大魔導師、そして魔法! ~その2~
「で、今日はどうされたんです?」
「やれやれ・・唐突に本題に入るんじゃな・・。もう少し心配してもバチは当たらんぞ」
こんのじじい! 嘘泣きしてやがった!
「どうせ嘘泣きじゃないですか・・全く・・。構ってほしいだけなら帰ってもらえます? こう見えてそれなりに忙しいんです」
「そうカリカリするでない。せっかくの美人が台無しじゃぞ。今日は依頼があってきたのじゃ。きちんと報酬も払う。そうじゃな・・前金でコレでどうじゃ? 」
そう言ってじいさんが取り出した袋には溢れんばかりの金貨。
「うおっ?! すげぇ!!」
「キラキラしてるにゃー・・」
「大金」
「あわわわわっ・・お金が・・お金がぁ・・」
「リオ!落ち着け!」
「キーラキラッ♪ キーラキラッ♪」
くそっ!! 金貨の迫力に負けてアホ猫が壊れちまった!!
このままじゃまずい・・ってか、なにその踊り・・じゃなくて、せめてリオだけでも・・!!
「キーラキラッ♪ キーラキラッ♪」
「リオーーー!!」
手遅れだー!!
アホ猫と踊りだしちまった!!
何故か一瞬でシンクロしたあの踊りがめちゃめちゃ気になるけど、今はフィナを連れてこの場を離れないと・・!!
「フィナ!! ここは危険だ!! 一旦街に・・」
「ロイとデート、ロイとお泊まり、ロイと結婚、 ロイとデート、ロイとお泊まり、ロイと結婚・・」
何か呪文唱えてるー!!!
何あれ怖いっ!! すごく怖いんですけど!!
「まずい・・このままじゃ全滅しちまう・・。社長!! 一旦逃げましょう!!」
「落ち着きなさいロイ。 あなたは一つ大事なことを忘れてるわ」
「大事な・・こと・・?」
そうか・・。
オレも金に目が眩んで取り乱してたのか・・。
それなのに社長はしっかりと現実を見据えて冷静に対応してる・・。
さすが・・社長だな・・。
「こんな金ヅル逃がす訳にはいかないわっ!! ありとあらゆるもてなしでじじいを満足させるのよ!!」
ですよねー。分かってたよ。
ここにいる誰よりもお金好きですもんねー。
「・・こやつら大丈夫かのぉ・・。これ、ロゼ。依頼の話をしてもよいかの? 」
「もっちろんですよ! ささっ!お掛けになって! ロイ! お茶とお茶菓子! あと、肩揉んで世間話にでも付き合えばイチコロよ!!」
「スキルを使うまでもないのぉ・・。ロゼ・・本音と建前はもう少し上手く分けてもらえんかの? さすがにショックじゃ・・」
「あらあら。 ショックだなんて。 ダメですよ? 気分が滅入ると長生き出来ませんし。 うちの若い娘達に慰めさせましょうね。 みんな!出番よ!」
「はーい!にゃはっ!」
「準備万端」
「よろしくお願いしますです!」
店変わってんじゃねぇか。
ってか、着替えてるし・・。
切り替え早ぇのな。
「うむ。悪くない光景じゃが、今日は遠慮しておこうかのぉ。そろそろ真面目に話をさせてもらえんか? 」
「そうですか? それなら・・みんな! おもてなしシフト終了! いつも通りでいいわよ!」
何そのシフト!?
初耳なんですけど!
「うちはお金さえ払ってもらえるならいくらでも真面目にさせていただきますよ」
「うむ。まぁ商売人としては良い心掛けかもしれんの・・。さて、依頼じゃがの・・弟子を探してほしいのじゃ」
「人探し・・ですか?」
「あぁ、すまん。言葉が足りんかったの。ワシの弟子になれそうな人間を探してほしいのじゃ」
「弟子候補を探すってこと? 自分で探した方がいいんじゃないのかにゃ?」
「これでも散々探し回ったんじゃがの・・ワシ一人では見つけられんかったのじゃ」
「お弟子さんってそんなに見つからないものなんですか?」
「大魔導師の弟子だからな・・。憧れはしても近付くとなるとなかなか難しいんじゃないか?」
「圧倒される」
「まぁ、そうね・・。で、具体的な人物像はあるんですか? 」
「『純粋』であることかの」
「なんだそれ?」
「魔法はの、精霊を従えることで使うことが出来るのじゃ。 それには精霊と絆を深める必要があるのじゃが、彼らは純粋な人間しか好まんのじゃよ。少しでも邪念を感じ取られると二度とそやつの前に姿を現さんこともあるからのぉ」
「なるほど・・。この街でそんな人間を探すとなるとこの前金の額にも納得出来ますね」
「お手並み拝見じゃ。 ふぉっふぉ」
「全く・・この街でそんな人間見つけるのがどれだけ難しいか分かっててこんな依頼を・・。報酬の上乗せしてもらいますからね!」
「うむ。構わん。では、頼んだぞ」
「分かりました。ブレイブロードにお任せください! さっ、みんな!行くわよ!」
「おっけぇー!」
「出発」
「久々の大きな依頼、ワクワクします!」
なーんか・・すっげぇやる気になってるけど・・こんなクソみたいな街で純粋な人間探すなんて無理だと思うんですけど・・。