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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第4章

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109.夕焼けの元で


 夢を見た。


 

 一番に目に入るは燃えるような照らすもの全てを焼き尽くすような赤だ。



 俺はその光を背中に浴びながら立ちつくしてる。



 視線の先には夕焼けを一身に受け止めるかのように立つ少女が1人。



 その顔はわからない。夕焼けに照らされて鮮明に見えているはずなのに脳が誰かを理解しようとしていなかった。



 ただ、笑っている。それだけは理解できる。俺と向かい合っている彼女は心の底からの笑顔だ。



 けれどどうしてだろう。その笑みを見ても俺が笑っていないのは。



 どうしてだろう。彼女の瞳から涙がこぼれ落ちているのは。



 そんな笑って(泣いて)いる彼女が口を開く。言葉は、声は聞こえないがその意味は理解できた。



 「大好き」 と――――




 ―――――――――――――――――

 ―――――――――――

 ―――――――




 無機質な電子音が静かな空間をやかましく騒ぎ立て部屋の主に時刻を知らせる。


「あぁ……朝…………」


 俺は枕の横に放られていたスマホを手探りで探り当て側面のボタンを使って音を止める。

 するとけたましく鳴り響いていたスマホがなりを潜め、部屋に再び静寂が舞い戻ってきた。俺は身体を起こすため腕に力を込める。


「起きな…………あ、無理……」


 その腕は思うように動くことができずベッドにうつ伏せで倒れ込んでしまう。

 と同時に俺を襲うのは節々の痛みと強烈な倦怠感。この感覚は覚えがある。


「風邪、かぁ……」


 入学式前に引き続きまたやってしまった。現在は12月中旬、1年で2回も風邪引くという俺にしては珍しい失態である。

 やはり運動をしなくなって身体が鈍ったことが原因だろうか。いや、きっと違う。おそらく12月に入っていきなり気温がグッと下がったことが原因だと思いたい。

 それを証明するようにカーテンを開けると窓には結露が張り付いていた。ここはほとんど雪の振らない地域だがこの寒さだと今年はいつか雪が降るのかもしれない。

 更にいえばテストが終わったことで緊張の糸が切れたこともあるだろう。まだ結果は返ってきていないが手応え的には十二分にできたと感じている。




 そんな自分の中で自己弁護という何の意味のないことを考えて意識だけでも目覚めさせるも身体は言うことをきかない。これはなかなかに重症だ。


 起き上がるのを諦めて身体の力を抜き二度寝に突入しようとする……しかしまたもやスマホからやかましい音が鳴り響いた。

 スヌーズ機能か……今度こそスマホの画面を直視してスヌーズごと解除する。


「連絡……しないと」


 スマホの画面にちらりと見えた日付により今日の予定を思い出した。今日は月曜日、普通に学校があるんだった。

 もうあと二日頑張れば終業式からの冬休みに入るのだからタイミングが悪い。


 俺はなけなしの力を振り絞って学校と…………彼女たちへの連絡をしようとする。


 ふと、電話をかける直前で目の端の違和感を覚えた。不思議に思ってそこへ手をやると、目から耳にかけて涙の跡が残っていた――――




 ◇◇◇




「ねぇ、見たぁ?今日慎也くん風邪なんだって」


 目の前に座っている妹……優愛がスマホ片手に私たちに語りかけてくる。


「えっ!?そうなんですか!? ……あっ、ホントです、だから遅刻近くなっても来ないんですね……」


 優愛の左……慎也君の席を占領している後輩の雫さんがつられてスマホを取り出しながら悲しげな顔を見せる。

 そっか、今日は彼がいないのか。そう考えると胸の奥にポッカリと何かが空いた感覚を覚えて身体の奥が冷たいと錯覚させる。


「時間になっても来なかったから……察してた。雫も違う?」


 翔子さんの問いに雫は首を縦に振る。

 そう、今朝いつものように彼のマンション下で待ち合わせていたものの時間を過ぎても彼の姿は現れなかった。しかし待ち続けて全員遅刻は許されないと、私たちは不安を抱えつつ彼に一報入れて先に登校していたのだ。


「確かにそうですけど……寝坊とかかもって会長さんも言ってたじゃないですか~」

「そうね……でも結局風邪だったと。先週と比べて一気に気温が下がったからそのせいかもしれないわ」


 今年の気候はおかしい。先週までは15度を上回るくらいだったものの数日前から一気に気温が下がって10度手前になっていた。夏は9月までかなり暑かったし寒暖差がひどすぎる。



「だね~。私たちも気をつけなきゃ………そうだ!」


 優愛が何やらひらめいたようだ。姉としてわかる、絶対碌な事じゃない。


「私、ちょっと午後からお腹痛くなる予定ができちゃって…………」

「あ!優愛先輩ズルい! 私も午後から突発性偏頭痛で早退する予定があります!」


 ……やっぱり碌なことじゃなかった。


「二人ともそんなのダメに決まってるでしょう」

「そこをなんとか! お姉ちゃん、今も辛くて慎也くんがお腹空かせてるかもしれないんだよ……?心配じゃないの……?」

「それは……」


 私も彼が心配じゃないと言えば嘘になる。今からでも学校を飛び出して家に突撃したい。けれど……


「優愛、早退はもっとダメ」

「翔子ちゃんまで……」


「早退したら慎也くんが悲しむ。だから放課後じゃないと」

「そっか……」


 私がいいたかったことを翔子さんが代弁してくれた。優愛はひとしきり唸った後何かを考え出す。



「……あっ、メッセージ来ました! 『痛み以外大したことないし、食欲はあるから心配しないで』 とのことです」


 私のスマホが震えるのと同時に雫さんが中身を伝えてくれる。食欲があるようならある程度安心だけど……


「最近あんまり慎也くんと夜ご飯食べてなかったからなぁ……あんまり栄養つくもの食べてないのかも」

「ん。 一人だと杜撰になりがち」

「そうだよねっ! 私もお姉ちゃんが居ないと何食べてるかわかんないよ~」


 優愛と翔子さんが手を取り合ってよろしくないことを言い出す。貴方も多少は作れるようになったんだから作りなさい……

 けれど口にはしないがそれは私も同じ。もし優愛が居なかったら……部屋にカップ麺の容器が積み重なってるのかもしれない。



「それなら先輩方、今日学校終わったら慎さんにご飯作りに行くのはどうです?」


 雫さんが提案してくれるも私には同意することは難しかった。


「それは良い提案だと思うけど……風邪なのに押しかけるってのは逆に無理させないかしら」


 彼なら絶対に無理を押して歓迎してくれるだろう。けれどそれが原因で更に体調を崩すすのは絶対に避けたい。


「でも! 風邪の時は人恋しくなりますし……それに、慎さんのこと頼まれたんですよね?」


 雫さんの真っ直ぐな視線に私はとある日のことを思い出す。

 あれは文化祭も終わって間もない頃、私たちの家に届けられた一通のエアメール…………



「そう……だね。お姉ちゃん、『アレ』を使うときじゃないかな?」

「私も、賛成」


 優愛と翔子さんも私に顔を向ける。3人とも……4人とも意見が一緒なら……


「そうね。じゃあ今日の放課後、彼女に託された『アレ』を使いましょうか」

「「「は~いっ」」」


 私たちの意見が一致したと同時に学校中にチャイムが鳴り響いた。

 さて、まずは今日の授業からだ。




 なお、ホームルームが終わるまで彼の席に座っている雫さんが先生に気づかれなかったのはまた別のお話。



イチャイチャ書きたい……でも今はシナリオパート……

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