第十七話 初めての戦闘
久々に短い期間で投稿。
「さて、とりあえず街の外に来たけど、どうずる?」
以前俺がオークと出くわしたとこに行くか?
「一昨日オークがいたのは近くの森。でもおそらく今はいない。昨日他の冒険者が探したらしい。」
「マジか。情報早いね。」
「受付に聞いた。だから少し歩いたとこに行く。こっち。」
「あい了解。」
迷いたくないので着いて行きますよ~。
街道を1時間ほど歩いただろうか。木々が結構増えてきた。少しって言ったじゃん、疲れたわ。
「この辺りを探してみる。」
「何を探せば見つかりそうなん?」
こちとら昇進者だからね。何を探せば見つけやすいのかが分からないです。
「枝が不自然に折れてたり、下の葉っぱが踏まれてたり、あとは動物の死骸?」
「ど、動物の死骸?」
「ん、そう。オークも食事する。」
ああ、そっか。やっぱ怖いなぁモンスターって。
「なるほど。じゃあ、二手に別れる?」
「別れたらダメ。もしオーク会ったら大変。」
そうでした。もし出会ったら俺は・・・・確実に死ぬ。食われる自信しかない。
「普通は盗賊職が前を歩いて偵察する。でも二人だけだから、ナオヤが右探索。左は私。」
「了解。」
普通は盗賊が偵察か。そりゃそうか。調べるの得意そうだもんね。
メルフィナが屈んで低い体勢になってる。
とりあえず、俺も真似して屈む。・・・・アカン・・・この体勢キツイっす。
「これ、キツくない?」
「相手を見つける。私達も見つかる・・・」
「・・・可能性があるわけか。だから極力隠れて探索するわけね。了解っす。」
ふと疑問が湧いた。
「メルフィナ嬢、オークって血出ないって言ってたじゃん?なんで食事なんてするんだ。」
「?」
首を傾げてる。今ここで可愛い仕草は止めてほしい。襲いたく・・・もとい過剰なスキンシップがしたくなるから。
「血肉にならない、なら食事って要らなくない?」
「なるほど。ナオヤは良いことに気が付く。」
「ありがとう。」
「ミュゼール先生に聞いた話。おそらくオークの身体のほとんどは魔力で構成されてる。」
「なんでそう思ったんだろう?」
「異常繁殖と成長の度合いって言ってた。」
なるほど、わからない。
「ナオヤは、おかしいと思わない?」
「何が?」
「オークは人間とか他の動物、モンスターでも繁殖可能。普通、生物というのは近親種じゃないと繁殖できない。」
まあ、遺伝子が近くないだろうし。
「でもオークは出来る。近親種じゃないのに?」
「そう。繁殖できる。でも人間、動物、モンスターには1つだけ共通点がある。」
「?・・・あっ、魔力?」
「正解。魔力なら生きてるモノは、大なり小なり誰でも持ってる。さらに成長速度。雌雄1組が、2ヶ月で50匹になるなんておかしい。」
「確かに。単細胞生物じゃないのにあり得ないな。」
「たんさぃ・・何?」
「スマン、何でも無い。続けて。」
単細胞生物なんて知らないよね。
「・・・雌雄1組が、2ヶ月で50匹。1日約1匹産まないと駄目。」
「だな。生まれたやつが成長して、産めるようになったとしても成長が早すぎる。」
「そう、成長に体が追いつけなくて、普通なら死ぬ。」
「それが出来るから魔力で構成されてる可能性があると。」
「そういうこと。」
はあ、スゲー発想。ていうかそれが正解な気がする。
「あれ?でもなんで食事するんだ?」
「・・・ナオヤ・・・・今日、私の魔力が回復したのは?」
そんな哀れな豚を見るようなオーラを出さんでよ~。
「えっと~、カレーを食べたから~・・・あぁ・・・。」
「寝るだけでも良いけど、大幅に魔力を得るのは食事が一番いい。」
「なるほど。効率の問題か。」
そんな会話をしながら探索していると、何か臭いがしてきた。
「・・・・・これって。」
メルフィナも気がついたみたいだ。
「何かを焼いてる臭い。」
「だよね。行ってみる?」
「当然。もし人間ならライバル。」
「ライバルっすか。」
「そうライバル。もっと早く、広く探索しないといけなくなる。お金欲しい。」
「・・・・・そうね。メルフィナはお金ないもんね。」
本当に切実だ。その日の食費も無いなんて。
「そう。もっと本が欲しい。」
「いや、もっと計画的に使おう。食費を大事にしよう。」
計画的に使わないから今日の食費が無いことになるんだよ!
「早く行く。確かめる。」
「うっす。」
警戒しながら臭いのする方に歩いていくと、茂みから見えたのは、少し開けた場所で焚き火と何かの肉が焼かれている。人影は見当たらない。
「これって。」
「わからない。でも肉は焼き始め。近くに川があるはずだから水でも取りに行ってる?」
「じゃあ、しばらく隠れてるか?」
「そうする。」
メルフィナが伏せながら川の方?を確認してる。俺は逆の方を確認しておく。
パキパキと木が折れる音がする。
「来たっ。」
メルフィナの視線の方を確認する。視線の先にはイノシシが・・・立ってた。・・・・来た。オークだ。
「オークだよね。」
「そう、オーク。」
この異世界に来て、初日に見たモンスターだ。
「で、どうするの?」
「しばらく隠れてる。仲間を確認したい。音は絶対立てないで。」
「了解。けど、俺達のニオイでバレない?」
「たぶん大丈夫。肉の焼ける臭いの方が強いから。オークの食事が終わったら・・・倒す。」
「了解。」
緊張してきた。喉がやたらと乾いてきた。
「仲間は・・・いないみたい。」
「あれか、コロニーから偵察で出てきた奴かな。」
「たぶん、そう。もう少しで食べ終わる。少しずつ音を立てないように移動する。私はオークの後ろに行く。ナオヤは気を逸らすために正面にお願い。」
「お、俺が囮?」
「そう。2人パーティの時は基本的に片方が囮になる。常識。」
「・・・・了解。」
「食べ終わりと同時にオークの正面に出てほしい。もちろんこの距離で良い。」
えっと、10メートルは離れてるかな。あれ、でもオークの後ろの茂みはオークと距離が近い。
「大丈夫か?」
「大丈夫。」
頷いて、移動を開始した。
もう少しで食べ終わる・・・・今だ!
俺は茂みから歩いて出てオークに見つかる。
「ど、どうも~」
オークが何も反応しない。というよりあまりに突然と、俺が普通に出てきてビックリしてる感じ?
オークは意識を取り戻したように、近くに置いてあった槍を持って構え、俺と対峙する。だが遅い。すでにメルフィナがオークの後ろで魔法を放つモーションをしている。
「雷よ!サンダー!」
強い光とともに電気が走った。
ドスン
目を開けるとオークがうつ伏せで倒れていた。
「た、倒した?」
「まだ。」
「えっどうすんの。」
「ナオヤがとどめを刺す。」
「・・・俺が。」
「そう。そうしないと経験値が入らなくなる。レベルが上がらない。」
そうか。俺のために手加減したのか。
「すまん。ありがとう。」
「ん。」
俺は腰にある剣を抜いた。・・・・手が震える。
・・・まだ息がある。生きてるんだ。
「ナオヤ。震えてる。」
「あ、ああ。初めてだからな、生き物を殺すって。」
「そう。私もそうだった。」
メルフィナもか。そうだよな。それが普通だよな。
「でもね。ナオヤ。」
メルフィナの目線が焚き火の方を向いている。焚き火の中、端には・・・・
あれは・・・服?布?血が付いてる・・・・まさか!?
「おそらく食べてたのは・・・」
「言わなくていい!!・・・・頼む・・・」
それ以上、メルフィナは何も言わなかった。
吐き気が止まらない。今すぐ吐きたい!
周りを見ると壊れたカゴがあり、血が付いている。中から草か何かが出ている。想像がついた。これを取りに来た人がオークに見つかり、そのまま・・・・・。
「ナオヤ。・・・出来る?」
「・・・ああ、出来る。これなら出来るさ。」
例えオークが生きるために、生活のために、しょうがなく人間を殺そうが。俺は人間だから。
俺はオークの心臓と思われる場所に力の限り剣を突き立てた。オークは小さな声をあげて絶命した。
「結構キツいな。」
「どっちが?・・・生き物を殺すのが?人間が・・その・・・襲われたことが?」
言葉を濁しながら聞いてきた。
「・・・・両方。」
「そう。どうする?帰る?」
精神的にはキツイがやらないと。これ以上、犠牲者は出せない。
「続ける。」
「わかった。」
「このカゴとかは、どうする。」
「今は置いていく。帰る時にこの辺のモノは全部回収。」
「了解。」
「ここの森の規模ならあと2、3匹いてもおかしくない。また慎重に行く。」
「わかった。」
オークの死体から、倒した証明になる小さいプレートを取っておく。これってドックタグってやつか?
近くの木に目印として布を巻いて、探索を続けた。
獣道を発見した。
二人で獣道に沿って探索すると頑丈そうな塀で囲った屋敷を見つけた。塀の外から見える部分は、荒れてないから今も使ってるみたいだ。表に回ると門があり、金のかかりそうな装飾も施してある。門の前から小道が続いている。
これって街道まで続いてるのだろうか?
「えっと、何これ。結構立派じゃない?」
「ん。」
「なんでこんな森のなかに?」
「たぶん、・・・・・貴族とか商人が作った。」
「はあ?こんな森ん中で?意味が分からん。」
こんな場所に?メルフィナ嬢?何故顔が赤い。無表情なのに照れてるのが分かる。なんで?
「あの・・・・言いにくい・・・・」
「はぁ?」
「・・・・逢瀬用。」
「おうせ?」
「・・・・あ、愛し合う用。」
おうせって、・・・逢瀬のことか!!
「あ、ああ。そういうことか。・・・・なんかスマン。」
「・・・ん。」
メルフィナは恥ずかしそうに下を向いてしまった。
き、気まずいです。
「え、えっと。中入る?」
「・・・入らない。たぶん中には居ない。」
「ですよね。・・・じゃあもう少し探索して帰ろうか。」
「そうする。」
少し気まずくなったが、探索を続けた。探索中、大猛牛や大猪を見つけたが、依頼は受けてないので倒すのはやめた。むやみに倒すと新しい依頼が出ないそうだ。
日が傾いてきた。
「そろそろ帰るか?」
「ん。これ以上は危険。でもおかしい。最低でも、もう1匹いて当たり前なのに。」
「偵察だったなら帰ったんじゃないか?」
「そうかも。だとすると、また明日オークがいるかも知れない。」
「そうなん?一度偵察に来てるのに?」
「そう。普通は新しいコロニーを作るための偵察だから。何度も調べに来る。」
「ああ、なるほど。」
物件は何度か見て、確かめてから引っ越しってか。
「じゃあ、今日は帰って、また明日来よう。」
「ん。」
帰りにさっきの布で印をつけた場所まで来た。カゴと焚き火の中の服なども回収しておく。骨もあった。丁重に布に包み、手を合わせた。
女神様は良い人、もとい良い女神様だったぞ。良い転生しろよ。
「さて、こういう場合って、どうすればいいんだ?」
「街の門番の人に渡す。事情も聞かれる。あと、同じことをギルドにも報告する。」
「なるほど。わかった。」
メルフィナは布を持ち、俺はカゴを背負って街に歩き出した。
行きは胸を躍らせて来たのに帰りはちょっと切なくなってしまった。
主人公、戦ってなくない?とお思いでしょう。
私も書き終えて思いました。




