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記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第二章 『無題{仮}』
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第十八話 ダンジョンの中 その8

お待たせしました。遅くなって申し訳ありませんでした。

「おい・・・お前バカだろ。」


俺の言葉に目を開けた青年は、目の前の光景を見て奇声をあげ、三者三様の美女獣人に襲いかかった。

襲いかかったと言えば語弊があるが、まあ襲いかかったと言って間違いはないだろう。

なんせ美女獣人の耳や頭を撫でまわし、しまいには三人の頭に顔を突っ込んで・・・臭いでも嗅いでいるのだろうか?


・・・・・・・完全に変態である。


「それにしても、なんだ?獣人が好きなのか?」


しかし、こんな獣人見たこと無い。普通の獣人は体中に毛が生え・・・いうなれば人間程の大きさの犬や猫が、そのまま二足歩行しているような恰好のはずであった。


この600年でこれほど変わったのだろうか?しかしなぁ・・・一人はこの青年の相方である少女である。それが耳と尻尾を生やしているのを見るとおそらく・・・


「ただの趣味か。」


おそらく現実の普通の人間に自分の好きな成分を足したのだろう。

昔からいたんだよな~。モンスター系が好きな奴。本当に一部の貴族だったが必ずいたのだ。

まあ、貴族の体裁があるから表には出さんが、上級者用の依頼。つまり裏での依頼が数件あったのだ。


一番人気はサキュバス。つまり淫魔である。サキュバス自身もその性質上、人間以外の種と交配しても子供が作れず、子孫を残すためにワザと人間に捕まる者もいた。

まあ所謂、依頼主、サキュバス、冒険者。一挙三得であったため、簡単なお仕事だったりしたものだ。


二番人気はダークエルフ。美男美女しかいない。しかも気が強い。まあなんだ。貴族共はそれを躾けるのが好きなんだとか言っていた。まあ大抵は躾中に逃げられていたけどな。

・・・そういえば青年に撫でられている金髪の少女は、頭の獣耳以外に顔の横に長い耳がある。・・・こいつもエルフ系か?


他には人魚種、蛇女種、女郎蜘蛛種、小悪魔種、ローパー種、デュラハン種、その他。という感じだった。





「それにしても・・・才能はありそうだな。」


ルトマックは三人の美女に好き放題している青年を見て、そう呟いた。


二人が寝る前、少女は無詠唱魔法を教えてほしいと言っていた。


無詠唱で魔法を放つのは想像力、完全なるイメージが大事なのだ。

魔法とは自分の中にある魔力を外に出すとき、イメージによって魔力の形を変えて放つのだ。

正直、魔法名を発声すること、詠唱などはイメージの固定化という点の補助でしかない。これは俺の人生において見つけた最大の発見の一つである。


若い時、夢の中で練習して声を出すと現実世界で寝言を言っているのでは?という疑問から何となく恥ずかしくなり、無詠唱で練習した。

ある時、夢の中で出来たなら現実でも出来るかも、と思い、やってみたら現実でも出来てしまった。

これが魔法名すら言わない、完全無詠唱の発見の発端である。


若かったなぁ俺・・・思春期だったのだろう。寝言を気にするなんて。


その後、完全無詠唱に必要なのは、現実でも出来る。と思い込むことも大事だと分かった。

さて、ここからが俺もバカだった。

出来ると思ったら、さあ大変。色々と魔法を開発してしまい、逆に出来ない魔法が無いほどになった。


魔法協会からは、新しい魔法の詠唱をさっさと教えろ、魔法名を開示しろ、と言われて散々な目にあった。

あのジジい共に『無詠唱だ』『魔法名なんて無い、完全無詠唱だ!』と言っても

ワシ達には聞こえん声で言っているだろうとか、これだから最近の若者は。などと言ってきた。


まあ協会・・・やめるよね。そんなところに居ても意味が無いからな。

後に俺は冒険者になり、依頼をこなしながら、名前の無い魔法に魔法名を付けて本を書いた。


飛ぶように売れたよ。お金は溜まった溜まった。風呂とか金貨で埋めて遊んじゃったよ。


その数年後、勇者に会い、勇者一行に加わって賢者なんて言われはじめて・・・・・・・・・・・・・





さて、話を戻そう。

俺がこの好き放題しているコイツを見て才能あると思ったのは、夢であるココで好き放題していることである。

確かに人間というのは、ここが夢だと感じると好き放題しようとするが、実際に好きに何かやろうとすると出来ないの者も多い。

これは俺自身が生きてる時に、何人か魔法を教えた時に分かったことだ。


で、どちらが完全無詠唱を覚えられたかというと当然、好き放題出来た方である。


「で、こいつは・・・・」


完全に好き放題している。もう正直見てられん。


俺は流石に止めようかと思い近づく。すると青年は、ハっとした顔で美女たちから突然離れた。


やっと正気に戻ったかと思い、話しかけようとすると青年は目を閉じた。しばらく目を閉じたかと思うと美女たちの手に変化が訪れた。

少しぼやけたかと思うとすぐに形になって現れた。そこには獣と同じような手が出現した。

目を開けた青年は、またも奇声をあげ、美女たちの手に襲いかかった。

今度は手というより肉球を堪能しているようだ。一心不乱に肉球をプニプニと触っている。


ふむ。やはり才能はありそうだ。だがどうしようか。気持ち的には教えたくない、なぜなら変態だからだ。

いくら才能があると言っても変態だ。今なんか肉球に頬ずりしている。こんな変隊に完全無詠唱を教えたところで碌なことに使わなそうだ。

・・・だがコイツは試練を突破してきている。

少女が報酬として完全無詠唱とお勧め魔法を欲したが、コイツはそれに乗っかっただけのように見えた。

し、か、し、だ。一旦でも了承した身としては、一応教えなければ俺の名が廃る。


「はぁぁぁぁ、しょうがないかぁ。」


ルトマックは、思いっきり溜め息をついて、ナオヤに近づいた。


「おい、お前。確かナオヤとか言ったよな。」


話しかけるが返事がない。今は金髪少女をそのまま育てたかのような女性の肉球に顔を埋めている。

女性は少し恥ずかしそうにしており、顔が少し赤くなっている。


芸が細かいな。なんて想像力だよ。・・・・・・かわいいじゃねぇか!!!!


なんて奴だ。ここはコイツの夢の中だ。つまり、この女性の表情もコイツが作っているのだ。

凄まじい。

今コイツは肉球に埋まりながら『きっと彼女ならこんな表情をする』と思い、今も彼女の表情を作り続けている。

普通、夢の中で見えないところの情報を作るなどしにくいものだ。

しかしコイツは作ってみせている。しかも本当に芸が細かい。女性は俺に見られてると分かると目を伏せ、恥ずかしそうに震えている。


・・・どうやったらこんなことが出来る?考えられるとすれば自分の無意識下で俺を認識し、彼女の表情を作っているというところか・・・


「・・・なんたる才能・・・」


おそらくコイツはそのうち、魔法分野において凄まじく強くなる。だがやはり・・・・


「変態教えるわけにはいかんよなぁ・・・・あ、そうだ。あれ、やるか・・・」


ルトマックは手を振るとそこには・・・ナオヤの動く画面が現れた。

そう、ルトマックがやったのはナオヤを知るため、ここ最近のナオヤの強く記憶に残ったことを抜きだしたのだ。


「ほう・・・これは・・・」


相方の少女のために婚約者を演じている。腕を組んでドキドキしている。

馬車で夜の見張りをしている。一緒の少女とデート出来ると少し期待していたが見張りだったことに少し凹んでいる。

この街に来るまでにモンスターに襲われたが、一緒に来ていた冒険者チームの戦いに感動している。

――伝ー―~女~---神~~―――~~~――-――---―~~~

買っておいたプレゼントを三人に渡せて嬉しく思っていると、一人の女性が泣いて焦っている。

フォートレスという街で事件が一段落して、油断はできないと思ってはいるが、ほっとしている。

誘拐された女性が無事で本当に良かったと安堵している。

事件の犯人。相方に傷をつけた奴が目に入り、憤慨している。

冒険者ギルドから帰ってくると世話になっている宿で相方の少女が倒れており、焦っている。

初めてモンスターを倒して・・・生き物を殺したことに落ち込んでいる。

これから起こるであろう事件に対し、困惑後、守ろうとする意志に溢れている。

初めて魔法を覚えて興奮している。

冒険者ギルドとメイドにギャップを感じている。

モンスターに追われ、恐怖している。

――死ー―~女~---神~~―転―虫―~~~――-――---―~~~


「む?これ以上読めない?・・・・まあ、しょうがないか。しっかし、これは・・・」


なぜか一部見えないものもあったが正直いうと好印象だった。というか人間らしく喜怒哀楽に溢れていた。

とてもじゃないが、今も女性の両手の肉球に自分の両頬を挟んでもらい、恍惚としている男と一緒とは思えない。

ただ記憶を見る限り、やはり良い奴には違いない。


「となると、今まで抑えてた欲望が一気に噴出している状態か。」


夢と言うのは自分の精神に溜まっている欲望が噴出しやすい。ここで発散することで現実ではマトモに過ごしている奴も少なくない。


「変態性はあるが、発禁ものじゃないだけ精神は安定しているか。」


今まで入ったことのある奴なんて、真面目に見えて夢の中ではドロドロで、どろッどろな奴もいた。そいつらに比べてコイツはマシだろう。


「本当に・・・・本当にしょうがないが、教えてやるか。・・・だがその前に・・・」


ルトマックは手を空中に伸ばすと、そこに長く黒い重厚な杖が出てきた。それはルトマック愛用の杖である。

それを横に素振りをして、それからナオヤに近づいて行く。


ルトマックは少々・・少し・・・だいぶイライラしていた。その原因はナオヤの記憶を見たことに他ならない。

なぜならナオヤの記憶の中では、それぞれの魅力を持った美女や美少女に出会っている。

ルトマックはそれが妬ましかった。

ルトマックも生きている時は、何度も美女に会った。会ったがそれは自分が有名なだけに、名前を狙ってくる輩、金が欲しい輩などだった。

とても自分を好いてくれる者では無かった。だがナオヤは違う。記憶を見た限り好かれている。


これはただの嫉妬だ。それが醜いことだと、ルトマックは自覚している。

しかし止めない。止めたくない。

という訳で決めたのだ。正気に戻すためという理由をつけて一撃お見舞いしようと。

そう決意してナオヤの元に歩いて行った。


「おい、青年。」

「・・・・・」


ナオヤはまだ恍惚としている。


「おい、ナオヤ。」

「・・はい~・・」


ナオヤは返事をしてこちらを向いた。


ナオヤは見た。良い笑顔のルトマックを。そして疑問に思った。

なぜ大きな杖を持ち、野球のバッターが今にも打つような恰好をしているのかを。


そしてナオヤの疑問な視線を全く無視して、ルトマックは杖を大きく横から振った。


「正気に戻るためだ・・・いっぺん逝ってこい!!」

「ブボラぁぁぁ!!!」


ナオヤは二回転ほどしながら空中に吹っ飛んだ。

そして吹っ飛ばしたルトマックは、死んでから初めてスッキリした気分を味わった。


ダンジョン回は10で絶対終わらせます。

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