32話:商人父からのお願い
ヨルムの服を見繕った後。
いつもならここで代金を払ってこの商人親子と別れるのだが、なにやら俺達に”お願い”があるそうだ。
「はぁ、俺達にお願いだと?」
「はい。皆さんの実力を見込んで一つお願いをしたいのです、はい」
「実力ねぇ…」
実力、つまりは俺達の戦闘の能力が高いから頼んできたらしい。
しかし戦闘に関したお願いごとか。
一先ずその”お願い”とやらを確認してみるか。
そのお願い事とやらが気に入らなければ拒否して受けなければいいだけだ。
「それでお願いってのはどんなのだ?実力って事は荒事の頼みだろ?なんだ、暴れる盗賊の類の討伐か?それとも魔物狩りか?」
「そうですね。皆さんへのお願い事なのですが、内容を言いましたら後者が近いのではと、はい」
魔物に関する依頼か。
≪魔獣≫だったら俺の力の糧兼食料として確保がしやすい。
「魔物討伐の依頼てことでいいのか?こちらとしては不満は特にないぜ。まあ討伐対象が”魔獣”ならなお良しだけどな」
「ああ、実はなのですが、魔物の討伐も含まれるのですが、皆さんにお願いしたい依頼は”ある者達の護衛”なのです」
「……はぁ?護衛?……興醒めだ。今のは聞かなかった話にしておこう」
「え!?な、なぜです?」
最初は乗り気だったのに『護衛』と聞いた瞬間にやる気をなくした俺に商人父は困惑している。
俺は、俺の為にしか動かないし戦わない。
他者の為に行動は絶対しない。
だから『護衛』なんてもっての外だ。
だって護衛なんて、相手の、つまりは依頼者達の意見を聞かないといけないのだろ?
あれこれ命令されるのは俺の性に合わない。
しかも相手を護ろうが優先させるのが大前提なんだろ?
そんな相手を気にしながら戦いなんざ、出来なくもないが面倒極まりない。
商人父にそう理由として伝え断ろうとした。
しかし――護衛対象がどんな奴らかを知った瞬間、そしてそいつらがどこに赴きどの様な対象に挑もうとしているのかを知ったら断る気が受ける気に大きく寄った。
それは護衛対象と言うのが『異世界から召喚された者達』だと。
そして強大な力を持つと言う『空の王』と称される魔獣に該当する魔鳥が相手だった。




