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2話:血の涙

「何で僕だけがこんな目に会わなくちゃいけないんだっ」


そうぶつぶつと呟きながら見知らぬ土地を歩いていく。

ここは僕のいた地球の日本ではなく、所謂別世界…異世界と言う場所である。

この世界の名は【ウラヌス】と呼ばれているようだ。


高校生になって数ヶ月過ぎたある日。

僕を含めたクラスメイト、総勢21名は突然クラスに落ちてきた本、その本が開かれた瞬間今いるこの世界に召喚された。


僕を勝手に召喚しておきながら、僕を追い出した先程までいた国は【グラフマイーサ】と言う名である。

追い出された理由。

それは僕が何もない無能だったからだ。


僕は制服のズボンのポケットからスマホを取り出すと電源を入れる。

電源を入れると画面が映る。

画面には一つのアプリだけ表示されていた。

異世界故に通話機能などは使えないが、ある機能だけ使用することが出来た。

それは、自分を証明する…この世界ではステータスを表示する機能だった。

不思議な事にスマホの電池が減る事がなかった。

僕は電池切れになる事は無いと分かっているが、取り敢えず使う…まあ使う必要が殆どないので電源を切っている。

そのスマホ機能を起動させる。

起動させると僕のこの世界におけるステータスが表示される。


=====

Name:超陀(こえた)ケモノ

BloodType:?

Atk:10

Dfs:10

Spd:10

Mp:10

【Ability】-

【Skill】-

=====


何度見ても、『なんだよこれ、無茶ぶり過ぎだろ!どこのハードモードだよ!』と思う。

今の僕には何の力も能力、技能も有していない。

この世界にはゲームとかに出て来る魔物とか言う敵がいる。

追い出される前に説明された魔物。

姿は千差万別で、獣の姿に似た『魔獣』。虫に似た『魔蟲』。ほかにも魚類の『魔魚』、空想では御馴染の『竜種』なんかが存在している。

正直今僕はこのどれに対峙しても数秒もせず殺されるであろう。

今の僕の容姿は身長も小柄だし身体能力も正直底辺だと思う。着ている物は学園の夏服のシャツにズボン、そしてズボンのポケットに入っていたスマホとこの日に両親が沢山飼っている動物達の餌代の入った財布しかない。

武器の類もない。

正直追い出すにしてもこの世界の通貨とか身を守る武器とかくれてもいいと思う。


30分程歩くと、眼の先に街が見えてきた。

どうやら、運良く魔物に襲われる事なく辿り着く事が出来たようだ。

この後の事を考えると不安しかないけど取り敢えず街に入れれば安全だろうと安堵した。

けど……安堵して直ぐ僕は理不尽と言う名の絶望をする事になった。


それは僕が街の入り口に近付くと1人の槍を持った兵士の男が僕の前に立ち塞がった。

その男からは今まで僕が浴びて来た悪意に似たものを感じ取った。

嫌な予感がした。


「おいっ、見慣れない服を着たお前!俺はこの街の門番をしているグザンだ!お前のステータスを表示しろ!」


高圧的にステータスの提示を告げる男。

僕はズボンのポケットからスマホを取り出し電源を入れる。そしてステータスを表示するアプリを起動させる。


「はいっ、これでいい?」

「………あぁ、間違いないようだ。残念だがお前はこの街に足を踏み入れる事は出来んっ!即刻ここから去れ!」

「な、なん、でだよ……」


何でステータスを見せただけで町に入る事も出来ないんだよ。理不尽過ぎだ!

納得いかない僕に、目の前の男はあからさまに面倒だなと言う表情を浮かべていた。


「お前、王国で召喚された異世界人だろ?変わった証明書だしまず間違いないだろ」


なんで知ってるんだと言う表情を浮かべる僕。


「王国が魔族討伐の為に異世界から勇者を呼んだという事は周知の事実なんだよ」

「で、でも…なんで、異世界人だからって僕が街に入る事が出来ないんだよ!」

「はぁ、面倒だな。まあいいか、教えておいてやる。お前は異世界人だから入れないんじゃねえんだよ。……ただ、お前が“無能”だからだ」

「なっ!?…無能、だから……」

「そうだ。お前が何にもできない無能だからさ。実を言うとな、王国から伝令が来てるんだよ」


王国からの伝令。その言葉に僕はこの先の未来が見えた様に思った。だって僕はあの王国の王様直々に無能と罵られ追い出されたのだから。

でもまさか…


「そうだよ。国王陛下直々に『異世界より来た無能者、名をケモノと言う人間を我が王国領域に存在する街に入れるな』。そう伝令を受けてんのさ。だから今すぐ引き返せって。今ならお前をこの槍で殺す必要もないしな」


何だよそれ…

何で僕が…

何でこんな目に合う…

何でだよ…

何で僕だけが…

何で…何でだぁあああああぁ!!


僕の心が怒りでいっぱいになる。

怒りで目が赤く染まる。


「おいおい、目から血を流すとか奇妙な芸が出来んだな。ほらさっさと消えろ。今ならお前を見なかったことに出来んだから」


僕は怒りで目から血を流していた。

眼の前のコイツ、いや、この王国そのものに対して憎悪で溢れる。

殺してやりたい!消えてしまえばいい!滅んでしまえ!

そんな怨みで一杯だった。

だけど今の僕には何もできない。この目の前の男に飛び掛かっても、その男が持つ槍で一突きで殺される。

僕は血の涙を、怨みの涙を流しつつ、無能な自分の情けなさを呪いながらその場を立ち去るのだった。

立ち去る時に僕の背に先程の男の声が届く。


「この先の街全てお前を拒絶する!取り敢えず北の森か南の洞窟地帯にでも行けばいいぜぇ!まあ、森には魔物がいるしどっちもあれだがなあ!」


僕は蔑みも籠った男の声を無視する様に南に向かって走っていた。



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