先輩、そして誘惑!
「ミアさん」
「んー? どしたのー?」
「ちょっと気になったんすけど、昨日の勇者登録ってクリスタルに認められないと登録できないんですよね?」
「そーなるねー」
「オレが登録できなかったらどうするつもりだったんですか?」
「あー、それはないよー」
「どうしてですか?」
「クリスタルに認められる条件はね『自らが勇敢であると自覚している』だからだよー」
「それって・・・・」
「ここの採用条件だね。にゃはっ」
つまり面接を受けた時点で勇者にされるのは確定してたってわけか。
くそっ!やっぱりあの女嫌いだ!
「けど、それなりに強い意思じゃなきゃダメだから誰でもって訳じゃないんだよ。だからロイくんには勇者になる素質があったってこと。スキルは思春期全開だけどねー。にゃははははっ!!」
「だーーー!!言わないでーーー!!」
「にゃははははっ!!にゃははははっ!!」
このにゃは女・・絶対泣かす。
「戻ったわよ。お酒が高くなってきてて嫌になるわね」
「昨日呑み過ぎるなって言ったのになんでそんなに酒買ってきてんすか?」
「これは・・料理酒よ!!」
料理酒だとしてもあんたなら呑むだろ。
「それはそうと、フィナちゃん帰って来ないねー」
「そうね。辞められたら困るしそろそろ探しに行こうかしら」
「フィナ?」
「あー、言ってなかったわね。ミアの後輩であんたの先輩よ。少しだけどね」
「へー。こんなとこ就職する人いるんですね。それとも、その人も脅したんですか?」
「人聞きの悪いこと言わないで!フィナにはしてないわよ!」
今こいつ、フィナにはって言ったか?
ってことは他の奴にはやってんだな。
「フィナちゃんはここで働くために自分から来たんだよー」
「あの子、超が付くほどマジメだから依頼も完璧にこなすし、貴重な人材だから辞めたりなんかしたら大変だわ」
「それだけマジメならそんな急に辞めたりなんかしないんじゃ・・何だ?」
ドアがガタガタいってる。
誰か開けようとしてるのか?
あのドア外からだと固いからなー。
「はいはい、いま開けますからあぁあ!!!」
どんだけ勢いよく開けたんだよ。
閉まらなくなってんじゃねぇか。
「いってぇ・・あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫」
うわぁ・・人形みたいな人だ。
綺麗な瞳の色してるし、胸でけぇな。
ってか、すげぇこっち見てくるんですけど。
顔近ぇし。
「あの・・そろそろどいてもらっても・・」
「ごめんなさい」
やれやれ。
お客か?こんなところに来るなんて変わってるな。
似たような会社があるなら是非そっちをオススメしないと。
「あー!フィナちゃんだー!」
「やっと帰ってきたわね」
「ただいま」
おー。再会タイム始まった。
こういう時だけはキャッキャッしてて普通の女の子っぽいなー。
そのギャップすげぇ腹立つけど。
「ミア、この人だれ?」
「あー、新人くんだよ!思春期全開ロイくん!」
「なんつうあだ名付けてんすか!!」
「あら、似合ってると思うわよ?」
よし。今日のこいつらの飯は超激辛メニューにしてやろう。
泣いて謝るまで口に詰め込んでやる。
「フィナよ。よろしく。ロイ」
「あっ。よろしくお願いします」
何か他の二人と違って普通だな。
いかにもマジメって雰囲気だし。
何でこんなクソみたいな会社で働いてんだろ。
「それで、何でこんなに遅くなったの?」
「たしかフィナちゃんの行った依頼って庭の草刈りだったよね?2日間じゃなかったっけ?」
草刈りて。
勇者じゃなくて業者じゃねぇか。
やっぱりこの会社ダメだわ。
「追加で頼まれたから泊まり込みでやってた」
「へー。ずいぶん追加されたんだねー」
「ちなみにいつから行ってたんですか?」
「先月の今くらいだから、今日でちょうど1ヶ月ってとこね」
ただの草刈りで1ヶ月!?
しかも元は2日間の依頼だろ?!
どんだけ刈ってんだよ!!
ってかどんだけ広かったんだよ!!
「だから一杯お金もらった」
「通帳?・・・・んなっ!!」
いやいやいや!!
草刈りでもらう金額じゃねぇだろ!!
0が並び過ぎて目がおかしくなるわっ!!
草刈りでどんだけ稼ぐんだよっ!!
「あわわわわっ」
「にゃ、にゃはぁははぁ」
うわぁ。うちのポンコツ社長様テンパってるよ。
儲けようとしてたくせに、いざ儲けたらこれですよ。
もう社長やめちまえよ。
にゃは女に至ってはキャラ崩壊してるし。
そのキャラ作ってたんなら早急にやめてくれよ。
時々本気でムカつくんだよ。
「とりあえずみんなでお祝い」
「そーね!今日は呑むわよ!」
「ボクも呑んじゃおー!!」
お祝いて。
どんだけ収入無かったんだ。
しっかりしろよ。
~~~~~~~~
「寝ちゃいましたね」
「そうね」
こいつら騒ぐだけ騒いで寝やがって。
こんな生活してたからあんなに散らかし放題だったんだな。
小一時間くらい説教してやりてぇ。
「ゴミ」
「あ、いいですよ。オレが捨てるんで。よっ、と」
こんなことで使えるスキルって便利だけど泣きたくなってくるな。
「ロイ、すごい」
「あー、オレのスキルなんですよ。『投擲』っていって、手で握れるものなら何でも狙ったところに投げれるんです」
「便利」
「カッコ悪いですけどね。フィナさんはどんなスキルなんですか?」
「見る?」
「見せてくれるなら是非」
「分かった」
人のスキル見るのってちょっとワクワクするな。
どんなスキルなんだろ。
上着脱いでるけど、体使う系なのかな?
ガッツリ脱ぐな・・・・って!
「何脱いでんすか!!」
「スキル使うのに服は邪魔なの」
「だからって脱ぎすぎですって!下着じゃないすか!!」
「これでいいの」
え?
何でそんな顔してこっち来るんすか?
ちょっとちょっと。
そんな覆い被さられたら動けないんすけど!
んで、顔近いから!
ここの女は距離感って知らねえのか!!
「フィナさん!!マズいですって!!」
「これが私のスキル」
「いや、分かりましたから・・どこ触って・・・・ちょっ・・だからっ」
何だよこの展開!!
急過ぎだっての!!
心の準備くらいさせてくれよ!!
ロイくん初の大仕事かもしんねぇんだからさ!
もう少しコンディション整えさせてあげてよ!!
「おっ。やってるねー」
「フィナちゃんのはいつ見てもエロエロだねー」
起きてんのかーい!ビックリだよ!!
うちのロイくんシャイなんだからそんなに見られたら隠れちゃうって!!
ってか、何を呑気に観戦モード入ってんだこいつら!
ニヤニヤしやがって!助けろよ!!
ビンタすんぞこら!
「ちょっ!なんすかこれ!?」
「フィナのスキルは『誘惑』っていってね。まぁ簡単に言えばエロいことして相手をダメにするスキルよ」
「ちなみに、フィナちゃんはマジメだけど超どスケベだから満足するまでスキルの発動止めないよ。ロイくん頑張ってね」
「いや、あんたらが止めろよ!!」
「ハァハァ・・ロイ・・」
「ロイ。男になりなさい」
「何でまた寝ようとしてんすか!!ちょっと!!ロゼさん!!ミアさん!!」
この会社ほんとにロクな奴いねぇ!!