第四話 星見という名の・・・
6月最初の更新ですね。
「あれが昼に話した水の女神様アクエリス様。で、こっちがライバルの炎の女神様ファシス様で・・・・」
ただいま星見中。まあ星座鑑賞なのだが。・・・・・というか星見という名の夜警だね。
二人で馬車隊に近づく影や、モンスターが来てないか警護するのだ。今は座って休憩中。
馬車隊の反対では、マツナガさんとサラさんが警護してくれている。
・・・・・・・・・がっかりだよ!星を見ながら夜警って。
ちょっとだけ。ちょっとだけデートを本当は期待してたのに!
「それであっちが光の神様・・って、つまらなかったかな。」
こちらの顔を覗きこんでるスゥさんが目に入る。
いかん。がっかりしていたことが顔に出ていたか。
「いや、ごめんスゥさん。聞いたこと無い話だったから困惑してただけだ。」
「スゥでいいよ。私もナオヤって呼ぶから。この話って昔話だよ?聞いたこと無い?」
「あ~、俺って田舎から来てるから。」
昔話もなにも、この世界に来て日が浅いからな。何も知らんのよ。もう何でも田舎のせいにしよう。これで解決。
「へぇ~。僕も田舎出身なんだよ。ナオヤはどこから来たの?」
「俺はあっちの太陽が昇る方からだ。もうずっと遠いとこだ。」
「そうなんだ。私は向こうかな。結構暑いとこでね。みんな白の布を体に巻いて日を防いでたりしてた。」
といいながら南と思われる方向を指をさす。
「そうなんだ。かなり遠くないか?家族で来たのか?」
「家族とじゃないんだ。子供の時にね、よく知らないおじさんに連れて来られたの。」
「ん?」
「それで連れて来られたんだけど、おじさんが別のおじさん達に連れて行かれちゃって、泣いてたらマツナガが助けてくれたの。」
それって・・・・・・人攫いじゃね?いや、まさかですよね?
「あのさ、それってまさか・・・・」
「そっ。人攫いにあったらしくって。おじさんを連れて行ったおじさんは警邏隊の人だったの。」
「お、おおう。」
軽く言ってるけど、人生がヘビー級だったんですけど。こっちはビックリしたんですけど。
「どしたの?」
「いや、結構な苦労話だからビックリして・・・」
「そう?よくある話だよ。僕の場合はマツナガが助けてくれたけど、他はそのまま売られちゃうことが多いんだよ?」
・・・・・もうこの世界マジで怖い。エリーも攫われそうになったって言ってたけど、普通の子でも攫われるんだね。
「で、そんなことがあってからもう10年くらいかな。」
「へぇ。今何歳なんだ?」
「15のはずだよ。攫われた時もあいまいだから分からないんだけどね。」
「マジか。何か聞いてごめん。」
「いいよ~別に。」
あははと笑っている。スゥは明るく特に気にしてないようだ。
「冒険者にはいつなったんだ?」
「登録は去年だよ。まあ活動自体は9歳くらいかな?これならマツナガを助けられるかなって思うまで、ずっと弓の練習してたんだ。」
あの戦闘を見る限り、相当の努力を重ねたのは誰でも分かる。
9歳から活動してたか。ということは、それ以前から弓の練習をしてたんだろ?
となると、最低でも7、8歳。もしかしたら助けられてからすぐに練習していたかだ。
毎日、血の滲むような努力というのを言葉通りやらなければ、あのような腕前になるのは無理だろう。
小さい子供が助けてくれた人を助けるために・・・か。本当に良い子だ。
おれはスゥの頭に手を置いて、優しく撫でた。
「あれ?どしたの?」
「なんでもないよ。少し撫でさせてくれ。」
「うん、いいよ・・・・・なんか気持ちいい・・・かも・・・」
えへへ~と言いながら目を瞑って気持ち良さそうに撫でられている。
スゥは髪の毛が短いから固いかと思ったが、そんなことはなく柔らかく撫でやすかった。というか気持ちがいい。
昔、猫カフェなるものに行って、猫を撫でてる時にこん感じだったのを思いだした。
「お母さんとお父さんって、こんな感じに撫でてくれてたのかな?」
「覚えてないのか?」
「なんとなくでしか覚えてないの。」
まあ、5歳くらいで攫われて、その後は冒険者の手伝いをしていたんなら、あまり覚えてないのも当然だろう。
「・・・僕ね、お金がもう少し溜まったら探しに行ってみたいなって。お母さんとお父さん。」
「そうなのか。うん、いいんじゃないか?ちゃんと仲間に言っとけば。」
「マツナガ達もいいよって。むしろ心配だから一緒に行くって言ってくれたの。」
「本当にいい仲間だな。」
「・・・うん・・・」
そうか。親に会うか・・。俺が会うのはあと何年かかるだろうか。
寿命が尽きるまであと50年くらいかな。しかも英雄と言われてなければならない。
厳しい条件だが、あんなに世話になったのだ。必ず成し遂げて、俺は頑張ったって報告しないとな。
しかしどうやって英雄になったものか・・・・・・・
しばらく考えながら撫でているとスゥの身体がこちらに倒れてきた。
「す、スゥ?」
え?なにこれ?急にラブい雰囲気になったのだろうか!?
と困惑したがスゥが動かないことに気が付いた。スゥの顔を覗き込むと、クゥ・・クゥ・・と寝息が聞こえてきた。
「・・・・・寝たのね。」
なんか、最近よく俺の近くで寝る子が多いなぁと思い、座りながら夜警を続けた。
今日は満月であり、月が綺麗だ。
しばらく見ていると急に喉が渇いてきた。水筒麻袋に手を伸ばし、口に近づけ溢さない様に水を飲む。
マジで美味いな。眠気も飛んで気分爽快になる。
不思議だ。あれか?やっぱり回復薬の材料になるだけあって、水の状態でも効果が多少あるのだろうか?
などと思っていると水を飲み干してしまった。
残念に思いながら、また給水されるまで腰に着けようとすると、やけに麻袋が軽い。
もう核が無くなってしまったのかと確認すると、蒼い核だけが残っていた。
あれ?透明の核の方が後入れだろ?なんで蒼子だけ残ってるんだ?
と思い、袋の中の蒼の核を見ていると、ゆっくりと赤い色に変化していく。
っ!?
ビックリしていると、今度はまた蒼になる。そしてまた赤になる。まるで蛍のようにゆっくりと色が変わる。
そしてどんどんその変化が早くなる。まるで危険が近づいてると知らせるように・・・・。
スライムは敵の強さが分かる。ということは何かしら危険察知の能力があるはずなのだ。もし核の状態でも分かるとしたら・・・
これって・・・マズいのかも?
「スゥ。スゥ起きてくれ。」
「んみゃ・・・あっゴメン!寝ちゃってた。」
「いや、それは良いんだけど。ちょっと敵が近づいてるかも。」
「えっ!?どこ!?」
「すまん。どこかは判断できないけど、少し見まわしてくれ。おれはこっちを見てみる。」
「わかった。・・・鷹の目・・・。」
こっちも鷹の目を発動して確認する。するとスゥがすぐに見つけてくれた。
「・・・・いた。いたよ。敵は三体。でも距離がある。まだ準備する時間はあるよ。あれって・・・・アンデットだ。」
「アンデットって・・・人間の?」
ゾンビだよな。うわぃ、スゲー戦いたくない。
「うん。元は人間。たぶんモンスターに襲われたけど、食べられることはなかったんだね。」
「そうか。すぐにマツナガさんとこに行ってくれ。俺はこのままやつらのことを見とくよ。見張りだけなら出来るから。」
「了解。お願いね。」
スゥはすぐに馬車隊の裏に走った。俺は鷹の目を維持しながらアンデッド見続ける。
よろよろと遅くも確実にこっちに向かっている。人の形はしているが確実に人とは言えない状態になっている。
眼は白く濁りまっ直ぐは向いていない。頭が欠け、腕半分が骨になっている。足も変に折れ曲がり、それでも歩いている。
ヤバイ・・・吐き気がしてきた。
「「よう、見張り、ありがとな。」」
「うっす。ディルさん。ルディさん。」
大剣を持って、いつの間にか俺の隣に立っていた。
「あの、今さらですけど、どっちがディルさんで、ルディさんですか?」
「「ああ、言ってなかったな。灰色がディルだ。ルディが黒だ。」」
・・・・・見事なシンクロ喋りである。・・・聞きづらいわ!とは言えないけど。
「「で、敵はあれか?まだまだ遠いじゃないか。よく気が付いたな。」」
「ええ、偶然です。これのおかげっす。普通は蒼色だったんですけど点滅し始めて。」
水筒麻袋の中を開け、蒼と赤に点滅を繰り返す核を見せる。
「「なんじゃこりゃ?」」
「俺を殺しかけたスライムから取った核っす。」
「「見たことない色だな。かなりのレアものか?」」
レアとは、あれのことだろうか?女神様が教えてくれた9個以上の核を一緒にしたやつ?
だとしたら違う。大きさは普通のスライムだったし。
「よく知らないんです。逃げても逃げても追いつかれて大変でした。」
「「なんじゃそりゃ?普通逃げたら追いかけてこないし、追いかけてきても逃げ切れる速さしか出ないはずだぞ。」」
「ですよね。でも事実っす。一応、蹴り二回分で体は砕けたからスライムは確実ですよ。」
まあ、実際には殺されたし、蹴りというより空中からスライムの上に着地する状態だったけど。
「「なら、スライムだろうな。まあ、レアものだろうから大事にしろよ。」」
「でも核ですから自然に消えるんでしょ?大事にしようがないですよ。」
「「そりゃそうだ。がははははは!」」
豪快に笑いながら俺の背中を二人で叩かないでほしい。かなり痛いのだ。
「すまん。様子はどうだ?」
マツナガさんが来てくれた。
「大丈夫です。まだまだ距離はあります。スゥさんとサラさんは?」
「スゥには他に敵がいないか見てもらっている。サラには商人と御者に説明をしに行ってもらった。」
手回しがいいなあ。さすがベテランさんですね。
「ありがとうございます。」
「いや、こちらこそ礼をいう。こんなに早い段階で見つけてくれてありがとう。おかげで余裕が出来ている。夜の奇襲は、何年この仕事をしても慣れることはないからね。」
「「がはははは、そうだな。ナオヤ、あんがとな!」」
「いえそんなことは・・って痛いってば!」
またバシバシと叩かれる。お礼を言われるのは嬉しいけど、痛いってば。
「準備終わったわ。」
「周りに他には敵はいなかったよ。あれだけみたい。」
サラさんとスゥがきた。
「この距離なら、私の魔法が一番ね。でも見えにくいから・・・スゥ、補正お願い。」
「了解。距離200。・・・あと・・・」
スゥがサラさんの後ろに回って、距離と方向を微調整している。
「うん。そんな感じ。」
サラさんがぶつぶつと詠唱を始めた。
「・・から・・れし矢よ。行きなさい。ホーリーアロー!」
唱え終わると持っていた杖の先から、光の矢が十本程飛び出していく。
それは綺麗な放物線を描き、アンデット達の顔や体に当たった。
当たった光の矢は。当たると同時にアンデットを覆うように光を増し、アンデットの体を灰にしていく。
そこに残ったのは、アンデットの灰と生前着ていた装備品などが残った。
「おお。スゲー。」
・・・・・あとで教えてもらおう。
「まあ。あれくらいわね。さ、アンデット達の装備品を取りに行きましょう。遺品としてギルドに提出するからね。」
「「そっしゃ、行ってくるぜ。」」
「ちゃんと警戒していけよ。」
「僕を信用してよ。警戒しなくても周りにはいないよ。」
四人が笑いながら装備品を取りに行く。やっぱり凄い人たちだ。
俺は水筒麻袋を確認すると、蒼子の点滅は治まっていた。
この蒼子のおかげで今回は早めに発見でき、尚且つ余裕で敵を倒せたと言って良いかもしれない。
「ありがとな、蒼子。」
麻袋の中の核にそういうと一瞬青く光った。・・・・こちらのいうことが分かる?
「「お~い、ナオヤもこっちに来い。こういう場合の弔い方を教えてやる。」」
「あ、は~い。」
俺は核への疑問を後にして、みんなのところに走った。
というわけで、主人公の魔法が増える予定。




