29話:今の俺のStatus―そして…
夜の時間帯。
ファン、キキ、ヨルムの”人化”した姿。即ち人間化した状態での初めての顔合わせを終えたあと。
俺は、『くーくー』と見る者は恐ろしいはずだが俺にしてみれば可愛らしく寝息を立てている牙虎魔獣の姿のファンを背に温かさを感じつつ預けながらスマホを取り出すと電源を入れる。そして所有者のStatusを表示させる【祝福の標識】を押して起動させる。
スマホの画面に俺の今のStatus状況が映し出されそれに目を向ける。
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Name:超陀ケモノ
Atk:280
Dfs:250
Spd:300
Mp:120
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最初(勿論『無能』であった時でなく『俺』として覚醒てから)に比べて、
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Atk:90
Dfs:80
Spd:90
Mp:70
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と殆どが200近く向上している。
それはこれまでのファンやキキとの訓練や魔物、盗賊なんかに身を落とした人間達との戦闘経験値を得た事もあるが、俺の持つ【魔獣】を喰らう事で得られる能力向上効果が利いているのもある。
魔獣を喰う事で能力が上がる。
これは俺に与えられた特殊な力だ。
ただ喰う魔獣の種類によって能力の向上効果に差が出るようだった。
喰う種類が戦闘タイプであれば戦闘Statusである”力”や”速さ”が上がる。魔法タイプであれば”魔法力”が向上すると言った具合だ。
現在拠点にしているクズ王国から南下した場所にある山脈地域で捕獲出来る魔獣は魔法を扱うタイプは少なくキキの様な魔法や能力メインの魔獣には中々出会うこともなくあまり喰せていない。
だからと言うのもあり、また俺自身も魔法適性があまりないのかMPはそこそこの数値しか上昇していない。
今は武系の戦闘技術を得るのを重視しているので魔法系は後回しにしている。
次にAbilityだが、これに関しては変化はない。
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【Ability】
♢魔獣の王・Level:EX
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”魔獣の王”のみで、この力は既に最初からLevelがEXだったのでこれ以上変化しないと思っている。
そしてAbilityの下のSkill欄に目を向ける。
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♢魔獣契約・Level:Ⅰ(自身に触れし【魔獣】に該当する魔物を3体まで自分の眷属化させることが出来る。…現在3体と契約中。)
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”魔獣契約”。”魔獣の王”の力の一つで、【魔獣】カテゴリーの魔物を自分の眷属として契約させ使役できるというものだ。
Levelに変化は今現在も見られず『Ⅰ』のままだ。
この”魔獣契約”で契約できる魔獣は3体で、既にファン、キキ、ヨルムと契約状態で満了となっている。
出来ればもっと契約ストック数を増やしたいと考えているが、どうすればLevelを上げられるのか、何か条件があるのか現状わからない。
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♢魔獣調教・Level:Ⅱ(契約した眷属の魔獣の能力を一時的に上昇させることが出来る。Levelが上昇するほど効果が上がる。)
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”魔獣調教”。”魔獣の王”の力の一つで、契約し眷属化している魔獣の能力値を上昇させる事ができる力だ。
Levelは一つ上がり『Ⅰ』から『Ⅱ』になっている。
まあこの力も普段は殆ど使う機会は少ないな。
ファン達眷属の基本能力値が高いのもあるので使う必要がほとんど見られない。
それにファン達眷属には”主への忠誠”と言うSkillがあるので俺に敵対する相手に対して能力向上効果を持っているので、能力『100』とすると、”主への忠誠”の上昇効果でだいたい倍の『200』くらいになる。そして俺の”魔獣調教”を上乗せしたらその倍で『400』近い数値に上がるだろう。
(正直この”主への忠誠”と”魔獣調教”の上乗せ状態のファン達にはまだ勝てる気がしねえな…)
通常の状態ですら現状、ファンやキキには勝ち星を挙げられない状態なんだ。
手も足も出せずに制圧されかねない気がする。
まあ”主への忠誠”は契約者であり主である俺に対しては発動出来ないし、”魔獣調教”も俺のSkill故に俺には効かないのだが。
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♢魔獣の血・Level:EX
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”魔獣の血”。”魔獣の王”の力の一つで、俺の能力の根幹とも言えるSkillだ。
Levelは最初から特殊ランクである『EX』であるので変化はない。
この能力は【魔獣】に該当する魔物を喰らい体内に取り込む事で体力の回復に、負傷した傷や受けた状態異常を癒し直す効能がある。そして俺の能力を向上させる効能もある。
この能力の影響もあり、ここ一月の訓練や戦闘で、見た目ではあまり見えないが肉体が鍛えられ堅もよくなった。身長も少し成長した。
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♢擬人化・Level:EX
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”擬人化”。”魔獣の王”の力の一つで、”魔獣の王”の力の中でも異質な能力で、俺が契約している魔獣眷属を人間の姿に変体させる事が出来る能力だ。
この”擬人化”には”人化”した者に『”主への忠誠”』『”人化”』『”知能獲得”』『”念話”』のSkillを与える事が出来る。
俺は既に契約しているファン、キキ、ヨルムに”擬人化”のSkillを使い”人化”させているので、『”主への忠誠”』『”人化”』『”知能獲得”』『”念話”』をファン達は会得している。あと、人間になっていた際に所持していた物を魔獣の状態に戻ると魔物にとって心臓部と言える器官である『魔心石』に収納される。着ている服とかもなので魔獣から人間に変化する時はその時の恰好の服を纏う。
まあ”擬人化”を掛ける変化前に身に着けていないものは当然無いので、初めに人化させる時は全裸だ。
更には”人化”した眷属魔獣のStatusも上がる。
またこの能力は未知な部分もあり、どうやら最初にこのSkillを掛けてから一定時間経過すると自動的で本来の姿である魔獣の姿に戻ってしまう様だ。そして一度Skillが解けたら再度掛け直す事は暫く出来ないみたいだ。
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♢強酸・Level:Ⅰ
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”強酸”。このSkillは”魔獣の王”の力の副産物で、【魔獣】限定で、本来魔物は人間には食せない有害毒なのだが、俺は【魔獣】の肉を喰らっても状態異常を起こさないようになった。
魔獣以外を食したことがあるが口に入れた瞬間に体が激しい拒絶反応を見せた。警告を飛ばしたとも言える。
その時は直ぐに口に入れたものを吐き出し魔獣の肉を食う事で問題はなかった。
Levelは『Ⅰ』だが変化はしない気がするな。あくまで魔獣限定の能力だからだと思う。
ここまでが”魔獣の王”の能力で得た力だ。
そしてその他……。
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♢観察眼・Level:Ⅲ
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”観察眼”。恐らくは俺本来が持っていた能力だと思う。おそらくは実家で両親が飼っていた動物の世話を俺がよくしていた事もあり、よく観察していたことがゆえんだと思う。
この能力は相手の動きを観察し相手の動きを読み取ることが容易になる、と言うものだが、この観察眼は戦闘面だけでなく、例えば鉱石と言った物体の価値を見極める事も出来るし、ある程度相手の能力レベルを把握する事も出来る。
相手が【魔獣】であればそのものの持つ能力を把握も可能だ。
これは眷属確保と食用の魔獣の選別に便利だ。まあ今は眷属契約が埋まっているのでほぼ狩るだけど。
この能力でヨルムの能力が俺にとって役に立つことを把握したのだ。
それと視力も上がり遠くの物も今まで以上に見えるようになったし、今の俺なら銃の弾丸もスローに見えると思う。
Levelは『Ⅲ』で今後も上がるだろう。
視認できないもの。例えば幽霊?なんてのとか、見えたりとか。
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♢駿足脚・Level:Ⅱ
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”駿足脚”。これは脚力、つまりはSpd強化の能力だな。脚力の瞬間的に強化するだけでなく蹴りの威力も上がる。
近接戦闘の主体である俺にとっては良いSkillだ。
この2つが俺の持つ本来持つSkillだ。
そしてこれ以降はファン達と眷属契約した事で得た”能力”だ。
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♢魔獣風爪・Level:Ⅲ
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”魔獣風爪”。これはファンと眷属契約を行った際に得たSkillで、今の俺の基本攻撃手段としてよく使用しているSkillだ。
これは自分の手の指の爪に風の刃を形成する事が出来る。鉄くらいなら紙の様にスパッと斬れるくらい鋭利さだ。
最初のLevel『Ⅰ』の時は片手にしか緑の刃を形成出来なかったが、鍛え使い続ける事で錬度も上がり両手の状態でもう片方の手も不完全ではあるが形成できるようになり、今では『Ⅲ』に上がり両手共に完全な状態の”風爪”を展開できるようになった。
基本的にこの力は近接専用の能力だ。
何度か試したりもしてるが風の刃を飛ばしたり伸ばしたりは出来ず成功していない。
(俺の戦い方は身軽さを生かした近接メインが殆どなんだよな。…でも、この先もこの”風爪”だけでは立ち行かない場面も出てくるだろうしな。遠距離攻撃能力の習得は課題で必須だな…)
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♢振動波導・Level:Ⅱ
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”振動波導”。これはキキと眷属契約を行った際に得たSkillで、自分の魔力を周囲の空間に浸透させる事で、浸透させた空間内の知覚機能を向上させる事が出来る。これは目に見えない不意の攻撃でも浸透空間内であれば察知する事が出来る。云わば感知系能力だな。
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♢波状・Level:Ⅱ
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”波状”。これもキキと眷属契約を行った際に得たSkillで、自分に風の空気振動を起こす事が出来、”魔獣風爪”の威力を上がる事が出来る。また自分の体の周囲に掛ける事で薄い風の膜の様な防御壁を纏う事が出来る。
俺にとっては”魔獣風爪”と同じく使い勝手良いSkillだ。
”振動波導”と”波状”は風と言うか音に該当する能力で”魔獣風爪”とも相性が良いので便利だし、攻守に秀でているので得て良かったと思う。
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♢金鎧・Level:Ⅰ
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”金鎧”。ヨルムと眷属契約した事で新しく得たSkillだ。
その能力は使用者の身体の強度を上げる事で物理攻撃に高い耐性を得る事が出来る、まあ防御系の能力だな。
土蛇の魔獣であるヨルムの影響もあり大地からの恩恵を得る事が出来る様で、地に足を付けている程物理耐性が上がるようだ。
そして最後。
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♢大地の龍脈・Level:Ⅰ
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”大地の龍脈”。これもヨルムとの契約で得たSkillで、これまた大地、つまり地面に足を付ける事で得られる力だ。
しかしこの能力は今の所活躍の機会は少ないと言えるだろうな。
このSkillは発動させている間、自分の足を大地に付けている限り、地脈エネルギーを取り込み続ける事が出来るのだ。その間は使用者の魔力を補填回復させるわけだ。
常に魔力を回復出来るのは便利かもしれない。けど、正直今の俺の持つSkillは魔力消費が軽く、魔力を大幅に消費する機会も殆ど無いのだ。
現状では宝の持ち腐れだと言えるんだよな。
と、そう何気なく言ったらヨルムは落ち込んだ様子で、
『ごめん、なさい…ボクはダメな子…うぅ…』
『ダメだよ!?ヨルムを苛めたらマスターでもいけないんだからね!いつかちゃんと役に立つ時が来るんだからね!』
『そうですよ。どの様な力でも、その力をいくつも引き出すことで可能性を増やしていく事が出来るのですから。それは主が一番理解されているはずですよね』
とファンとキキに『メっ!』と怒られたな。
そして怒られて、二人の言う通りだなと改め、「悪かった。言い過ぎたな。許してくれるか、ヨルム」と謝罪した。
すると慌てた様に首を横に振りつつヨルムは『ボク、気にしてませんから!?』と言った。
苦笑しつつ俺はヨルムに『頭を俺に近づけろ』と言い、何だろう?と何される?と緊張からヨルムは震えつつ頭を俺に近づけた。
そして俺は右手を上げる。その俺の行動にビクッとなるヨルムだが、次の瞬間には驚きから嬉しさに震えた。
ファンとキキからはそれで良いんです、とウンウンと笑みを浮かべつつ頷いていた
(そんなに嬉しいんだろうか?)
俺はただヨルムの頭を撫でてやっただけなんだけどな。
そう思い出しながら【祝福の標識】を閉じ、スマホの電源を切ると仕舞う。
明日に備えて眠りにつく。
明日はヨルムの服の調達をしに行かないとな。
それともっと強くなる為にも手強い魔物、できれば魔獣に遭遇したいな。
そう考えながら「おやすみ」と呟いて眠りに入った。
+
次の日――ケモノの『手強い相手との遭遇』の願いが叶う事となる。
今まで出会ったことのない強い魔物との出会い。
ケモノやファン達眷属より上の実力を持つ『魔鳥』と死闘を演じる。
そして―――最初のあの日に自分を見捨て追い捨てたかつてのクラスメイトと再会する事になる。




