03
つまらない。そういわれた勇者の顔は酷くゆがんでいた。なぜそのようなことを言われるのかが、勇者含めて疑問だった。
そんな勇者たちには目もくれず、魔王は口を開く。
「チェックメイト、だ」
「『魔王』について何かを知ろうといているお前たちは負けだ」
「死ぬか囚われるか、どちらかだ」
なぜ、そのようなことを言われるのか。自分は自分の職業なりに頑張ってここまでやってきたのだ。それを、否定されるような言葉を言われるのは悔しいだろう。昔から、『魔王』について知りたかった。誰も知らないのだから。職業が勇者と知った瞬間、『魔王』を知れるチャンスだと思った。その自分の探求心の原因にこのようなことを言われたのだ。色んな感情が混ざって、言葉に表せない。
「さぁ、選べ。死か生か」
か細くて綺麗な声をした魔王の言葉が今では重みになって立てそうもない。
死か生か。
どちらを選ぶとなったら生だろう。けど、今の勇者の状況ではどちらも選べない。さっき、魔王が言っていたようにチェックメイトだからだ。
「なぁ、魔王」
ふり絞って出した言葉。聞こえているかはわからないが、震えていて今にも泣きそうだ。
「お前は、何者なんだ…?」
そういうと、魔王は玉座から立ち上がり少し歩いて勇者の目の前に立った。近づいて近距離攻撃でもするのかと少し身構える。
「教えてほしいか?」
魔王は口の端を上げて、にやりと笑った。天使のような笑みではなく獲物を駆るような狂人のようだった。
勇者の返答を待たず、魔王はまた、口を開ける。
「言っておくが、この世界はお前たちが思っている綺麗で幻想的な世界じゃない。理不尽で私欲の塊、おまけにルールは絶対に曲げない主義だ。それでも、お前たちはこの世界を綺麗といえるか?」
スラスラと出てきた魔王の言葉は人間にとって耳を疑うような文章だった。この世界が理不尽? 私欲の塊? ルールは絶対に曲げない主義? 言っていることが分からなかったのだ、勇者たちには。
「この世界は神様が作った世界だ。神様が作った規則には絶対に逆らえない。しかも、罰付きだ。そんな我儘で幼稚で屁理屈なこの世界をお前たちは受け入れるか? 「綺麗」と片付けれるか? 傷つく者もいるのにいないと偽善者ぶるか? 否、お前たちはできない。何故なら、お前たちは馬鹿なほどにお人好しだからだ」
魔王の目は何かを見空いているようなそんな感じだった。勇者たちの全てを知っているような感じだった。
「さぁ、ここで質問です。『魔王』とは客観的に見て何者でしょーか?」
このとき、魔王は天使のように微笑んだ。その笑みは少し卑しく感じた。