表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第一章 『目指すは英雄』
22/62

第十九話 報告2

最近、忙し過ぎ

俺は鬼ごっこのせいで若干だが息が上がっている。それに対してメルフィナは平気そうだ。

これがレベル差なのだろうか。


「ふう。さて、ギルドに着いたぞ。どうすりゃいいんだ?」

「受付に行って門番に話したことを話す。」

「全く同じで良いの?」

「ん。あとプレート渡してお金もらう。」

「了解。」


ギルドの扉を開けると、いつも通りミレイさんがいた。今度は突然現れて、メルフィナを抱きかかえて撫でてることはなかった。


「お帰りなさいませ~。ナオヤさん、メルちゃん。」


メルフィナは、ミレイさんを警戒して俺の後ろにすぐに隠れた。


「どうもです、戻りました。」

「ただいっ・・・!?」



後ろで口ごもったメルフィナを見るとそこには・・・・ミレイさんがメルフィナの後ろに立って撫でている。


「ふぁっ!?ふ、双子!?」


先ほどまでミレイさんが立っていたところを見る。誰もいなかった。


・・・ウソだろ!?一瞬で移動したのか!?


「あの、ミレイさん・・・今・・のは?」

「何がですか?」

「いや、何がですかじゃなくて・・・いえ、いいです。」


笑顔で『何がですか』って・・・・考えられるのはあれか?武術系のアニメや漫画の縮地ってやつか?それともテレポート?


「えっと、依頼の達成状況を報告しに来ました。」

「でしたら奥の受付ですね~。そちらへどうぞ~。」

「あの・・・メルフィナを・・・」


ニコニコしてるだけで案内はしてくれないんだね。そしてメルフィナを抱きしめ続ける。離すつもりもないんだね。


「えっと、メルフィナ、行って大丈夫?」

「大じょう・・・・」

「夫ですよね~。」


大丈夫ではない、とは言わせないらしい。

メルフィナの目が見開いて、助けてと訴えている。だが俺には無理だ。メルフィナには見えていないのだ。ミレイさんの笑顔の威圧が。連れていくな、と言っている。


「えっと、長くならないように行ってくるよ。」


ああ、そんな捨てられた猫みたいな目しないで。マジで。


そんな目を振り切って、俺は受付に向かった。


「すいませ~ん。」

「は~い。」

「依頼の報告っす。あ、ユーナさん。」

「お疲れ様です。ナオヤさん。今日はレベル的に無茶をしたようですが、無事に帰って来てくれて良かったです。」

「・・・なんか、すいません。」


労いの言葉の後、ビン底メガネをくいっと上げて書類を用意している。


仕事が出来ますって感じだなぁ。初めて会った時とは違う印象だ。ミレイさんも仕事出来るって言ってたし。慌てなければ本当に出来る人のようだ。


「では、こちらにサインとモンスターを倒した証を入れてください。」


トレーと書類を渡された。書類にはメルフィナの名前と俺の名前で、オークの探索と討伐ってことで依頼を受けている。


「えっと、俺の名前だけで良いんですか?」

「はい、大丈夫ですよ。言いにくい話ですが、同行者が亡くなられる場合もあるので。」


そうだ。死ぬことがあるのだ。俺は今日それを痛感したのに。


肉の焼ける臭いを思い出し、指が震え、吐きそうになる。


「だ、大丈夫ですか?」

「すいません。仕事中のことを思い出して。・・・今日、帰りに門番さんの詰め所に行きました。」

「それは・・・・お気の毒に。・・・被害者の方は。」


門番さんの詰め所。この一言で察してくれたようだ。きっと何度もあることなのだろう。今日あったことを話して、オークから取ったプレートをトレーに置いた。


「・・・ナオヤさん・・・お疲れ様でした。」

「いえ・・・ありがとうございます。」


その一言だけで救われる気持ちだ。


ユーナさんがトレーの上の証を受け取って、70枚の銅貨を数えながら置いている。


「68、69、70。ですね。お受け取りください。」

「はい。確かに。」


35枚の銅貨を俺の麻袋に入れ、もう35枚を別の麻袋に入れた。


「そういえばメルフィナさんは?」

「・・・あそこでミレイさんに捕まってます。」


指を刺した先には、メルフィナを抱きしめて撫でているミレイさんがいる。


「なるほど。いつものこと・・いや、いつも以上ですね。」


いつものことじゃなく、いつも以上なんだ。俺がメルフィナを背負ってた時は、こんな仲のようには見えなかったのに。


「ミレイさんにとってメルフィナさんは、受付時代の最後の新人冒険者なんですよ。だから思い入れが強くって。」

「受付?ミレイさん受付してたんですか?」

「はい。」


受付って・・・・・動きが受付より確実に冒険者なんだが。


「それにレベルが上がると、冒険者は他の街に行くことが多いですから。そういう意味でも最後の人なんです。」

「ああ~可愛い教え子、ならぬ自分が登録した最後の人。そりゃ~可愛いかもですね。」

「そのようで。メルフィナさんの見た目が歳より少し幼いので、1人で頑張ってる妹のようだと言ってました。」

「あはは、分からなくはないです。」


うん、分からなくはない。むしろ、ある程度だが身の上話も聞いたし、俺も妹のように感じてはいる。甘えさせてやりたい。え、朝の仕打ちは何だって?妹とは!兄に遊ばれるものだろ。色々な意味で。


「それに今日は特別だと思います。」

「え?」

「メルフィナさんってパーティに入ったのって初めてなんですよ。」


マジで?普通にパーティでの戦い方とか知ってる風だったけど。


「そうなんですか?慣れてる感じがしたんですが。」

「いえ、これが初めてですよ。単独でいつも行かれてましたし。集団で戦う勉強はしていたようですが。」


勉強か。本とか呼んでたんだろうな。本の代金で食費が無くなるくらいだからな。


「勉強はしていたのですが、気を許せる仲間がいなかったようで。」

「まあ口ベタですからね。」

「あはは・・・まあそういうことですかね。」

「なるほど。ミレイさんも安心してテンション上がってると。」

「そのようで。ナオヤさん、これからもメルフィナさんのこと、よろしくお願いします。」

「うっす。まあメルフィナ嬢がこれからも俺と組んでくれればですが。」

「ふふっ、そうですね。・・・・ところで、あれは・・・」


ユーナさんも気がついたようだ。メルフィナが俺に対して『おい、話が終わったなら早く助けに来いや!』的な視線に。


「何したんですか?」

「ミレイさんに捕まったのを見捨てて、こちらに報告しにきました。」

「そ・・れは・・なんとも。しょうがないような・・・」


ユーナさんも無表情ながら、表情のあるメルフィナが分かるようだ。

2人で苦笑いをしながらメルフィナを見た。『早く!早く、来い!』って視線になってる。


「これって放置しとけば、どうなりますかね?」

「か、かわいそうなことを・・・・・ちょっと気になりますね。」

「ですよね。」


少し雑談しながら2人でメルフィナのことを観察した。するとどうだろうか、今では『た、助けてください。』という視線に変わっている。


かっ、可愛いな!布団に包まれて動けなくされた猫のようだ。


「か、可愛いですよ。ナオヤさん!」

「そうっすね!ユーナさん!」


と言いながら2人で楽しんでいると、遂には『助けないと・・・泣く。』という視線に変わった。


「きゃー!可愛さ最高潮ですよ、ナオヤさん!!」

「そうっすね!ユーナさん!!」


やっぱり可愛かった。そして観察を続けた。





「いや~堪能しましたね、ユーナさん。」

「そうですね。でも、もう本気で泣きそうですので、やめましょうか。」


メルフィナは、プルプル震えているように見える。ミレイさんは相変わらず笑顔で撫でている。


ミレイさん・・・仕事はいいの?


「そっすね。さて明日も頑張りますかね。」

「はい、頑張ってください。くれぐれも無茶しないでくださいね。」

「うっす。ありがとうございます。では。」


笑顔でユーナさんと別れ、メルフィナを迎えに行く。


「ミレイさん、報告が終わりましたので、メルフィナ嬢を離してくださいな。そんなっ!?って顔しないで下さいよ。」

「しょうがないですね。じゃあ、メルちゃんお返ししますね。」


メルフィナが解放された。小走りで俺も元に来た。


「逝く。」

「へ?げゥっ!!」


俺のボディに鈍痛が!!メルフィナの拳が俺の腹に!


「途中から楽しんでた。」

「き、気が付いてらしたのね。」

「おしおき。」

「も、申し訳ありません。」

「これで許してあげる。」


目の前に拳が迫ってる。


ふっ、この漢ナオヤ!甘んじて受けよう!・・・・・避けられないからね。


「ゴゥふっl!!」


メルフィナ嬢の拳で、俺は空を舞った。


エリーの時も思ったが凄いな、この異世界の少女達は。拳の力で人間を飛ばせるとは。


そう思いながら俺の体は回転し、顔から床に落ちた。


今回も短くて申し訳ない。でもキリが良いとこにすると、

どうしても3000~4000になってしまう。たぶん次回もそのくらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ