第十八話 報告
短いけどキリが良かったので。
空が赤みがかったころ、俺達は街に着いた。
「さて、まずは門番さんに話すだったよね?」
「ん。」
初日以来の門番さんとの会話かぁ。何か門番さん達の雰囲気って苦手なんだよなぁ。威圧感があって、あの時のことを思い出すし・・・・・・ああ、鬱になりそう。
深いため息を吐いてから気を引き締めた。
「よし、行きます。」
「いってらっしゃい。」
「・・・付いてきてくれるよね?」
「1人で良いのでは?」
いや、確かに事情だけ話すなら、そうだけども。
「初めてのことだから来てほしいかなって。」
「・・・・・・・・しょうがない。」
メルフィナは腕を組んで唸りながらも了承してくれた。
「よろしくお願いしやっす。」
「あとでデザート食べたい。」
「・・・了解。」
まあ、デザートで何とかなるなら、しょうがないか。
門番さんに声をかけた。
「すいません、ちょっとよろしいですか。」
「ん、なんだ。」
「えっと、オークに襲われたと思われる人の~・・・・何て言えば良いんだろう?」
「遺品。」
「そう、遺品を持ってきました。」
ありがとう、メルフィナ。
門番さんが俺の背中の血だらけのカゴを確認している。
「そうか、ご苦労。詰め所で話を聞くからこっち来い。」
「うっす。」
さすが門番もとい守備兵。兵だけあって態度が怖いっす。
小さい建物まで来た。なんか交番みたいだね。
「兵長殿!オークに襲われた者の遺品を持ってきた冒険者2名を連れてきました!」
「・・・良し。入ってこい。」
「入れ。」
扉を開けてもらい、メルフィナと中に入った。あれ?兵長って確か・・・・
「グルタさん?」
「む、君はあの時の子か。元気だったかね。」
「はい。グルタさんのおかげで、その日のうちに冒険者になりました。ありがとうございます。」
あの時、時間が掛かったら次の日に回されてたかも知れないし、リズさん達には合わなかったかも知れないから感謝している。
「そうかそうか。君は弱そうだったからな。正直なれるかどうかも心配だったんだ。」
「弱そうって酷い。って、なれないこともあるんですか?」
「そりゃあるさ。適性が危うければ受付で別の職を紹介されてたぞ。」
わ、わぁ、親切対応~ですね~。
「あはは、そうなんですか~。良かったです。本当になれて。・・・あの今日話なんですが。」
「おお、そうだスマンな。話が逸れてしまった。拾ってくれた遺品の話だったな。」
「はい。」
「よし、詳しく話を聞こうか。」
それから俺は今日の行った場所とオークとの戦闘。戦闘が終わってこれを見つけたことを全て話した。話の途中で、俺が吐きそうになると、メルフィナがフォローするように話を続けてくれた。
「・・・・・そうか。初めてなのに良くやったぞ。」
「ありがとうございます。」
「では、遺品を確認しよう。」
カゴと布を手渡すと、その場で布を開けて血濡れの焼けた服と骨を確認している。
「ふむ。確かに。あと被害者は恐らく明後日には分かるだろう。」
「早いですね。」
「このカゴを見るに中身は薬草だ。薬師か冒険者しか摘んで来ない。だが冒険者なら武器と防具、もしくは戦った跡がその場に残ってるはずだ。おそらく薬師だろう。店の薬師が帰らないとどうなる?」
「店が休みか、店長やら従業員やらが通報する?」
「そうだ。さてと、これで書類の作成も、おっとスマン。最後に身分証を見せてくれ。発見者に名前を書いておく。」
「冒険者カードでいいっすか?」
「大丈夫だ。彼女も頼む。」
俺は胸元からカードを取り出した。
あ、レベル上がってる。メルフィナは、すでに手に持っていた。用意がいいこと。
「ふむふむ、ナオヤっと。・・・・あん?レベル5?・・・な、何をやっとるかバカもんがーー!」
ええ!何か怒られたし!
「すすす、すいません!何で怒られたんすか!?」
「オークの平均レベルはピンキリだが平均は10だ!普通なら死んでるぞ!」
ええ!?そうなのっ!?メルフィナがオススメしてくれたから大丈夫なのかと・・・
メルフィナの方を確認すると、顔を背けている。おい、コッチ向けや。
「彼女は!レベル13。ギリギリ安全ラインか。だが魔法使いだろ。2匹以上を同時に相手していたら死んでいるぞ!」
お前も危なかったんかい!え、今日の仕事の成功ってまぐれなの!?
「す、すいませんでした!以後気をつけます!」
「本当に気を付けたまえ!レベルが上がるまで暫くはスライムか大猪やらの害獣相手にしたまえよ。」
「はい!ご忠告ありがとうございます!」
思いっきり頭を下げておいた。
カラーン、カラーン、カラーン、カラーン
「はぁ、まったく。最近の若い奴らは。・・・もう4つ音か。以上で書類は終わりだ。暗くなるまで拘束してスマンな。」
「い、いえ。大事な用でしたので。」
「じゃあな。おそらく今からギルドに行くだろうが気を付けて帰れよ。あと無茶はするなよ。」
「うっす。ありがとうございます!失礼します!」
会釈をして、詰め所を出てギルドに向かう。
「ナオヤ、知り合いだった。」
「あぁ、うん、この街に来たときにちょっとね。」
「普通もっと時間かかる。」
「そうなの?」
「うん、人の命が掛かってるから自分が疑われる時もある。」
「へぇ、そうなんだ。・・・おいコラ、そんな状況になるかも知れんのに、俺を1人で行かせようとしたんか?」
「ん。」
コイツっっ、あっさりと肯定しやがった!!
「小部屋でデカイ人と2人で話すのはちょっと・・・」
「いや、気持は分かるが、自分が嫌なことは他の人も嫌なんだと思いなさい。」
「・・・ナオヤ、名言。凄い。」
パチパチパチって拍手しない。恥ずかしいわ!
「・・・もういいや。ギルドに早く行こう。腹減った。」
「私も。」
「まったく。ああ、あとモンスターのオススメは、血が出ないとか考慮は嬉しいが、レベルも考えてくれよ。」
「大丈夫。早く強くなる。不快になりずらい。お金になる。私なら倒せる。ワ・タ・シ・なら倒せる。考えての行動。」
ビシッとしてる風のオーラを出してるんじゃないよ。全然決まった顔とかして無いから。無表情のままだから。なんで私なら倒せる連呼した!?大事なとこってか!?
「いや、俺のレベルをね。」
「大丈夫。ナオヤの俊敏性なら愚鈍なオークから逃げれてた。当然私も。」
「いやいや、相手は猪型のオークって知ってたろ。2本足じゃなく4本足状態になって走ってきたら危なかったろ。」
「・・・・・・・・あ。」
あって。なんだ。あって。顔逸らしたよ、マジか。考慮してなかったのかよ。
「さぁ、早くギルドに行く。おなか減った。」
「おい、こっち向け。」
「さあ行こう。」
走りやがった!
「待てこら~!」
ギルドまで鬼ごっこ状態だった。おかげで早く着いたけど、マジで勘弁して。死ぬのって痛いんだからね!!
という訳で守備兵長に怒られました。
次回はギルドへの報告で怒られるかな?どうだろう。




