面接、そして採用!
何だろう。
何なんだろうここ。
会社・・だよな?
すげぇ怪しげな建物なんですけど。
ってか、周りにあるの完全に廃墟だよな。
モンスターにでも襲われたの?
復讐のために仲間探してる的な?
さすがにそれはないか。
「・・帰ろうかな」
いや!ダメだ!
雰囲気はちょっとあれだけど、こんな条件の会社2度と見つからない気がする!
意外と中は綺麗かもしれないし!
「よし!行くぞ!」
~~~~~~~~
『ーー派ーー社 ブレイブロード』
ここ・・だな。張り紙に書いてあった場所。
ブレイブロード? 聞いたことないな。
前の方が削れてて読みにくい・・。
「多分、派遣会社って書いてるよな・・」
派遣か・・。
いや、贅沢は言わないでおこう。
決まりさえすれば寝床と飯の問題が一気に解決する。
決まりさえすれば・・だけど。
こんな怪しげな会社すら不採用になったら田舎に帰りたくなるだろうな。
帰る家無いけど。
「しっ失礼します!!」
誰もいない?
ってか、このドア固すぎんだろ。
曲がってる。絶対どっか曲がってる。
「あのぉ!求人の広告を見て来たんですけどー!」
返事無しか。
もう潰れてる会社なのかな。
そうだよな。
見た目も廃墟みたいだし中もこんなだし。
よく考えたら広告もいつ張ったのか分かんねぇくらいボロボロだったし。
「はぁ・・帰るか」
街に帰ったら飯食って宿探そう。
だいぶ暗くなってるけど泊まれるとこあるかな。
無ければ野宿だな。節約にもなるし。
「あー・・・・」
声? いまの声だよな?
人か? それともあっち系?
いかにもな雰囲気過ぎて逆に気にならなかったけど、もしかして出る感じすか?
別に怖くないけど。
人間の方がよっぽど怖ぇっての。
就職活動してよく分かったよ。
同じ種族を見る目じゃねぇし。
モンスターの方がもう少し友好的だっつうの。
まぁ、それは置いといて、とりあえず声のした方調べるか。
「こっちからしたよな。誰かいますかー?」
ソファーか?
気付かなかった。
布団もある・・というか足出てるし!
人いんじゃねぇか!起きろよ!!面接かどうかも分かんねぇんだからまずは客扱いしろよ!!
「あのー、すいませ・・くっさ!!」
何だこれ!?
酒?酒だよな!?てことは、こいつ酔っ払いだ!
そーいや、親父も酔いつぶれた時にこんな臭いさせてたな。
くそっ!思い出しただけでムカついてきた。
「あー、頭痛い。ミアー・・みずぅー・・」
誰かと間違えてんのか?
とりあえず水が欲しいみたいだな。
無視も出来ねぇしなぁ・・。
水道とコップ探さねぇと。
「これか」
食器はあるんだな。結構綺麗にしてあるし。
よく見たら・・キッチンか? 部屋のわりにこの辺だけやけに片付いてるな。
「はい。水ですよ」
「ありがとー・・・・」
女の人か。
ボサボサだけど綺麗な色の髪だな。
スタイルも良い・・・・って下着!?
「あっあの!服!服!!」
「えー・・別にいつものことじゃ・・・・」
あ・・目が合った。
うわっめちゃめちゃ美人なんですけど。
こんな人の下着姿見れるとか・・。
ごちそうさまです!もうお腹一杯です!
「あんた誰?」
ですよね。ごもっとも。
叫ばれないだけありがたいです。
それだけで感謝の気持ちで一杯です。
だからそんな冷たい目で見ないでください。
「たっだいまー!んにゃ?誰か来てるの?」
あー、終わった。
本人に叫ばれず友達に叫ばれるパターンですよ。
両親消えて実家吹き飛んで挙げ句の果てに犯罪者かー。
ベリーハードモード突入だな。
「誰か知らないけど、まぁ・・とりあえず座りなよ」
「えっ? あぁ。どうも」
おお。冷静な人だ。
とりあえず叫ばれるのは回避したかな。
これなら落ちてもハードモードで継続出来そうだ。
~~~~~~~~
「で、改めて聞くけど。あんた誰?」
取り調べ?尋問?
少なくとも面接って感じじゃねぇな。
そんな雰囲気微塵も感じれないし。
それよりこの人、昼間の面接官よりはるかに冷たい目で見てくるんですけど。
初めまして。あなたと同じ人間です。
とりあえずその目をやめてくれませんか?
あと、ちゃんと服を着てください。
「にゃはっ。ロゼー。そんな怖い顔で睨んだら少年逃げちゃうよー?とりあえずメガネかけなよ。あと、何か着ないと少年が目のやり場に困ってるからさー」
おお!的確な指摘ありがとう!
話の分かりそうな人だ。
人・・だよな?シッポあるけど。
何か耳も獣っぽいし。
そういう趣味か?
確か、姿を変えられる魔法ってあったな。
「あー、ごめんごめん。目悪くてさ。メガネないと全く見えないのよ。ミアー。テキトーにシャツでも取ってー」
「はーい」
あー、それであんな感じだったのか。
そかそか・・じゃねぇよ!
そこまで悪いなら手放すなよ!!
あんたの都合でこっちはトラウマ級の視線浴びせられてたんだぞ!?
「で、あんた誰? あれ? さっきも聞いたわよね。まっ、いっか。とりあえず名前と目的」
完全にこの人のペースだな。
もうなるようになれだ。
この人からペースを奪い返せる気がしない。
「名前はロイです。求人の張り紙見て面接を受けに来ました」
「今、なんて?」
あれ?オレなんか変なこと言った?
固まってるんですけど。
「えっと、名前は・・」
「そこはいいからっ!その後!!」
えー。最初に聞いたのそっちじゃん。
そこはいいからって、オレの名前はもう用済みってことですか。
一応それなりに気に入ってんだけどなぁ。
「求人の張り紙を見て面接を受けに・・・・」
「ミア!!確保ー!!!」
「ほいきたー!!!」
「いや、ちょっ、えー!!!!」
~~~~~~~~
「で、名前と年齢は?」
「ロイ。18です」
「若いわね。よしよし。生まれは?」
「リーゼルです」
「あー、いいところだねー。にゃはっ!」
「世間知らず・・っと。最高ね」
オレ、面接に来たはずだよな?
何でイスに縛りつけられて質問攻めにされてるんだろ。
しかも、この人。すげぇ気になる独り言いうし。
後ろの人にゃはにゃはうるせーし。
何だよここ。
「んで、何でうち受けようと思ったの?」
「家無いんですよ。金も。そしたら広告に寮と3食付きって書いてあったんで・・」
「なるほどなるほど。素直でよろしい。じゃあ最後の質問ね。うちの求人広告見たんなら採用条件知ってるわよね?」
「えっ?あー、はい。一応見たので・・」
「それじゃあ早いわね。あなたは『勇敢』かしら?」
急に雰囲気変わったな。何か試されてるような・・。
にしても何だ? この質問。
バカにしてんのか?
どんな思いしてここまで来たと思ってんだよ!
そんなもん決まってんだろ!!
「『勇敢』ですよ!だから来たんです!」
「あなた、最高!決まりね。採用よ!」
「にゃはっ♪新人くんだねー」
「え?もう決まりですか?」
いやいや。
もっとこう・・色々あるんじゃねぇの?
偉い感じの人達で集まってどいつがよかったとか話し合ったりさ。
2人しかいないのは分かってるけど、だとしても早すぎんだろ!
もうちょい悩めよ!逆に不安になるわ!
「もうちょっと何かないんですか?選考とか」
「無いわよ?うちの条件は『勇敢』か。それだけよ」
「あんなにはっきり答えたの新人くんが初めてだよー。すごいねー」
「あなたには期待出来そうね。よろしく」
「はあ・・」
「自己紹介がまだだったわね。私はロゼリア。ロゼでいいわ」
「ボクはミアだよー。よろしくー。」
「とりあえず、今日からここに住んでもらって明日早速仕事してもらうわね」
「はあ・・・・」
何かトントン拍子で決まってったな。
ホントに大丈夫か。ここ。
けど、寝床が確保できたのはデカイ。
春とはいえ夜は寒いからな。さすがに野宿はキツいし。
両親が消えてからバタバタしてたけど、ようやく落ち着けそうだ。
「それで、オレはどこで寝れば?」
「ん?テキトーに片付けて場所作っといて。布団もその辺にあるわ。さて、シャワー浴びてこよっと」
「ボクはご飯作るねー」
どこ片付けるんだよ。
オレの寝るとこ無いじゃねえか。