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5話:ケモノの食事

頼りになるけど頼り過ぎない様にしようと心に戒めながらも俺はファンの頭を撫でる。

フワフワしていて気持ちいい感触がなんだか癖になりそうな時だった。


くぅ~


うん。そういえばと今更ながら空腹だった事を思い出した。死闘を演じたりと緊張が続いていたけど、一先ずの安全を確保できたことに安堵した事で緊張感がなくなったので思い出したみたいだ。

俺は撫でるのをいったん止める。

なんだか『もっと~』と告げてくるファンだが、先にこの空腹感をどうにかしたかった。

俺は「また後でな」とポンポンと撫でた後、目の先にある獲物に向ける。

俺の目の先にあるもの。

先に俺が倒したトラモドキの死骸である。


「……どうやって喰えばいいだろうか?…流石に動物の皮を剥いだり捌いたりとかした事もやり方も知らないしなぁ……まあ、喰えばいいか」


俺は、死んでいるトラモドキのとりあえず柔らかそうな腕の部分を手に取ると、あーんと齧り付いた。ググッと噛み引き千切る様に何とか肉を引き千切ると咀嚼していく。

咀嚼すると先ず感じたのは生の肉を生臭さ、そして嘔吐感だった。


「…んぅ!?」


俺は手で口元を抑えながら吐きそうになるのを堪え呑み込んでいく。

そして涙目になりつつなんとか肉を呑み込んだ。

呑み込んだ後、俺に待っていたのは、なんと美味いだった。

生肉特有の生臭さは確かにあるのだが、飲み込んだ瞬間、まるで上質なステーキでも食したかのような美味さが口一杯に広がっていた。

俺はそのあと、夢中に肉を喰らい付いていった。

口に入れれば吐きそうにはなるけど呑み込みさえすればとにかく美味い。

そんな矛盾を感じながらどんどんと喰い付いては呑み込んでいく。

腕を足を尻尾をと食い千切って咀嚼していく。

食す度になんだか俺の歯や胃が丈夫になって慣れて来たのか徐々に生臭さも気にしなくなっていた。

あと、どうやら魔物はHP(体力)が無くなってもしばらくは生命機能が残っているみたいだった。

俺は自身の名の通り『獣』の如く喰い付いていく。口の周りは生暖かい血に染まってる。

うん。たぶん今の俺の姿を一般人が見たらドン引きになるだろうな。まあ今の俺には関係ないからどうでも良いがな。

そうして食していると、なんだか別の空腹音が聞こえてきた。


「ウグっと、ん?どうした?お前もう喰たいのか?」

『…ぐ、ぐるる』

「ん?何だ、いっちょ前に恥ずかしいのか?フフっ、良いぞ、お前も食っていいぜ。どうせ俺一人じゃ食いきれそうもないからな」


空腹音を聞かれ恥ずかしそうにしつつ食べたいなあと目を向けてくるファンを揶揄いつつ食すのを許可する。

俺の許可が出た瞬間目を輝かせるようにファンも御相伴に与っていく。

美味しそうに腸を喰い出していくファン。

俺も腹を満たし満足するまでファンと共に喰い続けた。


その様子は獲物に喰い付く2匹の仲の良いケモノの姿の様であった。


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