第三十一話 メイド
お待たせしました。
「あ~~~~~疲れた~~~~」
疲れた。マジに疲れた。今日だけで三回死亡かぁ。こっちに来る前は、死ぬ~とか言ってバイトしてたけど。こっちは実際に死んでしまうからなぁ・・・・本当によかったよ。女神様にお願いしておいて。
「ありがとう女神様。あなたのおかげです。」
さて、まずはリズさんの無事の確認だな。・・・・・うん、寝顔が素敵です、大丈夫そうだ。
次は・・・この二人をどうしようか?見事にノビてるから、ほっといて良いかな。
「問題は屋敷の中なんだけど・・・あと数人いたよね・・・」
そう言えばガストさん達と話してる時に警邏隊の犬がなんちゃら言ってたけど、要はスパイってことだよな?
さっきニテンに殺された二人を見る。
こいつらのどっちかとかじゃ無いことを祈ろう。
「とりあえず壁を消してから。・・よっと。」
自分で作ったウォールを消して、扉を開け中を確認する。
男達が倒れている。・・・もしかしなくてもスパイさんがやったんだろうな。男達の確認すると息はあった。
・・・倒した人はどこだ?
そう思うと中から、どたばたと音がしていた、
「まだ戦ってるのか!?」
急いで音のする方に行き物陰から確認すると、メイド姿の女性と半裸の男が争っていた。
「てめ~!よくもやってくれたな!!絶対にヤってやる!」
「来ないでください!!」
部屋の角に追い詰められて、メイドは逃げられない状態になっている。そこで半裸の男は下を脱ぎ、メイドを襲おうとしている。
・・・・・全裸で襲うってある意味勇気がいるが・・・まあこれは・・・ギルティだよな?
メイドが逃げようとしてバランスを崩し倒れた。すかさず男はメイドに覆い被さった。
これ以上はアカン!
メイドを助けようと物陰から飛び出した。そのとき彼女は・・・・・・・嗤っていた。
「せいっ!」
「あがっぁ!!」
「っひ!」
彼女は覆い被さった男の股間に綺麗に膝蹴りを浴びせたのだ。それを見た俺も思わず膝を内股にして股間を守ってしまった。
・・・狙ってやったのか・・・なんて恐ろしいことを・・・
彼女は悲鳴をあげた俺の存在に気付いたようで、こちらを見た。
「次の相手はあなたですか?」
今の事は、まるで何も無かったかのように俺を見て笑顔だった。
いかん!すぐに弁明しなければっ!
「ちょっ、違うよ!俺は助けに来た方でっ!」
「・・・へぇ、そうですか。なら証を・・・」
「証っ!?証なんて無いよっ!」
「じゃあ、駄目ですね。」
凄くいい笑顔で少しずつ近づいてくるメイド。・・・・怖いよ!
「あっ、あんたこそ何者だっ!」
「あたし?あたしはメイドですよ?ちょっとココと所属は違いますけど。」
「メイドは分かる。ってココと所属が違う?」
「あら、喋りすぎちゃいましたか。では、あなたは死んでくださっ!?・・・こんな時にっ。あなた、少し待ってなさい。」
まるで何かと話すように頭に手を当てて、ぶつぶつ言い始めた。・・・・逃げよう。とりあえず。
「あっ!」
思ってからは早かった。玄関の方へ走り出した。後ろで声がしたが気にしない。
玄関付近に走って行くと今度は何か小さい声が聞こえてきた。女の人?
玄関に辿り着くと、さっき気絶していたはずの一人の男が裸の女の人を担いで出て行こうとしていた。
「・・・けて・・・」
さっきの声はこの人か!
「待てコラ!」
「やべっ!」
男は女を担いだまま、玄関を出て走りだした。
「この糞野郎が!ウォール!」
男は俺が叫んだ魔法に警戒して走りを緩めたが、何も起こらなかったことに安心してまた走り出した。
「はっ!何も起こらねぇじゃっっ!?なんだこりゃ!?」
男の足が突然沼のようになった地面に沈み始めた。抜け出そうと足搔くが、抜け出そうと動こうとすると急に引っ張られる感覚になる。
「くっそ!この!!」
「・・・ダイラタンシーってやつだよ。俺特製の沼。」
「はぁ!?だいらたんしいって何だ!」
まあ、俺も詳しい原理はよく分からん。
なんでも細かい粒子と水分がある程度の状態で混ざると出来るものらしい。これは通常時、液状化しているが一定の圧力が加わると急に個体になるのだ。つまり逃げようと力を入れれば入れる程、固くなるのだ。
テレビで見ていると面白かった。大量に作ってその上を走る。しかし少しでも沈むと抜け出せなくなる。子供の頃に片栗粉と水を合わせて作って遊びすぎて怒られた。
なぜウォールでこれが出来たか。まあ、イメージで何でも出来るってのを念頭に。
オークを倒した時、サラサラした砂が出せたので思いつきだけはしていたのだ。これはイメージで水分を無くしてこうなった。じゃあ逆は?ってね。
まあ、本当に出来るとは・・・・思ってたけど。魔法だし。魔法って不思議な力だろ?出来ないことなんて無いと思ったら、やっぱり出来たのだ。
そう思っていると急にめまいがして眠気が。
「あ・・れ・・?」
何で?まさか、魔力切れか!?
「へっ、へへへ、やったぜ。魔力切れか?眠そうじゃねぇか。」
「う・・・うるせぇ・・・」
「まあ、こんな戦いの後じゃなぁ。しかしダストンの野郎がいねぇが。あの野郎、俺達を置いて逃げやがったのか?」
「・・な・・・に・・」
ダストンとニテンが倒れてるはずの方を見る。確かにニテンはいるがダストンはいない。
「そん・・・な・・・」
眠気に耐えながら、よろよろとリズさんがいるはずの樽に歩き出した。
何とか樽に辿り着き、中を確認すると
「良か・・・た・・・」
リズさんが寝ていた。安心すると更なる眠気に襲われた。
「へへ、お前が寝てるうちにトンズラさせてもらうぜ。」
男はそう言いながら沼から出かかっていた。
「くっ・・・」
もう駄目かと思ったとき、後ろから誰か走ってくる音がした。
「後は任せて。」
俺の肩に軽く手を触れ、横を駆け抜け男に向かっていく。その後ろ姿は先ほどのメイド服だったが髪型が違う?
「て、てめーは!?」
「お仕置きです。」
メイドの言葉に安心し、しかし疑問を持ちながら俺は樽に体を預けて眠った。
う~ん、短い。最近はキリがいいと2500~4000文字くらいになりますな~




