それは米良ゾーマではなく、米良だ
ゆっくりと目が覚めた
土魔法で作った小屋の中、
馬鹿王様の城から奪って来た
ベッドの上で欠伸をしつつ
背伸びをする
朝焼けがやけに目に染みる。
アイテムボックスに、
ベッドをしまい、
石魔法で造った
小屋の外に出る。
「おはようございます、ご主人様」
「あ~おはよ~フェン、軍曹もおはよう。」
軍曹も挨拶なのか
一番前の右脚を上げる。
目覚まし代わりに
ラジオ体操で、
身体中の筋をのばす。
水魔法で顔を洗い、
口を濯ぐ
「今日も良い天気だね~、よーし朝飯にするか」
「はい!ご主人様」
アイテムボックスの
中からパンとサラダ、
ゆうべのごった煮スープを出す。
「で、なんでオークの王様がちゃっかりしっかり、ここで一緒に食べてんの?」
「良いじゃねぇか、こんだけ旨い朝飯を目の前に、大量に置かれてたら食いたくもなるじゃねぇか」
「あら、マジでハマってくれてる?嬉しいよ」
「あぁ、お前さんの料理は格別だ。俺の食った分も余分に渡すから心配するな。まだお前達当分はここに居るんだろ?」
「あぁ、二三日はここに居るつもりだ。」
「手配にも、手続きにも時間がかかるからな。」
「お役所仕事は、どこの国でも一緒だわな。」
「まぁな」
「あ、壁のこちらだったら、剣とか魔法とか修行?しても構わないか?」
「あぁ、好きにしろ。壁崩したら直して貰うがな。」
「りょ~かい」
「あ、もし良かったら、ウチの若い衆をいっちょう鍛えてやっちゃぁくれないか?」
「あ~良いよ。こちらとしても人間?相手の訓練は願ったり叶ったりだ。」
「ご馳走様でした、旨かったぜ。」
そう言うと
気さくな王様は
笑顔で門の中に入っていった。
「そう言えば、フェンって寝てるの?」
「いえ?デュラハンは寝なくても大丈夫ですが」
「ふーん。あ、夕べもベッドに運んでくれたの、フェンなの?ありがとな」
「はい‼」
(朝から良い笑顔だな、癒されるわ~)
「さてと、魔法の練習でもしますか。フェンは魔法使える?使えなかったか。じゃあ素振りでもしておいて」
「はい‼」
ん~やっぱり物理的に
ダメージ与えられるの、
固形物の土魔法が
一番強そうだよな。
弾丸?砲弾?状に
岩を押し固めて、
標的はあの岩の
ど真ん中に設定っと。
スピードは時速200キロ位か?
弾を魔力で引っ張る
イメージでイケるのかな?
発射‼
高速で岩の砲弾が飛んで行く
ドォォォン
「あ、やっぱり貫通しちゃったか。この壁に向けたら、貫通しそうだよな。ヤバそうだな。」
自分の桁外れな魔法の威力に、
呆然としていると、
オークの王様が、
「お前さんの魔法も、ホントに桁違いだな。お前さんにウチの城攻められたら、一時間も持ちそうに無いわ。敵に為らなかったウチの国はツイてんな。召喚されたのがお前さんで良かったよ」
呆れられながら言われた。
若葉マーク講習中の
こちらの世界初心者なのに
解せぬ。
風魔法でメタンガスを集めてみる。
半径10センチの球体状に。
15メートル離れた場所に固定した後、
火魔法で点火する。
CH4+2O2→CO2+2H2O
反応式はこんなんだったか?
メタンの2倍の酸素が必要か。
まぁ火を着けたら勝手に
反応するんだろうけども
酸素が足りないと燃焼時に
一酸化炭素とかをやっぱり
生成したりするのだろうか?
ドォォォン
やっぱり爆発した。
んー予想通りだな。
でも、魔法って
相手が動いてたら、
当てにくいよな。
しかし威力はスゴいな
例えそれがメ○だろうが
メラゾー○だろうが
熱量は燃える物質が
多いか少ないか
激しく燃えるか
どれだけよく燃えるのかで
決まるからな
拠点防衛用の
地雷魔法としては、
アリなのか?
まだこちらの世界の
トイレはくみ取り式だろうし、
炭素ベースの有機化合物の
腐敗発酵時に生成する
メタンガスは
集めやすいっちゃあ
集めやすいしな。
埋葬方法が
土葬だったら尚更だな。
火葬無しなら腐敗する際に
発生しそうだしね
日本だって江戸時代辺りまでは
土葬してたらしいしな
集める気体が
一酸化炭素CO、
二酸化炭素CO2
等の気体なら暗殺用だな。
まぁ酸素以外なら
無味無臭の気体なら
窒素N2であろうが
水素H2であろうがどれでも
窒息死しても
証拠はでないしな。
ここの科学レベルなら
死因検死するほど
科学が
発達しているわけではないが
そもそも
窒息して死んでる人間の
窒息死の原因を調べる程
文化文明が進んでるとも
思えないけど
脳いっ血辺りで
一くくりなんじゃないのか
寝てる相手の部屋や周囲に
何分間か固定すれば
証拠も残らず暗殺ができるわな。
しかし化学記号のCとかOって
あちらの世界の
「アルファベット」だけども
アルファベットとか日本語とか
この世界に認識されたのかしら?
そもそも
城の王様やらこのオークキングは
日本語で流暢に意志疎通が
しっかりと出来てるよな?
一体全体どうなってんの?
あの誘拐王もオークキングも?
「はぁ、お前さんに勝てる奴が、とても想像できんわ。」
「そうか?魔法をイメージし設定するのにも慣れが必要だ、連射が出来ない。咄嗟に攻められたら、対応が出来ない、魔法使いはそこが弱点さ」
「いやいや、昨日みたいに高速で動いて、間合いを取られたら、対応出来るだろ?ましてやお前さんにはフェンさんが居て護衛してたら、まず無理だ」
「あぁ、そう言えばそうか。引き離せたら魔法のイメージを出来る時間を作れるのか。頼むぞ?フェン」
「はい‼」
「で、その王様の後ろに居る方々が、俺達の手合わせしてくれるの?」
王様オークの後ろには
様々なオークが呆然としている。
「じゃあフェンも手合わせをしてもらって」
「はい‼」
「よろしくお願い致します」
そう言って、
対戦する前に
剣道の授業の時の様に
オーク達に頭を下げた。
オーク達は呆然としている
「ん?あぁこれは手合わせする相手に、練習させて貰う感謝の意味を表す挨拶だ。ウチの国で、練習する際にはこうしてるんだ。」
「いやいや、違う違う。そうじゃなくて、昨日も言っただろ?人間が魔族相手に、頭を下げる事なんか無いって。だから、こいつらびっくりして呆然としているんだよ。」
「あぁ、そうだったっけ?まぁ厳密に言えば俺はこの世界の人間ではないからな、この世界の人間社会の常識なんかは知らないし。この世界の人間から見れば、俺と言う存在はまだお前ら魔族とそんなにかわらないのかもな。この世界に血を分けた肉親もいないし、そもそも「本当に」遺伝子的に似た近い種類の存在すらもこの世界この星の上にいるかどうかは判らんしなー」
「お、おう、まぁ、そういうことだ。お前ら、しっかり稽古をつけてもらえ、良いな?返事は?」
「「「「よろしくお願いします‼‼」」」」
「よろしくお願いします。」
オークの若い衆も
フェンも礼をする。
俺とフェンは
それぞれオーク達と
対戦相手を次々と変えながら、
午前中は稽古をつけて貰った。