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記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第一章 『目指すは英雄』
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第十五話 朝食

あまり話が進まない。

階段を降りていると、スパイシーで美味しそうな香りがしてきた。

テーブルには2つのお皿とスプーンを用意している途中のリズさんの背中が見えてた。


「おはようございます、リズさん。」

「おはよう。」

「おはようございます。ナオヤさん、メルフィナちゃん。今日は早いん・・・」


振り返りながら朝の挨拶をしてくれたリズさんが俺達を見て止まった。そして俺とメルフィナを見ながら


「・・・・・ナオヤさんは、やっぱり狼さんで」

「食べてませんよ。」


食い気味に否定しておいた。なのにメルフィナときたら


「温かかった。」

「ちょっ!?」

「あらあらあらあら。」


何言ってんの!その一言は色々と誤解されますよ!?あなた特に無表情で表情が読み取り難いんだから!抗議の視線をメルフィナに向けると


にやり


なっ!こいつ口角が少し上がった気がする。確信犯か!?まさか・・・朝起きてメルフィナのことに気がついたら離れまいと選択肢の1、2、3を考えてたことに気がついていたのか!?


「り、リズさん、俺は不可抗力で添い寝しただけです。」

「そう、一緒に寝ただけ。」

「あらあら、残念ね。」


残念なこと無い。メルフィナが訂正してくれて良かった。しかしなぜこんな訂正が早いんだ?


「ただ、お父さんと子供の時一緒に寝た時以来、男の人と寝たなんて初めて。」

「あらあら~初めてなのね~。」

「ナオヤは初めての人。」


罠だった。人聞きが悪すぎる!


「あ、あの・・・」

「大丈夫です。ちゃんと分かってますから。」


リズさんはイエーイと言いながらメルフィナと手を合わせた。


「ではナオヤさん、メルフィナちゃん朝食を食べましょう。今日はお試しと言うことで、お代は頂きませんので。お気に召したら明日からお支払いお願いしますね。」


と言ってリズさんは奥に行ってしまった。


どうしよう、メルフィナとリズさん、昨日話をしたって聞いたけど気が合い過ぎじゃない?

とりあえず抱えていたメルフィナを席に降ろした。


「あの、メルフィナさん。どういう?」

「昨日、苦しかったから。お返し。」

「苦しかったって、俺が何か粗相をしましたかね。」


覚えが無いのですが。


「昨日、ナオヤがベットに入ってきた。」

「はい。」

「お酒臭かった。」

「それは申し訳ない。」


それは申し訳ない。風呂に入っても酒臭さは取れなかった。つまり酒臭くて寝れなくて辛かったんだな。


「それはまだいい方。」

「え?」

「寝てる時に寒いって言って、私のことをまさぐり始めた。」

「はい?」

「その後、私を抱きしめて組み敷いた。」

「ふぁっ!?」

「もうダメだと思ったけど、そのまま寝てくれた。」


良かったー!一線は越えて無いのね。色々とヤバかったけどっ!もう本当に申し訳ない。

とりあえず土下座しておいた。だって俺が悪いもの。


「気にしてない。もうさっきので許してるから。それに油断してた私も悪かった。」


優しさに泣けてくるね。全然メルフィナは悪くないのに。


「ありがとうメルフィナ。次からは気を付けるよ。」

「次の機会は無いと思う。」


そうでした。くそ!勿体ないことした。っ痛い!


正座してる膝がメルフィナに踏まれている。


「今また変なこと考えた。」

「ソンナコトナイデス。」

「・・・正直者だからこれで許す。」


痛い!一瞬踏まれてる力が強くなった。結構痛いです!



「にしても何でこんなに仲良くなったんだ?」

「昨日、私について話した。ミュゼール先生に魔法を教わってること。」

「ふむふむ、それで?」

「ミュゼールさんに聞いてた。ここのこと。」


わぉ。あの人そんなこと生徒に話して大丈夫なん。


「で、聞いていてどう思ったん?」

「魔法使いというのは未知に興味を抱くもの。そして魔法が得意な者を尊敬するもの。ゆえにエルフも尊敬に値する。それを伝えた。」


ほう、偏見に惑わされないとは感心ですな。それにしても職業によっても考え方って違ってくるのか。商人はエリーを捕まえて売ろうとしてたし。


「それにエリー可愛い。妹にしたい。」


無表情だが頬を少し赤くして、はあはあしてる。あらやだ、この子以外と危険な子だ。でも嫌いじゃない、こういう子。


「わかる。その気持ちよくわかるぞメルフィナ嬢。だがなエリーに歳は聞いたか?」

「?・・・聞いてない?」

「あの子はあれで20歳だ。あまり年下扱いはしないでやってくれ。気にしてるっぽいからな。」


背景に『ガーン!』って書いてる目をしないで。


「それは・・・大変な失礼をした。・・・・昨日頭を撫でちゃった。」


ああ、もうやらかしたのね。ある意味では俺と一緒だ。愛が溢れたのだろう。


「どうしよう。」

「後で謝っておけ。それで許してくれるだろう。」

「そうする。」


足をどけてくれたところで、廊下からトタトタと音がする。リズさんが来るらしいので席に着いた。





「お待たせしました~。」


リズさんが笑顔で二種類のお鍋をカートに乗せて持ってきた。


これ完全にあの香りだね。日本の国民食とも言えるモノだ。


リズさんが俺達のお皿に白いご飯と黄色くとろみのあるものをかけていく。


「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

「メルフィナちゃんもどうぞ。」

「ありがとうございます。・・・これはまさか・・・」

「どうしたメルフィナ?」


声から驚愕がしてるのがわかる。


「これはもしや、カレーですね。」

「あら~知ってるのね。」


俺も知ってるんだが。いや、レシピとかは知らんけど。


「凄いですよナオヤ。まず私のカードを見て下さい。」


バスローブのポケットから冒険者カードを取り出した。


「えっと、これが何か?」

「魔力値の値を見て下さい。」


う~ん、黒が多い。ってことは魔力が回復してない?


「魔力値が回復してないな。」

「そう。私は昨日、限界以上の魔力を使ったから、普通なら全回復までに3日かかる。でもこれならお昼には全快です。」

「そうなんだ。あとで俺も見てみよう。」


冒険者カードをいつでも身に付けておけと言われたけど、流石に今は持っていなかった。それよりも今は


「メルフィナ、今は温かいうちに食べよう。リズさん、いただきます。」

「いただいます。」

「はい、召し上がってください。」


白い米とルーを少し混ぜて食べた。

日本で食べて味とも少し違う?だが、何とも言えない美味さが口いっぱいに広がる。目を閉じて少しだけ、美味さの余韻に浸った。


「美味しい・・・・これ美味しいですよリズさん!」

「良かった。久しぶりに作りましたから心配もあったんです。メルフィナちゃんは・・・大丈夫そうね。」


メルフィナを見ると何も言わずに黙々と食べている。


・・・・嘘・・・・・だろ・・・もう半分以上食べている。


「おかわりもありますから、いっぱい食べてくださいね。」

「ありがとうございます。」


皿に目を戻し、もう一口食べる。うん、やっぱり美味い。


「美味しかった。・・・・おかわりをお願いします。」

「ふふっ、作ってよかったわ。」

「なんでだ!?早すぎるだろ!」


時間が飛んだのかよ!


「ナオヤ。私は今まで旅の途中、何回かカレーを食べたことがある。でもこれは絶品中の絶品。この美味しさに埋もれたい気分。だからいっぱい食べる。邪魔しないで。」

「お、おう。」


気迫が・・・気迫が籠ってる。


「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」


受け取ると、次は少しゆっくり食べている。というか恍惚としている。今度は味わって食べるのね。


「これって珍しい料理なんですか?」

「久しく作りましたが、夫がいた時はよく作ってましたよ。レシピはエルフしか知らないと言っていましたが。」


そうなんだ。じゃあエルフって旅の途中でよく出会う人達なん?


「メルフィナ譲よ、何回か食べたって言ってたけど、エルフって旅の途中で結構いたの?」

「いない。売っていたのは人間種だった。」

「どういうことだ?レシピはエルフしか知らないんじゃ?」

「それはたぶん・・・カレーを食べた方が模倣したんじゃないかしら。レシピ自体は誰が作っても同じになるようなモノですし。」


そうか。まあ、パクリがあってもおかしく無いよね。料理だし。・・・美味いなぁカレー。


「とんでもない。これを食べて同じだなんて思えない。それに見てナオヤ。」


カードを見ると魔力値がほぼ満タンまで回復している。


「うわっ、何これ。」

「凄い。今までのカレーは時間が掛かってた、これは即回復。」

「なるほど。」


パクリでもそれなりの時間短縮だが、これは即効性があるのか。しかも美味い。素晴らしいな。


「まあ、気にしないで食べて下さい。冷めちゃいますよ。」

「そうでした。おかわりお願いします。」

「はいはい。」


なんだかリズさんが、お母さんって感じだ。子供に戻った気分だ。


貰った皿のカレーを見ながら少し子供時代を思い出した。母さんのカレーも美味しかった。


・・・・本当に。ここに来てまだ3日しか経ってないのに。もうホームシックか。


「ナオヤさん、どうかしましたか?」


おっと、顔に出てたらしい。色々な覚悟が出来てないな。気をつけなければ。


「何でも無いですよ。美味しいなぁと思って。」

「・・・・そうですか。良かったです。」


ちょっと間があった。リズさんは勘が良いみたいだから、何か感じたかも。メルフィナは・・・・・黙々と食べている。何も気がついてないようだ。というかこの子、色々と大丈夫か?食い過ぎで今日モンスター退治が行けないとかは嫌なんだが。


「えっと、本当に美味しいんですよ。ありがとうございます。それにしても何で今日はカレーにしたんですか?珍しいモノでしたら食材とかも高かったのでは?」

「ナオヤさんのおかげで纏まったお金が入りましたし、食べたいと思ってたんですよ。そしたらメルフィナちゃんが魔力切れで倒れたと聞いたのでエリーちゃんと相談して、調度良いから作っちゃいましょうって。」


なるほど。本当に優しい人達だ。


「そうでしたか。ありがとうございます。だそうだ、メルフィナ嬢よ。」

「うっ。」


メルフィナは空気を呼んだのか、おかわりしようとした手を止めて黙った。


「・・・私のためにありがとうございました。御馳走様でした。」

「あら、おかわりは良いんですか?」

「・・・・ナオヤとモンスター退治に行くので、食べ過ぎないようにします。」

「でも三杯目いこうとしてたよね。退治に行くの忘れてたか?」


スィっと視線を流し、顔を横を逸らした。完全に忘れてたらしい。





「ふう。俺もお腹いっぱいになりました。御馳走様でした。」

「どういたしまして。今日の帰りは遅くなりそうですか?」

「いえ、今日はモンスター退治と街周辺の地形とかを知りたいだけなので夕方には帰りますよ。」

「そうですか。お夕飯はどうしますか?」

「私は食べたい。」

「メルフィナ嬢よ。なぜ君が答える?」

「お金ない。ご飯は食べたい。お願いします。」


・・・・俺が払うのか?


「今日さ、モンスター退治じゃん。それなりにあるよね、報酬。」

「それはわからない。ギルドにある依頼に簡単なのが無かったら困る。モンスターからの剥ぎ取り品、もしくは核でしかお金が稼げない。」

「そんなに報酬って違うの?」

「違う。核は数が無いとお金にならない。剥ぎ取り品で、ゴブリンのはお金にならない。オークのならお金になるけど、ナオヤは実戦慣れしてないなら戦うべきではない。」


マジかい。ならしょうがないのか。


「わかった。今日は俺の初パーティ組んだ記念だからな。奢ってやる。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。で、何が食べたいんだ。」

「カレー。」


うん、言うと思ったけどね。


「リズさん、お願いできますか?」

「ええ。出来ますよ。・・・・・ですが少し値が。言いにくいんですが30銅貨ほどしますけど。」


メルフィナに聞こえないように耳元で言ってくれた。


「大丈夫です。それでお願いします。記念日ですから。」


やっぱり普通の食事より高いのか。でも30銅貨であの味なら安いだろ。


「じゃあ部屋に戻って準備してきます。メルフィナは服ってどうした?」

「昨日エリーに洗濯を頼んだ。」

「そっか。じゃあリズさん、その分も出かける前に払います。」

「ナオヤ、いいの?」

「今さらそんなこと言うなよ。俺らは仲間。だろ。」

「・・・ありがとう。」

「子供は遠慮するな。大人に甘えりゃいいんだよ。」

「私は成人してる。」

「・・・そうだったな。じゃあ着替えて、ここに集合ってことで。よろしく。」


俺は準備をしに、自分の部屋に向かった。


次回は戦いまでいけるはず。短いだろうけどね。

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