判明、そして初仕事!
あれ?ここは・・事務所だよな。
オレ・・掃除してたんじゃなかったっけ?
何か後頭部がズキズキする。
「あら。気が付いた?」
「おはよー」
「ロイ。頭・・大丈夫?」
「ロゼさん?それにミアさんとフィナも・・」
何があったんだ? 事務所めちゃくちゃになってるし。
いや、それより大事なこと聞かないと。
「何でオレ縛られてんすか? しかもこれあっち系の縛り方ですよね?」
「縛るのはフィナにやってもらったわ」
「力作」
「フィナちゃんは器用だねー」
そういうことじゃねぇよ。
フィナもこういう知識は豊富なのな。
「いや、縛られてる理由を聞いてんすけど」
「覚えてないの?」
「事務所の掃除をしてたのは覚えてますけど」
「ありゃー、これはレアだねー」
「ロイ。珍勇者』
うわぁ、嬉しくねえ。
「あんた事務所で暴れたのよ。大人しくさせるためにフィナにちょいちょいっと気絶させてもらったの」
「は? 暴れた? 気絶?」
「ぶいっ」
ぶいっじゃねぇよ。
可愛いな。ちきしょーめ。
暴れてる男を気絶させたって事実がなけりゃもっと可愛いのに。
しかも多分武力行使でだよな。
フィナさん、お強いんですね。
「いやー、すごかったねー。モンスターもビックリな暴れっぷりだったよ」
「ロイ。ワイルド」
「しかし、困ったものねぇ・・」
話が見えねぇな。昼間何があったっけ?
~~~~~~~~
「結構な頻度で掃除してるはずなのに全然片付かないっすね。この事務所」
「意外に物多いしねー」
「人も増えたから仕方ないわねー」
いや、ほとんどあんたらのせいだよ。
少しは片付けるってことしろよ。
しかも社長だからって手伝わねぇし。
こいつ部下に嫌われるタイプだ。
「ボクは掃除好きだからいいんだけどねー」
「私はロイとなら何でも好き」
こいつ、掃除するためにわざと散らかしてるんじゃねぇだろうな。
フィナはさりげなく恥ずかしいこと言わないで。
「そーいや、気になってたんすけど、ミアさんのしっぽとか耳って変身魔法ですか?」
「ん?違うよー。自前だよー」
「自前?」
「あら?言ってなかった?ミアは『獣人種』よ」
「『獣人種』?」
「まぁ、魔獣と人間のハーフみたいな感じかなー。魔獣みたいに人を襲ったりはしないけど」
「へぇー。オレ、獣人って初めてですよ」
「ミアは『森猫』っていう猫型の獣人よ。獣人の中でも特に素早いからこの街で配達なんかの仕事をしてる子が多いわ」
「へぇー。この街って結構獣人とかいるんですか?」
「いるよー。獣人以外だと竜人とか魔人が多いかなー」
どっちもヤバそうな感じしかしねぇな。
「まぁ基本は友好的だし、人間より知性が高いから争い事も起こさないわね」
「うまく共存してるんですね」
「ミアの耳。可愛い」
「んにゃあー!フィナちゃん!触るのは無しー!」
「ちなみにミアみたいに勇者になってる子もいるわよ。この子達は元々の能力がスキルに反映されやすいから凄まじいスキルになったりすることもあるわ」
「ミアさんは『速駆』ですよね。素早い種族だからそういうスキルになったってことか・・」
「そうだねー。ボクより速い人には今のところ会ったことないかなー」
「そんなに速いんですか?」
「ここからリーゼルなら1、2時間で行けるんじゃないかしら」
「えぇ!!オレ山道抜けたりで半日はかかりましたよ?!」
「普通に走るのもだけど、森とかだともっと速くなるよー。元々住んでたしねー」
すげぇ人もいたもんだな。
「それだけすごいなら反動もすごいんじゃないですか?」
「んー、どうかな? ボクは反動が何か確める時の一回しか経験してないからそんなに不便だって思ったことはないかなー」
「どんな感じなんですか?」
「『退化』っていうんだー」
うわぁ。想像しやすいなー・・。
「ミアの『退化』はそのままの意味ね。猫娘が猫になるの。なかなか可愛いわよ」
「にゃはっ!照れるなぁ」
照れるとこなのか?
「ちなみにどうなったら発動するんですか?」
「んとね、『人でも物でも自分以外を速いと思ったら』だよー」
何かフィナよりフワフワした条件だな。
「それって仮にそうなっても思わなきゃ発動しないんじゃないですか?」
「まぁ極論を言っちゃえばそうなんだけど、なかなか難しいわよ?あんたも街で何かがもの凄いスピードで目の前を横切ったら『速い』って認識するでしょ?」
「まぁそうですね」
「ミアはフィナと違ってスキルに関係なく反動が発動するから日常生活でもそれなりに気を使わないとダメなのよ」
つまり『速駆』を使ってても使ってなくても自分以外を速いって思ったらアウトってことか。
結構厳しいな。
「大変なんですね。ロゼさんのは?」
「私のは『運気下降』よ。『人選』を使った相手の情報を間違って伝達すると発動して、ありとあらゆる不幸に襲われるわ」
結構なリスクだな。
ありとあらゆる不幸ってことは最悪死ぬこともあるだろうし。
ふざけてるようで実はちゃんと覚悟を持って仕事してたんだな。
「ちなみに不幸に襲われるのは相手だけどね」
「はっ?」
「『運気下降』が発動するのは『人選』を使われた相手よ」
「ってことは、ロゼリアさんがこっそり『人選』を使って情報を盗んで、あることないこと広めても『運気下降』が発動するのは盗まれた人ってことですか?」
「例えが気になるけど、まぁそういうことね」
最悪だ!
この人、スキルも反動も最悪だ!!
能力じゃなくて性格が反映されまくってんじゃねぇか!!
使い方次第じゃただの極悪人じゃねぇか!!
ってかオレもやべぇ!!
思いっ切り対象に入ってるし!!
「つまり、あんたの運命は私の手の中ってことよ」
「ヒィイッ!!」
あー、終わったー。
こんな会社来るんじゃなかったー。
「冗談よ。そもそも紙に書かないと発動しないし、書き方も色々指定があるから反動を発動させる方が面倒なのよ」
冗談に聞こえねぇ。
この人ならためらわずにやりそうだ。
今度からもう少し媚売っておこう。
「ロゼにとっては『運気下降』ってより『気が滅入る』だね。いろんな情報を知ってる相手が不幸な目に遭ってたら嫌な気持ちになるだろうしねー」
「そうね。なかなかツラい反動だわ」
絶対思ってないな。この人。
「そーいや、ロイくんの反動はなんだろね」
「あー、まだ分かってませんね。発動条件もどんな反動なのかも」
「気になる」
「確かに。今後仕事をするのにお互いの能力を知らないのは厄介だしね。良い機会だから調べましょうか」
「そーだねー。ロイくんの思春期全開スキルの反動はなにかなー。にゃはっ!」
「『賢者タイム』とかじゃない?」
「にゃははははっ!!それいいね!にゃははははっ!!にゃははははっ!!」
こいつら・・絶対泣かす。
「ロイ。その時は私が」
「いや、いらないから」