第九話 優雅?な朝
眠いです。
ピピピピピピピピピピピ
あ~うるさい
目が擦りながら起きようとする。しかし身体が重く、動きにくい。何かが乗っているようだ、
ピピピピピピピピピピ
あ~マジうるさい
まだ、音がしているので、止めるべく音のする方へ手を伸ばし、それを発見。
適当に触るとスイッチのような突起があったので、とりあえず押してみることにした。
・・・・・・・止まった。・・・・重い。
今度は、先程から自分の腹の上に乗っている重いものを確認する。
・・・・・メルフィナか~。
重りの正体はメルフィナだった。
メルフィナの身体は、全て俺に乗っかる形で寝ている。
なんとも器用なこと。しかもうつ伏せだ。
しかし、このままメルフィナに起きられると大変なことになる。
俺は健全な身体かつ『英雄、色を好む』の性格になっているのだ。
つまりは・・・言わずもがな。・・・・うん。まずいね。まあ・・・元気だこと。
しかも、いつも通りメルフィナ嬢はパジャマ兼バスローブがね。前が開いているのだろう。肌の感触がする。
俺も若干ね、前がね・・・いや本当に若干だよ開いてるのは。でも肌と肌が直で当たってるのよ。
もう何か・・・・気持ちいいよね。さらに、うつ伏せ状態で乗っかってるので・・・柔らかいです、ありがとうございます。
だが、ここはその感触を堪能することを我慢しなければならない。
場所がね、メルフィナの実家だからね。歯止めが効かなくなる前に何とかしなくては。
身体を横に向け、メルフィナを起こさないように少しずつ下ろしていく。
少しずつ少しずつ・・・下ろしきった。ミッションコンプリート。
ふぃ~朝から幸せだがしんどかった。とりあえず喉が渇いたため水分を補給しよう。
メルフィナを起こさないようにベットからゆっくり出て、荷物から水筒用麻袋を出す。麻袋はパンパンに水が溜まっている。、
今日もいただきます。
紐を開け、水が零れない様にしながら、少しずつ飲んで行く。
少しずつ飲んでいたはずなのに、もう半分も飲んでしまった。マジ美味いねこの水は。
「いつもありがとな、蒼子。」
小声で核に向かって言うと、核は点滅した。・・・・もう意思が有るでいいよねこれ。
「ナオヤ」
そう思っていると後ろから声がした。振り返ると目を擦りながこちらを向いているメルフィナがいた。
「おはよう、メルフィナ。」
「ん。」
「まだ眠いなら寝てもいいぞ。」
「・・・ダメ。起きる。」
眠そうにしながら、毛布の中で動いている。なんとか起き上がり、う~んと唸りながら何か思案している。
何か考え着いたのか、その後、毛布を持ちって立っている俺にかけた。
「・・・なんぞ?」
「着替えるから。」
「あ、はい。」
着替えを見られるのが恥ずかしかったらしい。
いや、向こうに居た時はあんな肌けた姿を見せたりしてたのに?今さら感がハンパないのだが。
・・・・とりあえず座って待つか。
とか思いながら、めっちゃ聴き耳は立てておいた。着替えの・・・衣擦れの音がしている。
毛布に包まれながら、衣擦れの音をBGMに麻袋に残っている水を飲む。
今日は一日良い日になりそうだ。
俺は優雅な朝のティータイム?を堪能した。
「ナオヤ、もういい。・・・なんで笑顔?」
「優雅な時間だと思ってな。」
「?・・ナオヤ、たまにわからない。」
もう着替え終わったらしく、メルフィナは俺に掛かっている毛布を取った。
メルフィナ・・・朝から素晴らしい時間をありがとう。さてと次は俺が着替える番だな。
「気にしなくていいぞ。さて俺も着替えるか。次はメルフィナが被っててくれ。」
「ん。」
メルフィナは持っている毛布を自分に掛け、椅子に座った。
「さて、着替え着替えっと。」
まあ、いつもの服に軽鎧を着けるだけなんだけどな。・・・人の家で着替えるって何となく背徳感があるよね。
などと思いながら、パンツも変えて~・・・・・・・・はい、着替え終了っと。
「さて、メルフィ・・・ナ・・・?」
「ん?」
メルフィナを背にして着替えていたのだが、何故かメルフィナはすでに毛布を取っていた。
「・・・いつから取ってたの?」
「ナオヤが独り言で『パンツも変えて~』の少し前?」
あらやだ。そんな独り言を言ってましたか。恥ずかしい!・・・じゃない!
「え?なんで?」
「見てみたかったから?」
うん、ごめん。お義兄ちゃん疑問に対して疑問で返されても分からないよ。
「え、えっと何で?」
「私だけ、見られた。不公平。」
「あ~・・・・まさか昨日の?」
「ん。」
確かに昨日、イケメン婚約者のジェスにメルフィナの身体の特徴、というかホクロやアザなどの位置を言ってやった。
不公平・・・か。まあ確かにな。俺だけ知っているというのはな。確かに不公平だ。
「ならまあ、しょうがないか?だけどな、見たいなら見たいと言ってくれ。不意打ちで見られるというのは、少し恥ずかしい。」
「ん。分かった。」
・・・分かっちゃったかぁ。そこは分かってほしくないところもあったのだが。まいっか。見られて損するわけじゃないし。・・・やだ・・少し興奮するかも・・・
「そろそろ行く。」
「了解。挨拶していった方が良いよな?」
「大丈夫。」
「え?」
「朝早いって言っておいた。ナオヤ泊まることも。」
あ、そうなんだ。今日も泊まり確定なんだ。・・・ガラさん怖いなぁ。
「そっかぁ。」
「それにお父さん、もう出た。」
「マジで?早いな。」
「ギルド職員だから。」
「ああ、なるほど。」
ガラさんは商人ギルドの上の人だったもんな。やっぱギルド職員ってのは朝早いのか。
「行く。」
「了解。ダンジョンへの荷物ってこれで良いか?」
「足りないの、向こうで買う。」
「向こうで?買うとこなんてあるのか?」
「ある。ダンジョン。ギルドの地下。」
「あ、そうですか。・・・へ?」
「ダンジョン、冒険者ギルドの地下から行く。」
マジか~。もう少し、なんかこうねぇ。冒険しながらダンジョン行くって気持ちだったんだけどなぁ。いや、楽で良いけどね。
「そっか、じゃあ行こうか。とりあえず冒険者ギルドに行けばいいんだな?」
「ん。」
メルフィナの部屋を出て、屋敷の玄関に向かう。
「あ。」
「どうした?」
「書いていく。」
玄関近くにあったメモ帳?にメルフィナは何か書いた。
「これでいい。」
「そっか。じゃあ、お邪魔しました。」
そう言って玄関から出ようとすると、メルフィナに腕を掴まれた。
「違う。」
「違う?」
「行ってきます。ナオヤ、婚約者。」
なにやら俺は婚約者だから、言うことが違うと言っているらしい。
「あ~、うん。・・・行ってきます。」
「ん。行ってきます。」
そう言い直して玄関を閉めた。この街限定ではあるが、メルフィナの婚約者だと自覚し直して、少しだけ俺の顔は熱を持った。
「ナオヤ、顔赤い?」
「・・・気にするな。」
「?」
もし本当にメルフィナと結婚したら・・・って想像してしまったのだ!恥ずかしい!
その後、適当に会話しながら冒険者ギルドに向かったが、俺はメルフィナの顔をあまり見れなかった。
次はギルドで買い物編?かな。たぶん。




