしている。

 そんな中買い物を任せることに申し訳無さを感じつつ再度確認を取ったところ、優衣佳さんが胸を張って答える。もちろん物理的な意味ではなく。物理的にも張った気もしたがきっと気のせいだろう。こういう時、頼れる人がいるって素晴らしい。


「私は~?なんで私は一旦家に帰らなきゃならないの~?慎也くんについって行ってもいいじゃん~!」

「優愛。前買い物行った時の悲劇を忘れたとは言わせないわよ。それに男の子だもの。部屋を片付ける時間も必要よ」


 優愛さんは今日の方針に少し不満を持っているのか。


「優衣佳さん、悲劇って何があったの?」

「前、あの子に買い物任せたらレタスとキャベツを間違えて買ってくるわ、買い物中にロールキャベツの予定をカレーが食べたくなったって言って、カレーの材料を買ってきた挙げ句ルーを買い忘れるっていうことがあってね・・・・・・」

「ちょっ!!お姉ちゃん!?」

「それは・・・・・・大変だったんだね」

「それだけじゃないのよ!その後私が居たら大丈夫だろうって一緒に買い物したらお菓子とか謎の調味料ばっかりカゴに入れてくのよ!!それ以来料理関係の買い物は一切任せて無いわ」


 優衣佳さんは相当思うところがあったのだろう。こんなに感情的なってる優衣佳さんは初めてみた。優愛さんは目に涙を浮かべている。


「ほら、優愛さんも泣きそうになるくらい反省してるようだし、そろそろこのへんで・・・」

「うぅぅぅぅ・・・・・・・・・やっぱり味方は慎也くんだけだよぉぉぉぉ・・・・・」


 頼られるのは嬉しいがこの件は優愛さんに非があるため苦笑いしかできない。


「はぁ・・・・・・と、いうわけで優愛は先に家へ帰っておいて。買い物終わったら一緒に行きましょう」

「え?お姉ちゃん直接行かないの?」

「ウチの買い物もついでに済ませるわ。だから荷物を一旦置いて慎也君の家に向かうの」

「はぁい~」


 優愛さんも理解を示したところで分かれ道。


「じゃあ、俺はこっちの道だから。住所はあとでメッセージを送るね」

「えぇ、よろしく。買い物終わったら行くわね」

「またねぇ~!」


 俺は二人と別れて一人自宅へと向かった。



「ただいまー」


 誰も居ない我が家に向けて声を放つ。もちろん帰ってくる声もあるわけがない。

 とりあえず荷物を自室に置いて軽く部屋を確認する。一人暮らしを始めたばかりだし掃除はこまめにしているつもりだからか特に目立ったものは見当たらない。メッセージを送ってから軽く掃除機をかけるだけでいいだろう。

 帰る時に本日の料理禁止令も出されたから今やれる家事もあまり思いつかない。明日の学校の準備でもしておこうか。



 ある程度掃除し、明日の準備もし終えたところでインターホンが鳴る。時計を見ると結構な時間が経過していた。二人が来たのだろう。


『はい』

『前坂さんのお宅ですか?川瀬と申します。慎也さんはご在宅でしょうか』


 受話器から凛とした優衣佳さんの声が聞こえる。


『いらっしゃい。ロック解除するからエレベータで上がってきて』

『わかったわ』


 了解も得たところでオートロックを解錠する。


 しばらく待つと今度は玄関のインターホンが鳴る。扉を開けて出迎えるとそこには私服姿の二人の美少女が立っていた。

 優衣佳さんは亜麻色のロングスカートに白いシャツ、アウターに紺色でロングのジップアップパーカーを着用している。春らしいスッキリとした装いだ。

 優愛さんは青色で細身のジーンズに膝まで伸びる薄紅色のスウェットの姿だ。綺麗な亜麻色の髪と合わさって大人っぽい印象を覚える。


「二人とも着替えたんだね」

「新しい制服、シワになる前に伸ばしたかったからね!7階って思ったよりもたっかいね~!!」


 優愛さんがあっけからんとした様子で受け答える。案外高いところは平気なのだろう。

 内心優愛さんは高所苦手と勝手に思っていたのが、予想を裏切られて驚いたところで二人が手を繋いでいるのが見える。というか優愛さんが優衣佳さんを引っ張っていて優衣佳さんは顔を下げたまま一切身動きを取らない。


「あの、その手は・・・」

「あぁ・・・私もエレベータ降りるまで知らなくってさ~」


 優愛さんは困り笑顔を見せながら話を続ける。


「お姉ちゃん、かなりの高所恐怖症みたいなんだ~」

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