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焦燥の世界  作者: 八鍵 嘯
第一部「ギナティア王国篇」 第二章「異世界の国」
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第10話《王都観光 前編》

漸くシュニがちゃんと登場するよ……

「ここがバルス大通りか」


 南門から王城へと一直線に続く都市内最大の通りだけあって王都バルスで最も栄えているのが、このバルス大通りだ。

 俺達は王都へ着いた際、馬車でこの通りを通過しているが、こうして見ていると改めてその規模の凄さに驚かされる。


 左右には世界中の一流店舗が立ち並び、道幅は数十メートルあるにも関わらず多くの人でごった返している。

 マイーラの街などでも多少は見かけたが、獣人やエルフ、ドワーフ、珍しいところだと竜人なんていう種族も見える。

 聞いた話によると、未だ多少種族差別の残る国が多い中でこのギナティア王国は個人的なものは兎も角全体として見るとほぼそれが無いのだという。


「シュニ、どこか行きたいとこあるか? ……って、初めて来たのにある訳ないか」


 今日は一日特に予定はない。完全にシュニとの王都散策の日だ。

 因みに、昨日は魔導技術研究機関にホワイトマジックパールの短剣を預けてきた。あの見学の日に渡さなかったのは、単純に家で留守番をしていたシュニが短剣を持っていたからだ。結果は一週間後には報告するという。


「とりあえず食べ物」

「そうだな。その辺ぶらついてれば食い物くらいあるだろうし、行くか」


 そうして歩き始めた俺達は、端の店から準々に見て回り始めたのだが……。


「くそ、なんでこんなにどこも高いんだ?」

「マコト、なんか疲れてる?」


 見る店全てが超高級店ばかりだ。

 服は安くて一着数十万、料理も一品数千ハイル単位、アクセサリーなどもまるで貴族が付けるような高価な物ばかり。

 と、そこでふと気がつく。


「大通り……それもここはミュヘン男爵邸の、貴族街から凄く近い。只でさえこの国の王都の大通りという好立地なのに、その上貴族街に近いなんて貴族御用達の店ばっかりなのは当たり前じゃないか……バカかよ俺は」


 だが、これで分かった。ここには超高級店しかない。ならもっと敷居の低い庶民的な店の並ぶ場所へ行けばいい。


「はぁ。こんな事なら透に女子たちがどの辺りを散策してるのか聞いときゃよかった」

「移動するの?」

「ああ、ひとまずは貴族街からもう少し離れてみよう」


 俺達は、ひとまずはバルス大通りをそのまま真っ直ぐ進んでみることにした。


 ◆◇◆◇◆


「この辺りはもう、そんなに高くはないな」


 バルス大通りを十分ほど歩いていると、周囲は段々と安価な雑貨屋や武器屋、食堂や宿屋などが建ち並ぶようになってきた。貴族街近くでは見掛けなかった露天商、屋台なども見え始める。


「シュニ、なんか気になるモノはあるか?」

「うー……」


 隣を歩くシュニは眼前に広がる数多の店に目移りしている。きっと、どれもこれも気になってどこから行くか迷っているのだろう。


「じゃあ、あそこの屋台から順に回っていくか」


 そう言って俺たちは美味しそうなタレの匂いを発している串焼きの屋台へと足を向けた。


 ◆◇◆◇◆


「あれ? シュニちゃんと五大くんじゃん。どしたの、こんなとこで」

「デート?」

「えー! 確かにシュニちゃん美人さんだし惚れちうのも分かるけどー」

「確かにこれは、そう言われても仕方ないわね……」

「……流石にロリコンはヤバいと思うんだけど」


 偶然にも芹澤、富士見、雅、呉、中村の女子五人に遭遇したのは、あれから二時間ほどが経ち、太陽が大分高い位置にきた頃のことだった。

 ってか、なにその反応。特に中村の目が怖い。俺は別にロリコンではないぞ。


「いや、シュニが暇だっていうからちょっと散策に出てるだけで」

「……これからお昼食べるの」


 シュニは正直、この面子にはあまりまだ懐いていない。そのためか、さり気なく俺の服の裾を握りしめている。


「ふーん。じゃあ一緒に行かない? シュニちゃん。丁度私達もお昼にしようとしてたの。美味しい店見つけてあるからさ」

「美味しい店?」

「そう。大衆食堂っぽい感じで値段も安いけど、美味しかったよ」

「……いく」


 少し悩んだが、美味しい店という言葉に負けたシュニ。あまり慣れてない彼女たちとでも美味しいご飯さえあれば一緒に行動出来るのか……。

 あ……ってことは、この男女比率6:1で飯を食わなきゃならんのか。

 なんていうか、絶対あぶれる。いや、シュニが俺に構ってくることを考えるとあぶれはしないだろうが、絶対気まずくなるぞ。

 それと……


「シュニ。さっきから結構買い食いしてるが、昼飯は入るのか?」

「うん。お腹空いてるよ」


 ケロッとした表情でのたまうシュニ。


「そうか。大丈夫ならまあ、それでいいんだが……」

「って訳で行こっかシュニちゃん」


 内心どこか納得いかないと俺が首を捻る中、話が済んだのを見計らった中村がシュニの手を引く。

 中村の奴、俺とシュニでキャラ変わりすぎだろ。


「え……うん……」


 後に続くようにシュニに話しかける女子陣。彼女らにもみくちゃにされて困惑しているシュニを見ていると、ふと横から声が掛かる。


「ねぇ、五大君。シュニちゃんってずっとあんな感じなの?」


 尋ねてて来たのは呉だった。


「あんなと言うと?」

「なんていうか、ずっと貴方にくっついて歩いて他の人には……同性にもあんまり心を許してない感じじゃない?」

「あー……そうだな。結構ずっとそんな感じかもしれない」


 そう答えると、呉は顎に手を当てて少し考えるそぶりをみせる。


「思うんだけど……シュニちゃんのそれ、依存って言えると思うの。これからの彼女のことを考えると、早めにどうにかした方がいいかもしれないわ」


 依存か……。

 シュニが俺にだけ以上に懐く理由はテンボウから既に聞いている。それによると、シュニはあの部屋に俺が通っていた期間、俺に対して本能的に親しみを覚えるように調整がされていたのだという。

 なぜそのようなことが行われていたのかには、シュニの出生が関係しており――


「五大君? 大丈夫? 険しい表情してるけど……」

「ん? あ、ああ。いや、確かに依存と言えるだろうな。まあ、最近は泊めて貰っている屋敷のメイド長さんなんかとも多少は話したり出来てるし、どうにかなるだろ」


 そう言って誤魔化す。

 テンボウに聞いた話は実際のところ要領を得ないところが多々あり、信憑性に欠けていた。だが、現状やるべきことははっきりした。

 やはり、ひとまずは《ジュラの大迷宮》へ向かう必要がある。それは確定だ。


「マコト、早く」


 中村に引かれてるシュニに呼ばれ、俺は仕方なしについて行くことになった。



 ◆◇◆◇◆


 女子たちに半ば無条件に連れられて着いたのは、バルス大通りから二本ほど逸れた通りで、王都の外からの人よりも地元の一般市民らしき人を多く見かける場所だった。


「ココだよーっ!」


 目的の店を見つけるやいなや走り出した雅が、入り口を指差して叫ぶ。

 店の看板には二本足で立っている猫がフライパン片手にコック帽を被っている絵が描かれている。そしてその絵の下には『猫人族料理店 トロア食堂』とある。

 猫人族料理? 獣人の一種の猫人族は、確かに王都散策でもよく見かけたが……

 

「この店、店主が猫人族で、故郷の味を広めたいって人らしいんだ」

「ふーん……」


 芹澤の解説と、それを聞き流すシュニ。ダメだ、完全に美味しい料理の方に意識がいっているらしい。


 雅が急かすので、ひとまず店に入る。

 中は別段変わったところはない普通の食堂だ。だが、店のインテリアや装飾などの雰囲気は王都散策で巡ったどの店とも違う。全体的に木を多用した造りになっている。


「いらっしゃいませ!」


 可愛らしい声で声を掛けてきたのは、シュニと変わらないくらいの小柄な猫人族の女の子。


「また来てくれたんだ!」

「うん! 今日は友達も連れてきたんだよー」


 猫人族の女の子と楽しげに話す雅。


「六名様ー、ごあんなーい!」


 俺達は四人掛けの机を二つを連結した席に案内された。机に置かれたメニュー表を見て、食べたいモノを選ぶ。この辺りも地球となんら変わりはないらしい。


「昨日頼めなかった一角兎肉のスープってまだある?」

「今日はあと二食ありますよ」

「じゃあそれのセットで!」


 雅は既に決めてあったようで、早々に注文してしまった。

 メニュー表に目を移すと、最初にデカデカと、

『店主一押し!! 1日30食限定

 一角兎肉のスープ

 単品:200ハイル セット:450ハイル』

 とある。

 そして、その後に鳥や牛などの肉料理メインに様々な料理が並ぶ。どうやらそういった肉料理が猫人族料理の特徴のようだ。

 価格帯はどれも一角兎肉のスープと同じくらいで、高くてもセットで700ハイル程。あまり高すぎない所もいい。


「私はこのアーク鳥の蒸し焼きのセット」

「私も蛍と同じヤツで」

「あたしは、この炙りチーズのアーク鳥焼きセットをかな」

「じゃあ……私はシュツブルのハーブ煮込みとパンを単品で頼むわ」


 女子たちがあまり時間を掛けずに注文を決める中、俺の隣に座るシュニの方に目をやると、案の定メニュー表を片手に悩んでいた。


「シュニちゃんは何がいいかな?」

「うーん……どれも美味しそう……」

「どれとどれで悩んでるの?」


 芹澤と富士見がシュニに声をかける。

 シュニが無言で指さしたのは一角兎肉のスープとシュツブルのステーキ。


「じゃあさ、シュニちゃんがスープ頼んで、五大君がステーキ頼んで、ステーキはちょっと貰えばいいじゃん」


 中村が言う。

 え、俺? 普通にアーク鳥焼きの自家製ソース掛けにするつもりだったんだが……


「そうだね! それでどう? シュニちゃん」

「……マコト、いい?」


 俺にステーキを頼ませる方向で話を進める雅と、ちゃんと俺の意見を取り入れようとしてくれてるシュニ。

 流石にここで拒否するのは空気的に厳しいだろ……。


「んー、まあ。俺はそれでもいいけど」


 てか、この状況で拒否ったら俺の印象悪すぎでしょ。なにこの雰囲気。女子怖ェー。


 注文が済んだ後、俺を無視しつつシュニを中心に女子トークを始める彼女らを横目に、俺はため息を吐くのであった。

一応シュニはヒロインなんだけどなぁ。

てか、まだ11話0文字のまんま……ヤバイ。


高校生くらいだと、女子の中の男子ってだいぶ気まずいよねっ!

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