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記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第一章 『目指すは英雄』
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第三話 冒険者ギルド

初めての街に少しドキドキする。


どこの建物も基本は木の骨組みにレンガか石造りに見える。物珍しいので観光気分で歩いてしまった。通りには少しずつ屋台や雑貨屋などが増えてきた。中心部に近いのだろうか。賑やかになってきた。美味そうな匂いが立ち込めてもいる。


「腹、減ったな。」


見渡すと串焼き屋が目に留まる。大きな肉が油を滴らせて焼かれている。


・・・・買うか。貨幣価値もついでに確かめよう。


「おっちゃん、この肉の串焼き頂戴。いくらだい?」

「いつもは2銅貨だが、高くても味が良い肉が入ってな。今日は4銅貨になっちまった。高くてすまんな。」

「美味けりゃいいさ。これで買えるだけお願いするよ。」


俺は革袋から1枚の銀貨を取り出した。


「おまえさん、25本も食えるのか。串焼き本来の美味さが味わえるのは今日中だぞ。」


なるほど。銀貨1枚は銅貨100枚ってことかな。


「いや~、これから冒険者ギルドに行くんでね。土産も兼ねてるんだ。」

「そうか。ちょっと待ってな。」


おじさんは手際よく紙袋に串焼きを入れていく。


すげーなこの紙袋。油が全く滲まないぞ。どういう紙だよ。


「ところでおじさん、冒険者ギルドってここから近い?」

「この道抜けて中央噴水広場の近くじゃねえか。なんだ初めて行くのか?」

「遠い田舎の出身でね。出稼ぎも兼ねてんだ。『初めて行くところには手土産を持って行け』って親に教育されててね。」

「良い心がけだな。じゃあこの街にも初めて来たのか。ようこそ、始まりの街、フォートレスへ。」


そういえば街の名前って今わかったな。


「ありがとうございます。でも何で始まりの街なんですか?」

「それは冒険者ギルドに聞いてみな。希望が持てるぜ。」


笑顔で串焼きの入った2つの紙袋を渡された。


「うっす。ありがとうございます。」


俺はお礼を言って広場に歩き出した。おつりが無いってことは、やはり銀貨1枚で銅貨100枚の価値か。





通りを抜けると、中央に噴水のある広場に着いた。中央噴水広場、名前の通りか。


「見渡せばすぐ分かるって言ってたが・・・あれか。」


すぐにわかった。基本的にこの街の建物は屋根がレンガの色、つまり茶色の屋根が多い。

そんな中に真っ赤な屋根があるのだ。よく目立つ。それに確かにデカそうだ。他の建物が3階建てくらいの中、あれはもっと高そうだ。


「串焼き・・・温かいうちに行かなくては。」


紙袋から1本の串焼きを出し、肉を一噛み。口のなかで肉から肉汁が溢れ出す。

肉汁というのは基本的に油のはずだ。だが一切肉臭くもなく、しつこく口に残ることもない。

なんか慣れ親しんだ味もする気がするのに分からない。肉自体も程良い硬さで満足感を誘う。


なにこれ。マジで美味い!!何の肉か聞けば良かった。またあのおじさんを見つけたら買いに行こう。・・・もう1本食べよ。


袋から串焼きを出して、赤い屋根の方向に歩き出した。




結局あれから着くまでに4本も食べてしまった。美味かった~。


今俺は冒険者ギルドの扉の前にいる。5階建ての建物のようだ。正直開けるのが怖い。

だって来るまでに筋骨隆々の男たちと何人もすれ違った。中には細いけど高いであろう鎧を着た美青年とかもいたけども。

場違い感がするよ。・・・・・でもここが今考えられる英雄への近道であるのは間違いないのだ。

勇気を振り絞り、重厚な扉を開けた。そこには・・・・・・・何故か赤い髪の可愛いメイドさんが立っていた。


「ようこそ冒険者ギルドへ。お食事でしょうか?」

「えっ?」


お食事?確かにテーブルと椅子が並んでいる。レストランなのか?


「それとも冒険者としてのご登録でしょうか?」

「あっ、それです。冒険者として登録したいです。」

「では、窓口までご案内致します。」


少しポカンとしてしまった。重厚な扉とメイドさんとのギャップが激しすぎる。後ろを向いて歩きだしたメイドさんのあとについて行く。


なんか見られてるかな?そりゃそうか。シャツにジーンズ、革のベルトに木刀だもんね。とても冒険者になるようには見えないよな。


入口から右奥まで歩いてきた。木枠の窓口が見えるが全てしまっているようでカーテンで中が見えないようになっている。立て札がある。えっと『緊急のためしばらくお待ちください。』とな?


「申し訳ありません。只今、立て込んでおりましす。しばらくお待ちください」


メイドさんに頭を下げられてしまった。


「えっと、どれほどかかりそうですか?」

「夕方まではかかるかも知れません。」


夕方って、今から何時間だ?流石にそんなに待ちたくはないなぁ。・・・・しょうがない。グルタさん、早速お名前を使わせて頂きます。


「グルタに紹介されたんですけど。」

「えっ?!守備兵長のグルタさんですか!」


えっと、逆に問いたい。グルタさん守備兵長なのかい?守備兵長って、ちょっと偉いんじゃないの?何で門番やってんの?


「あの守備兵長のグルタさんかは知りませんが、門番をやっていました。」

「・・・間違いないですね。あの方は度々門番とかやりたがる方なんです。少々お待ち下さい。係りの者を呼んできます。」


メイドさんが小走りで行ってしまった。グルタさん、凄い人なんですね。


少しすると、ビン底メガネで茶髪をゴムで雑に纏めただけの後ろ髪、如何にも事務員してますな服装をした女の人をメイドさんが連れてきてくれた。でもこの女の人、メガネをはずすと美人な気配がビンビンいたしますよ。ビン底だけに・・・・・・・・おい誰だ。今サム~とか言った奴!





「お時間かかり申し訳ありません。こちらが受付のユーナと申します。」

「ゆ、ユーナと申します。よろしうお願いしまふ。」


噛んじゃったよ。顔が赤くなっていく。可愛らしいな。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」

「ユーナは、あがり症ですが優秀な子ですのでご安心ください。」


ええ、ご安心いたしますよ。可愛らしいですもの。


「ではユーナ、頑張ってね。」

「は、はい。頑張りまりゅ。・・・舌が痛いです。」


メイドさんが苦笑いをしながら行ってしまった。


「あの、まずこちらへどうぞ。お座り下さい。」


空いてるテーブルに行き、向かい座った。


「では、最初に登録料が50銅貨かかりますが、よろしいでしょうか?」


お金がかかるのか。革袋から銀貨を取り出した。


「では、これでお願いします。」

「ありがとうございます。こちらがお釣りの50銅貨になります。あと、こちらの紙に必要事項を書くのですが、まずこのペンを少し持って下さい。」


うん?なんかペンの上部分に水晶があるな。


「なんですか、このペン?」

「これは持った人の魂を解析をして、紙に書いてある質問事項を自動で書いてくれるんです。」

「ほう、便利なものですね。」

「便利なんですが、書くときに目をつむらないと自動で書いてくれないのです。しかも質問事項を読み取って勝手に書いてしまうので、本人は質問事項をしっかり確認しないと大変なことに。」

「そ、それは厄介ですね。」

「でも今回は名前とレベルとステータスだけですので安心して下さい。」


え、レベルとステータスを書くの?


「あの自分のレベルとか知らないのですが。」

「ご安心ください。ペンが解析して自動で書きますので。」


あ~、魂を解析って言ってたもんね。


「そろそろですね。では目を閉じてください。」


書く姿勢を保ちながら目を閉じた。確かに勝手に書かれているようで手が動いている。・・・・・・・・・止まったな。書き終わったようだ。


「目を開けてもいいですよ。では確認いたしますね。」


なんて書かれてるんだろうか?


「ナオヤ村出身で、お名前は・・・ナキリさんでよろしいですか?」


ん?ナオヤ村?


「いえ、ナオヤが名前ですね。」

「あれ?ではナキリさんというのは?」

「苗字ですね。」


あれ?黙っちゃったよ?何か悪かったのか。


「すすすすす、すいませんでした!!貴族の方とは知らずに!!」


頭をテーブルに擦り付けそうな勢いで謝り出した。


「ちょっ、やめて下さい。どうしたんですか?!」

「だって、だって、苗字なんてお持ちだなんて貴族様達か、それ以上の身分の方じゃないですか?!」


・・・マジかい。ああ、そういえば日本も昔は苗字が無いって言ってたな。あるのは武家とかで、それ以外は○○村のサスケ、的な感じだったっけ。


「ご、誤解ですよ。俺は貴族じゃありませんよ。苗字だってそんな意味があるなんて知りませんでした。」

「で、では何故村の名前が出てないんですか?」

「俺の村には名前なんて無かったですから。」


ということにしておこう。


「そんな・・・村に名前が無いなんて。」

「ありえなくは無いんじゃないですか。モンスターから逃げて生き残った人が集まっただけも村かも知れませんし。とりあえず俺は村の名前を知りません。」

「そ、そんな」


まだ納得しないか。しょうがない。


「もし俺の家が貴族だったとして詮索しない方がよいのでは?藪から蛇かもですよ。」

「・・・・・では、次の確認をしましょう。」


切り替えたか。頭のいい人だな。


「レベルは3ですね。何かモンスターでも狩っていたんですか?」

「村を荒らすやつを追っ払ってたくらいですね。」


異世界に来てスライムしか倒してないけどね。なんで3?


「なるほど。ステータスは・・・・敏捷性と魔力値、幸運度が高いですね。」


幸運度が高いか。女神様のおかげですね。


「これなら盗賊や魔法使いになれますよ。」


どういうことだ?


「えっと、ここって冒険者ギルドですよね。」

「そうですよ。」

「冒険者以外にもなれるんですか?」

「大別して冒険者と言われるものですが、皆さんステータスや本人の希望によって職が違いますよ。」


つまりなんだ、同じ会社名だが事務部だ総務部だと中の仕事が違うみたいなもんか。


「職を決めておくと覚えるスキルや威力が違ってきますよ。」

「スキルを覚える?勝手にですか?」

「見て覚える、のは当然ですが、レベルが上がると急に思いつくという感じのようですよ。」


そこはゲームみたいなのね。異世界のルールみたいなものか。


「威力の例えですが、魔法使いが魔法を使うのと、剣士が魔法を使うのでは大きな違いが出ますよ。」

「どれほどの違いが出ますかね。」

「そうですね~魔法使いが10だとすれば、剣士は7あれば良いですね。」

「なるほど。じゃあ魔法使いが剣士のスキルとかを使おうとすれば威力は?」

「当然、魔法使いは7、剣士は10ですね。」


まあ、そうなるよね。


「一応、冒険者ギルドなだけに冒険者という職もありますよ。不人気職ですが、必ずどの街の冒険者ギルドにも一定数います。」

「なぜ不人気なんですか?」

「スキルの威力がどれも3~6といった所でしょうか。しかもスキルはレベルが上がっても、ほとんど覚えることがありません。」


そ、それは痛い。


「メリットは、低いレベルでもスキルを教えてもらえれば、短期間で覚えて、何でも使えることでしょうか。」


それでも教えてもらえなければ意味が無いし。器用貧乏ってやつだな。というか何で一定数いるんだよ。


「あの、なぜ一定数いるんでしょうか。」

「本人のステータスが低く冒険者以外なれないか、英雄達のファンだから。が大半ですかね。」


英雄のファンとな?


「どういうことでしょうか。」

「実は、英雄と呼ばれる方の数人の職が冒険者だったんです。ですので、『俺も冒険者から英雄になってやる。』と言っていた方もいました。」


あ~それは憧れるよな。弱い職から強くなって最終的には英雄ですもんね。夢があるよねぇ。


「あの、職って後で変わることは出来ますか?」

「可能ですが、変わるときはレベルが最低10必要ですし、変わったときレベルが5程落ちますよ?」


まあ、リスクは当然だな。むしろその方が良くないか?


「その方が良くないですか?また10に上がるまでにスキル覚える可能性がありますよね。」

「まあ、そうですが。・・・・あまりおススメ出来かねます。噂ですが魂を変える行為と言われていて寿命が縮むと言われてもいます。」


なにそれ怖い。それはリスクが大きすぎる。しかしなぁ、弱い職から英雄なんて夢が止まらないでしょ。


「俺も・・・・俺も冒険者って職になれますか?」

「よ、よろしいのですか?ナオヤさんなら盗賊にも魔法使いにもなれますよ。」

「良いんです。どうしても職が変えたくなれば変えますよ。」

「で、でもその場合は寿命が。」

「ご心配ありがとうございます。まあ男が決めたことです。そう簡単に変えませんよ。」


・・・何か可笑しなことを言っただろうか?ユーナさんの顔が赤い。・・・・可愛い。


「で、では冒険者で登録しますね。少々お待ち下さい。」


走って行ってしまった。ふむ、結構動きが滑らかで速いけど冒険者とかやってたのかも知れないな。


「お待たせしました。」


早いな。ちょっとビックリしたよ。


「こちらのカードに手を添えて下さい。」


言われるがままに手を添えた。んむ・・・なんか力が抜ける。


「出来ましたよ。見て下さい。」


俺の名前と職、レベルが書かれている。あとはスキル欄?


「ちゃんと名前と職。レベルは書かれてますか?」

「はい。書かれてますね。このスキル欄って魔法とか剣技ですよね?結構プライベートなことでは?」


なんの魔法や剣技が得意とかってことだろ?あまり見られたくないな。


「そこは大丈夫ですよ。本人しか見れない使用になってますから。私のを見てみてください。」


んん~本当だ。何も見えないというかスキル欄の場所がポッカリと空いている。


「凄い技術ですね。」

「そうですよね~。このカード自身の魔法のようですが原理がわかりません。」


首を傾げている。この子面白いな。


「では、これで登録は終わりです。何か質問はありますか?」


・・・・ああ。大事なことを聞かなければ。


「三つ聞きたいことがあります。」

「何でしょうか?」

「戦える魔法を教えてくれるところってありませんか?」

「当ギルドでよろしければ、闘技場で毎月魔法の教えがありますよ。次回は明日の予定です。少し高く2銀貨ですが・・・・」


ラッキーだな。毎月のことが明日なんて。


「よろしくお願いします。」

「承りました。では明日、2銀貨を持ってお昼までに当ギルド前に来て下さい。乗り合いの馬車で闘技場まで行きますので。」

「了解しました。では、次、適当な服や装備が欲しいのですがオススメを教えて下さい。」


結構切実だ。パンツとか服、剣とか欲しいもの。


「あの、荷物とか宿屋に置いてから来たのでは無いのですか?」


尤もな質問だね。


「この街に来る時にモンスターに襲われて荷物とか無くなりました。」


ということにしておく。じゃないと不自然だしね。


「それは大変でしたね。では装備品など当ギルドの3階で買うのはどうでしょうか?服もありますし、価格も良心的です。質で騙されることは絶対ありませんよ。」


まあギルドで騙されたら信用問題ですよね。


「もし心配でしたらお付き合い致しますよ?」

「良いんですか?」

「はい。朝のラッシュでは無理ですが、それが過ぎたら手は空きますので。」


ラッシュ?なんてあるの。冒険者の依頼とかの手配かな?


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「いえ、ギルドの財政も潤いますので。」


商売上手ですね。


「では、最後にオススメの宿屋を教えて下さい。」

「オススメですか~。予算は?」

「1か月30銀貨で収まれば。」

「30銀貨ですか?!あの高くないですか?」


30銀貨って高いの?


「ナオヤさん、もしかしてですが、あまり貨幣価値が分かってませんね?」

「よくお分かりで。」

「普通、冒険者は宿屋の代金を安く抑えるものなんですよ。先程の予算を宿屋で言ったらぼったくりに遭いますよ。」

「・・・ははは、ここで話しておいて良かったです。本当に。」


ユーナさんが地図を出しながら


「では、こちらの宿屋なんてどうでしょう。素泊まりですが。1か月14銀貨です。共同ですがお風呂にも入れますし、有料で洗濯をしてもらえますよ。」

「そこにさせて頂きます。」

「じゃあ、受付の人に冒険者ギルドのユーナからの案内ですって言って下さい。」

「はい、そのようにさせて頂きます。」


なんかユーナさんにスゲー世話になったな。明日もお世話になるけどね。


「他に何か問題ありませんか?」

「ないです。ありがとうございました。あの、よろしければこれ皆さんで食べて下さい。」


俺は持っていた来ていた紙袋を2つ渡した。


「なんですかこれ?」

「来る途中の屋台で買った串焼きです。美味しいので皆さんで食べて下さい。」

「ご、ご丁寧にありがとうございます。職員で頂かせて頂きます。」

「はい。では本日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


入口で案内してくれたメイドさんが来てくれて、裏口に案内してくれた。こちらからの方が宿屋が近いそうだ。最後に二人に一礼して宿屋に向かった。


「あっ、なんで始まりの街って言われてるか聞き忘れた。」


ちょい長くかけた。


誤字が酷いかも。

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