門番オーク実は
「でよ?俺自身も訳が分からないから、状況把握も兼ねて、こっちの魔王さんに話を聞きに来たってわけだ。片方の話だけを聞いて、鵜呑みにして判断するって、馬鹿のすることだろう?」
『消防署の方から来ました~』
と嘘をついて消火器を
売り付ける詐欺が
昔有ったらしいけど、
消防署に確認もせずに
話を鵜呑みにして
信じるやつ馬鹿だろ
しかも相手の言い値の
お金を疑うことなく払うって
意味がとても分からない
門番オークとフェンと
飯を食べながら、
こちらに来た経緯を話した。
「あぁ、まぁな。しっかし、おめえさんも大変な事に、巻き込まれちまったもんだなぁ。同情するぜ。無理矢理自分の世界から意味もわからず離されて、自分の親兄弟にすらもう二度と会えないかどうかも分からないかもって、想像するだけで、実際嫌になるわ。しかもアンちゃんの気持ちも意見も聞くことすらもなく無理矢理って、理不尽にも程がある」
門番オークが
同情してくれた。
肩を叩いてくる
「ご主人様‼何か困った事があったら、いつでも何でも私に仰って下さい。」
フェンも、
目に涙を浮かべて、
両手で自分の胸の前で
俺の両手を包んでいる。
「あ、あぁ。」
魔物って言っても、
冷酷非道ってわけでも
無いんだな。
あれぇ?
「あんた、ずっとここで門番をしてるんだよな?」
「あぁ、そうだが?」
「最近、あのさーここの魔王さんって、あの国に何かちょっかいかけた事が有ったか?」
馬鹿王の城を指差したり
オークの都を指差したり
しながら話を進める
「いや?見ての通りここは、オークの国はこの防壁で防御してるだけだから、こちらから攻めた事は、ここ最近特にこれと言ってはして無いな。」
「すると、やっぱりあの馬鹿王がここを侵略する為に、他の世界から、俺がいた世界から俺を召喚しやがったって線が濃厚だな。」
「あ、あぁ、まぁそうだな。」
「まあ、当分はここの魔王さんとこには、先ずもって攻められないだろうから安心して良いんじゃないかな?」
「それはまたなんでだ?」
「いやぁ、あちらのバカ王の国の王室を王都ごと潰してきたから、別の都市に居るだろう次の王位の継承者争いとか、貴族同士の権力争いとか何かで、一悶着有るって言うのが定番でしょ。それに他の敵対する回りの国々もひょっとしたらもしかすると、国力の落ちたあの国を攻めるかもしれねえし。」
「そんなことよく分かるな?!」
「まぁ、俺の世界でも、権力争いや勢力争い、継承者争いってのは歴史上当たり前のように有ったし、国力が落ちたらまず周囲の国や国の内部の有力敵対組織から攻められる危険性があるのは、どこの世界でも世の常だろ?学校でも習ったし。」
国同士の同盟や
連繋はあるかもだけど
国際連合とか国際機関とか
世界会議とか
世界的国際的な機関や組織は
とても有りそうな
文明レベルに達しているとは
思えないしな
「そのガッコウって何のことだ?」
「あ、あぁ、こちらには無いのか?文字の読み書きやら、数字の計算、自然の法則、社会の在りかたなんかを、それぞれよく知ってる得意とする大人達が子供達に教える場所の事だよ。」
「へぇ、俺達は親に教わるだけだがなぁ。」
「まぁ、そんな学校って所で、その国やらその世界の歴史を習うんだが、この事件がどういう背景があって起きたのかも習うんだ。」
「ふーん、なるほどねぇ。」
「おい、おかわりは?いる?」
「あ、あぁ、ウマイなこれ。」
「そうか?有り合わせのごった煮だけど、気に入って貰えたなら、嬉しいよ。」
塩と砂糖と
香辛料くらいしか調味料
あの城無かったんだが
「お、おう。」
「しっかし、魔物って言っても、冷酷非道で極悪非道ってわけでも無いんだな。」
「おいおい、兄ちゃん!魔物と魔族は大きく違うぜ?確かに魔物と魔族はどちらも体内に魔石が有る存在なんだが、知性が無いのが魔物で、有るのが魔族な?魔族にな、この魔物風情がとか言っちゃったら、殺しあいになっちゃってもおかしくない、相手の魔族を侮蔑する侮蔑用語だからな?言葉遣いには気を付けた方がいいぜ?」
「じゃあフェンもお前さんも魔物ではなく魔族ってことになるのか?」
「そういう事だ、兄ちゃんも分かってきたな」
「へぇ、なるほど。勉強になった。ありがとう。」
「あぁ、やっぱりお前、この世界の人間じゃあ無いんだな。この世界のほとんどの人間は、そうやって素直に魔族に頭を下げる事なんかそうそう無いんだ。それにお前さんみたいな黒髪、黒目の人間も俺は初めて見たよ。」
「はぁ、世界が代わっても、そういう差別って無くならないんだねぇ。」
「まあな。お前の世界にも有ったのか?」
「あぁ、知性的な生き物は人間しかいない世界だったんたがな、人間同士でも人種に肌の色、髪の色、生まれや育ち、身分等々色々だ。」
「どこの世界も変わらねぇやな。」
「まあな。人間ってのは、いや、動物ってのはどうしても異物を拒絶し優劣上下順番を付けたがる生き物だからな。」
「そうだなぁ、めんどくさいな」
「あぁ、全くだ、なあ魔王君。」
「え?どうしてそれを?」
「あぁ、いやごめんごめん、【鑑定】にオークキングって出てたからな。で?そもそもなんでオークの王様が門番なんてやってんの?」
「ん?いやいやだってそもそも群れで一番強い奴が先頭に立って、守んなきゃ誰が群れを守るんだ?強い奴が敵として来た時に一番強いやつが対峙して時間潰しをしてる間に、群れが避難したり対応が色々と出来るだろ?それに門番が強かったら、中にいる幹部はどれだけ強いんだ?攻め込むのを止めようか?こんな奴がゴロゴロいるのかって躊躇うかもしれないだろ?」
「お、おう。威張って人をアゴで使うだけの、人間の王とは違うんだな。」
「あったり前よ、ヘヘヘ」
「ハハハ、こんな気さくな王様も初めて見たよ。おかわりは?」
パンピーな俺は
先祖をさかのぼっても
天皇陛下ご一家なんて
縁もゆかりも無いし
ましてや他の国の王室なんて
ニュースでしか見たことは無いし
直で見たのは誘拐バカ王くらいだし
「あぁ、いや、もう十分だ、旨かった。」
「おう、ご馳走様でした」
「ん?なんだその『ご馳走様でした』ってのは?」
「あぁ、食べた食材に対しての感謝と、作ってくれた人への感謝を表す挨拶みたいなもんだ。」
「へぇ、ご馳走様でした。で?どうするんだ、これから?」
「ん~そうだね~王都を潰したこの人間の国は、しばらくは荒れるだろうしな~ここから近い他の人間の国にでも寄ってみるかな?お前さんの所は、魔族の国だから、一応人間の形してる俺って、やっぱり居づらいだろう?」
「まあな。そしたら、こっからまっすぐ南に行くと人間の国が有るぜ?」
「あぁ、ありがとう。そちらにでも行って見るとするか」
「食糧とか欲しい物は、有るのか?」
「そこまでしてもらっても良いのか?」
「あぁ、人間の国の都を抑えて貰った礼と情報料だ。」
「情報の価値分かってるの?何気に凄いな、お前さんも」
「伊達に王はやってないよ。で、欲しい物はなんか有るのか?」
「あぁ、そうだな、とりあえず食糧と、スパイダーゴーレムの脚とか身体にするための、金属なんかが有れば良いかな」
「金属か?ん~でもなー金属は貴重だったりするからなぁ」
「別に精練前の鉱石でも、錆びてダメになった金属でも良いよ?」
「あ、そう言えば南の人間の国に行く途中に、廃坑になった鉱山が有るぞ?」
廃鉱なら納得行くまで
誰にも邪魔されずに
採掘出来そうだ
鑑定スキルも持ってるし
魔法で酸化還元も
自由自在だしな
「あぁ、それで十分だ。ありがとう。」
「いやいや、こちらこそだ」
スパイダーゴーレムに
モデルとした足高蜘蛛の
あちらの世界の
ネットでの異名から
【軍曹】と名付け、
また倒れた。
ベタだな。