第8話《誠のスキル》
連続投稿七日目。
感想、指摘等は大歓迎。
翌日、俺は屋敷からそれなりに離れた所に来ていた。ここなら誰かに見られる可能性も低いだろう。
さて、何故俺がこんなところにいるかといえば、俺のスキルの能力の再確認のためた。
昨日シェリネーラさん言っていたようにユニークスキルは固有のスキルのため、しっかりと自分でその能力を把握しておかなければならない。
さて、現在の俺のステータスをまず確認しよう。
============
五大 誠 Lv:32(933/3300)
性別:男
年齢:17歳(20XX/05/22)
身長:172.6cm
体重:60.7kg
血液型:BO,Rh+
職業:高校生(私立西継学園高等学校3年A組)
状態:健康(3%)
HP:56/56
MP:104/104
体力:46
筋力:43
敏捷:73
器用:96
▼隠しステータス(変動)
知力:11
耐久:10
幸運:13
意志:16
【スキル】
真眼(Lv6 13967/15000)
魂を直接読み解き、その者の本質を暴く。
▼レベル開放能力一覧
Lv1:相手に触れることでステータス画面を見れる。
Lv2:相手を認識することでステータス画面を見れる。
Lv3:相手のステータスの詳細が分かる。
Lv4:相手のスキルの詳細が分かる。
Lv5:相手の称号の詳細が分かる。
Lv6:相手の隠しステータスが分かる。
Lv7:No Data
Lv8:No Data
Lv9:No Data
Lv10:No Data
空間操作(ユニーク) MP消費:1~∞
空間の全てを認識し、空間そのものを操る。隠しステータス「意志」によって効力が変化。
「立体索敵」、「範囲転移」、「疑似念力」……
【称号】
見定めし者
移り行く世界にて起こる事象の全てを見て、正しき未来を見出す者。
異世界人
この世界に新たなる風を齎すべく■■■■■によって別世界から引き寄せられた異分子。
============
「まずは……空間操作の確認か」
空間操作。
このスキルの説明には曖昧な点が多い。実際にいろいろと検証する必要がある。
だが、最近ステータス画面を見てあることに気が付いた。説明の下に、幾つか括弧に囲まれた文字が現れているのだ。これは、俺が完全に使い方を認識した空間操作の能力の名前なのだと思う。
まず、現時点で分かっていることだ。
空間操作は万能ではない。と言っても、制限はたったの一つしかない。その制限とは、発動可能領域だ。
発動可能領域であれば、俺は俺が考えてうる全ての空間を操る行動が出来るのだ。ちなみに、現在の俺の発動可能領域は約30メートル+視界範囲内である。
「まず最初は……」
俺はそっと目を閉じる。
出来ることその一は索敵だ。具体的に言うと、発動可能領域内部の状況を三次元的に一切の死角なく把握することができる。
現在、能力を使用している俺の頭の中ではまるでコンピューターの3D映像のように周囲の状況を認識している。
この能力での消費MPは約一分間で1MPだ。つまり、現在の俺なら最長で104分。いや、自然回復する分を合わせて二時間弱くらいの間、この索敵が出来る。
「そして……」
その二、物質の転移。俺が唯一みんなに開示している能力だ。この能力はそのままの意味だ。移動前と移動後の双方が発動可能領域内部であれば、自分を含めたあらゆる物質を転移させられる。但し、実体の無い物は除くが。
俺は、手始めに索敵で見つけた苺のような果実の生っている木の根元に転移する。
と同時に索敵可能範囲、つまり発動可能領域も俺の位置に合わせて移動した。今まで手に取るように分かった範囲の一部が分からなくなり、代わりに別の範囲が見えてくる。
MPが減る。この転移によるMP消費に距離は関係なく、基本的に物質の体積に比例する。重さもあまり関係ない。だいたい、人ひとり当たり3MPほどだ。但し自分自身は例外で、1MPで良い。お蔭で俺自身の移動手段としてはとても重宝している。
そして俺はそのまま次の確認に入る。
その三、物質の固定及び移動。これは要は念力のような物だ。発動可能領域内部の動物を除く全ての動作を制御出来る。但し、全てを本当に制御するとなると脳への負担が大変なことになるので、やるつもりはない。
今回の目標は先ほど言った、苺のような果実をもぎ取ることだ。
「……ッ!」
プチッという音が鳴り、木の実が木から取れる。俺は能力を解除し、落ちてきた木の実をキャッチした。
「うーん……あまり効率が良くないな」
今回の木の実をもぐのに消費したMPは11。明らかに効率が悪い。
何故だかは分からないが、この能力に関していうとなぜだかMP効率がとても悪いのだ。原因は不明だ。まあ、必要なとき以外は使わないようにしよう。代替手段はあるのだから。
そうそう、言い忘れていたが転移ではあの木の実は取れない。転移は物質を塊として捉えるので、あの苺のような木の実を転移させて取ろうとするともれなく一緒に木がまるまる付いてきてしまうのだ。
なので、一度木の実と木を切り離す必要がある。
そこで先ほど言った、代替手段というのが出てくる。
「と、その前に……」
ステータスを確認すると、MPが既に88まで減っている。おそらく内訳は、索敵に4~5、自己転移に1、木の実をもぎ取るのに11で合計16~17MPってとこだろう。誤差1は自然回復分だ。
感覚で大体の残量は分かるが、今回はMPの消費効率の確認の意味も含んでいるのでこういった確認は必要不可欠だ。
「すっぱ!」
手に持った苺のような果物を口にすると、考えていたよりもずっと酸味がきいていた。ハズレだ。
「さて、ここからは要検証の能力だ」
気を引き締めていかないと、下手すれば大参事になりかねない……かもしれない。
まあ、MP回復薬はそこそこ持ってきたので、MPについてはあまり気にしなくて済む。
俺は気を引き締めて検証に取り掛かった。
◇◆◇◆◇
「……」
検証を終えて屋敷に戻った俺は、みんなに見つからないようにあの例の少女のいる部屋に来ていた。
しかし、シェリネーラさんはいない。仕組みは謎だが、俺が庭の角に行くと忽然とあの黄緑色の揺らぎが現れて中に入れるようにシェリネーラさんが設定してくれたのだ。
「綺麗だな……」
俺は改めて少女を見てふと思った。
異世界で出逢った、雪のように白い髪の美少女。彼女はホムンクルスだったりするのだろうか。
ここはファンタジーの世界だ。有り得ないとはいいきれない。被験体という言葉からしても可能性は十分にある。
「さて、と……」
シェリネーラさんに言われたあの日から俺は毎日欠かさずに俺はこの部屋に来ている。だが、何か変化があるわけでもなく、数分水槽を眺めて帰るだけだ。
だが、今日の俺にはもう一つやろうと決めていたことがあった。本当ならもっと前に手を出してみても良かったのだが、踏ん張りがつかなかった。
そうしているうちにダラダラと時間が流れて今日にまでなってしまっていたのだ。
この部屋には少女の眠る水槽以外にも置かれている物がある。
俺は、ゆっくりとその一つに近づいてみる。
そこにあったのは、縦二メートル、横三メートルほどのコンソールのようなものだった。スイッチやボタン、キーボードのようなものがズラリと並ぶその光景はここがファンタジー世界だということを鑑みるととても不自然に感じられた。
「……」
シェリネーラさんの話を聞く限りこの世界の文明はせいぜい中世のヨーロッパ程度のものらしい。
こんな高度な機械などあるはずがない。明らかなオーバーテクノロジー。
俺はコンソールの左端にある一つの赤いボタンに触れる。そのボタンの上には『POWER』と書かれている。今日こそはこのボタンを押し、これが一体何なのかを知る必要がある。
さて、俺にはこの機械が何なのかは分からない。だが、この機械が誰によって作られたのかは想像がいくつか出来る。もし、俺の想像が正しければこの機械は俺たちに対して害をなさない可能性が高い。だが、もし俺の予想が外れれば。何が起こるのかは想像もできない。
幸い、ここはあの屋敷からは隔離された謎空間だ。
コンソール上部にあるモニターに文字が映し出された。
『ARTIFICIAL INTELLIGENCE TYPE MAGIC SUPER COMPUTER ――START UP』
それと同時に、
『Excuse me, what's you name?(失礼ですが、貴方は誰ですか?)』
男の声がどこからか話しかけてきた。
◇◆◇◆◇
時間は少し遡り、誠がスキルの検証を終え、少女のいる部屋に向かっている頃のこと。
ここは断戒の大森林の一角にある切り株の上。そこに燕尾服に身を包む一人の男が腰を掛けていた。
といっても、男はただの人ではなかった。いや、人ですらなかった。それは額上部から突き出した10センチにもなる二本の角、そして肩甲骨の辺りから生えている蝙蝠のような翼を見れば明らかだ。
そして、優男な顔立ちをしてはいる男だが、いまはその目に鋭い光を灯していた。
その時、男のすぐ脇を巨大な狼の魔獣の群れが通り過ぎた。どうやら、このあたりはこの狼たちの縄張りらしい。
そして暫くして、いきなり男はそれまでの鋭い眼光が嘘のように消して立ち上がった。
「漸く見つけました……!!」
瞬間、男の顔が愉悦の表情に僅かに歪んだ。
9話更新は明日の21時。
2017/12/29 ステータスの間違いを改定。シナリオには影響しません。
追加:勝手にランキングのタグを設定しました。是非クリックして下さい!