判明、そして初仕事! ~その2~
「さて、ひとまずクリスタルの準備は出来たわ」
「反動もクリスタルを使うんですね」
「そうだね。スキルの時と同じようにしてから反動の条件を満たせばクリスタルに浮かび上がるよー」
「とりあえず、クリスタルに手をかざしてちょうだい」
「あー、はい」
『投擲』
ありとあらゆる物質を使用者の意図する場所へ確実に投げることが出来る。
ただし、使用者の手で握ることの出来る範囲の物質に限る。
改めて見るとオレのスキルって、本当に何の意味があるんだよ。
「改めて見ると本当に何の意味があるのかしらね。あんたのスキルって」
うるせぇな。
分かってるけど他人に言われるとすげぇ傷つく。
「いやー、さすがロイくんだねー。にゃははははっ!!」
「放っといてくださいよ!!」
「ロイ。私はそんなロイも好き」
「にゃははははっ!!にゃははははっ!!」
「だーー!!!もーーー!!!!」
「はいはい、静かに。じゃあ、ロイの反動調査始めるわよ」
「調査って何するんですか?」
「んー、そうね。色々な条件下でスキルを使うってくらいしか無いわね。私達は条件を色々試すからあなたはひたすらスキル使ってて」
「分かりました」
「ロイ。ティッシュいる?」
「にゃははははっ!!にゃははははっ!!」
泣くもんか・・・・。
~~~~~~~~
「んー、出ないわねー」
「そだねーあと何があるかなー」
「ロイ。何か飲む?」
「・・・・。」
オレの反動を調査するためにありとあらゆる条件下でスキルを使ってみた。
目を閉じたり投げる手を変えてみたり後ろ向きに投げてみたり・・。
ふざけてるとしか思えないことも試したけどオレに反動は現れず、フィナが丸めたティッシュをひたすらゴミ箱に投げ続けるという特殊プレイは夜まで続いた。
「あの、ちょっと休憩させてくださいよ」
「そうね。一休みしましょうか」
「ロイくん。ティッシュいっぱい使ったねー。にゃははははっ!!」
「ロイ。すごかった」
「スキルがだよね?!誤解を招く言い方しないで!」
「んー、考えられそうなことは大体試したわねー。ここまで出ないなんてなかなか特殊な反動をお持ちのようで」
「特殊な性癖をみたいな言い方しないでくださいよ!ったく・・」
考えられそうなことって言ってるけど、途中から明らかにふざけだしたよな。
躍りながらとか絶対違うし。
試したオレも悪いけどさ。
「困ったねー、にゃっ!」
精神的に疲れてどうでもよくなってきてたオレが何となく投げたティッシュをミアさんが弾き落とした瞬間、オレの意識は途切れた。
「まぁ何か見落としてるのがあるかもしれないからとりあえずロイくんは気にせずティッシュを投げ続ければいいんじゃないかな?にゃははははっ!!」
「・・・・ロイ?」
「フィナ? どうしたの?」
「ロイが変」
「んにゃ? ロイくーん? 寝た?」
「ったく、誰のためにやってると思っ・・・」
「うがぁあああああああ!!!」
「んにゃあー!?」
「ロイ?!」
「何よ!急に!?」
「がぁあああああ!!!」
「何か目がヤバいよ!?体も大きくなってるし!」
「これは・・・・!!」
「がぁあああああ!!!」
「んにゃあー!?こっち来たーーー!!!」
「マズいわ!!フィナ!!」
「えいっ」
「があっ!!がっ・・あぁ・・あ・・」
「気絶した? フィナちゃんありがとー。怖かったぁー・・」
「とりあえず反動は分かったわね。フィナ。こいつ縛っておいて」
「合点承知」
「さて、どうしたものかしら・・」
~~~~~~~~
「で、今に至ると」
何にも覚えてねぇな。
「怖かったよー」
「何かすいません。で、オレの反動は何だったんですか?」
「『狂戦士化』よ」
「それって・・・・」
「理性と記憶を失ってひたすら暴れまわる化け物になるかなりヤバイ部類の反動ね」
「なんすかそのいかにも悪人な反動・・」
ってか、そんな化け物を一瞬で仕留めたんだよな。
フィナが1番ヤバいんじゃねぇのか?
「ボク本でしか読んだこと無かったけど、本で読んでたよりすごかったよー」
「反動の一覧みたいな本があるんですか?」
「無いわよ、そんなの。大体、反動が分からないまま勇者を辞める人間もいるんだから一覧になんて出来るほど情報が無いの。ミアが言ってるのは絵本よ」
「絵本?」
「『勇者グレイの冒険』」
「あー、結構有名な絵本でしたっけ。1回だけ母さんに読んでもらったような・・」
「その絵本にグレイが化け物になって暴れるって場面があるのよ。昔は子供を叱ったりするときに『悪いことしたらグレイが来るぞ』なんて言ってたらしいわ。で、そのグレイの反動があんたと同じ『狂戦士化』なの。ちゃんと記録も残ってるわ」
「へー。他人でも同じ反動ってあるんですね」
「まぁ、あるにはあるわね。ただ、グレイはそれに見合うだけのスキルを持ってたわ。『万物切断』っていって彼の剣はあらゆるものを切り裂くことが出来たらしいわ」
なんて勇者っぽいスキルなんだ。
オレのとは大違いだな。
「だからあんたみたいなショボいスキルにこんな反動が出るなんて不思議というか不可解というか・・」
まぁそうだよな。
あらゆるものを切れるスキルと何でも狙ったところに投げられるスキルとじゃ性能が違い過ぎる。ましてやオレのは『手で握れるもの』って条件付きだしな。
「ロイくんの思春期は英雄クラスってことだねー。・・プッ、にゃははははっ!!」
「ミア・・やめな・・プフッ」
「ロイ。私が受け止めてあげる」
あーもう。台無しだわ。
ほんとこいつらどうしようもねぇ。
「ちなみにどうやったら発動するんすか?」
「あー、それね。確定ってわけじゃないけど、あんたが投げたティッシュをミアが叩き落としてから様子が変わったところを見ると『投げたものが遮られたら』ってとこかしら」
「つまり、オレが投げたものが狙ったところに届く前に何かに遮られたら暴れだすってことですか?」
「そんなとこね」
「反抗期みたいな条件だね。思春期スキルのロイくんにピッタリ!にゃははははっ!!」
この猫、どんだけバカにすんだ。
「まあ気を付けてれば大丈夫じゃないかしら?反抗期も放っておくのが1番だしね。プフッ」
「にゃははははっ!!お腹痛いにゃー!!」
もしまた反動が出たらなんとかしてこいつらを一発殴ってやろう。