第十四話 朝、起きて
今日も短いけど区切りが良かったので
カラ~ン
鐘の音が聞こえた。
朝。朝かぁ。昨日飲んでた分、まだ眠い、目を開けたくない、頭が痛い。完全に二日酔いだ。まだ寝ていたい。
そう思っていると、ギシ・・・・ギシ・・・とゆっくり何かが動き、俺の体の下から這い出ようとしている。窓からの陽光が眩しいので、ゆっくりと目をあける。
そこには、紫色の髪の毛が陽光に照らされ、煌いていた。
なんだ、この状況は?
すぐに目を閉じて思い出してみる
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
あっ
そうだった。昨日はメルフィナをベットに寝かせてた。思い出したよ。で、そんなことも忘れて帰ってきてベットに入ったんだ。そりゃ温いよね。人肌ですもんね。心地良かったです。
さて、どうしよう。幸いにも、まだこちらが目を覚ましたことに気がついてないようだ。
「んっ、ふう」
耳元で声がして、色々と危ない。耳元でそんな声させないで欲しい。
「ん、んう」
俺を起こさないようにゆっくり抜け出そうとしているようだ。とりあえず、昨日のようにバスローブは脱いでないようだ。少し安心した。
「ふうっ、む~」
まだ俺の体の下から抜け出せないようだ・・・・・ふむ、選択肢だな。
1、成人してるとはいえ、少女と言える女の子が密着している状態をこのまま楽しむ。
2、寝ぼけたフリをして、しっかり逃がさないように抱きつこう。
3、このまま色々と悪戯しようか。
あれ?割とゲスなことしか選択肢にないのだが。やはり俺はへたれでは無いらしい。
「んむ~、ん?・・・・ナオヤ、起きた?」
おおっと、選択肢が急に追加された。
4、今起きたフリをして寝ぼけながらも謝る
ぬぅ、これしか選べなくなった。
起きたかと問われて1、2、3が選べなかった俺は、やはりへたれかも知れない。
「う~ん、あ、おはようメルフィナ。」
「おはよう。起きたのなら退いて欲しい。」
「おっと、ごめん。」
素直に横に避けて、メルフィナに目を向ける。目に入ったのはバスローブ姿だった。
バスローブが少し乱れて・・・色々見えそうで・・・・大変よろしいと思います。
「メルフィナさんや、どうしてバスローブ?」
「?昨日ここの店主と話した・・・から?」
うん、よくわからない。
「昨日、リズさんと話したの?」
「話した。介抱してくれたのがナオヤって聞いた。起きたの遅かったから泊まるように言われた。」
「あ、そうですか。・・・何で俺の部屋のままだったの?」
「お金無いって言ったらナオヤの部屋ならタダで良いって。ニコニコしてたの気になったけど。」
「あの人はいつもニコニコしてるから気にしないでいいよ。」
「そう。」
と言っても、これはわざとですね。リズさんってば俺をからかって楽しんでる節があるし。俺は役得ですけどね。あれ?避けたのにメルフィナがベットから動かない。
「起きないの?」
「起きたい。だけどお腹が空いて力が出ない。」
「リズさんに頼めば作ってくれると思うよ。」
「・・・・お金がない。」
「金がないって、どうした?」
「昨日はミュゼール先生に支払う分しか持ってなかった。」
「そうなのか。じゃあ宿屋に置きっぱなしか。」
「・・・・・・ない。」
「・・・は?」
え?この子いま『ない』って言いましたよ。
「どういうことでしょうか?」
「お金・・・ない。」
「うん、理由は?」
「本と・・・・装備品と・・・・宿屋代で無くなった。」
「・・・・金は計画的に使おうよ。」
「・・・はい。」
寝ころんでるし、表情が無いせいか、反省してるように見えないが、一応してるようだな。
「わかった。朝飯代は俺が持ってやる。」
「ありがとう。」
「ただし、条件がある。」
「なに?」
「今日一日、俺のモノになれ!」
メルフィナは驚愕の表情を・・・出さないが、雰囲気は出している。少し顔が赤い。
「それはひどい。」
腕で体を守るように組む。一部強調される部分が出来た。
ふふふ、これを見るための策略だ!
「何か誤解があるようだが、言い方が悪かったな。わざとだが。」
「誤解?・・・わざとなんだ。」
「わざとだよ。・・ゴホン、え~言い直しますと、今日俺とパーティを組んでくれ。」
「・・・・なんで?」
寝ころびながら首を傾げている。これ以上可愛いことをしないで頂きたい。これ以上やられると空中でバスローブを脱いでそのまま飛びつきたくなる。
「俺は実戦らしい実戦ってしてないからな。事情があって今より強くならないといけない理由が出来た。」
「強く?」
「そうだ。つまりレベルを上げたい。」
「今のレベルは?」
「3だ。」
「・・・この辺だと頑張っても1週間で10くらいまでしか上がらない。」
「1週間か~。けっこう掛かるな。」
「当たり前。ここは始まりの街。この辺りの強いモンスターは、昔から英雄に憧れる人達が倒しちゃって今はいない。」
あ~、なるほど。憧れが強いだけにみんな頑張って倒しに行っちゃってるわけね。
「10以上のレベルから急に上がりづらくなる。10以降は1つ上げるのにも3ヶ月かかった。」
「3ヶ月?!」
「普通はそんなにかからない。この辺りのモンスターが弱すぎて上がらなくなっただけ。でも10の区切りごとにさらに上がり辛くなると聞いたことがある。」
「そうなんだ。」
そうかぁ。レベルを1つ上げるだけで3ヶ月。1年で4上げるのが限界か。この辺りならね。
ある程度上がったら強いモンスターのいるところに行かなきゃならんか。
「ちなみに私はレベル13。」
「おお。凄いじゃないか。」
「えっへん。」
腰に手を当てながら威張っている。寝ころんでるし、表情ないけど。可愛い子だな。
「よし!そういうことで今日は一日よろしくな!」
「よろしく。」
「じゃあ、飯頼みに行こうぜ。」
「わかった。」
わかったと言いながら起きない。起きようとしているのか身じろぎはしている。
動きが止まった。今度は両手を上に出した。何をしているのだろうか?
「何をしてるんだ?」
「おぶって欲しい。」
「は?」
「わりと本気で動けない。」
え~、お腹が空いて力が出ないって本気だったんかい。
「おぶって行くのは良いのだが、その前にバスローブが乱れてるのを直してくれ。リズさん達に誤解される。」
「別に気にしない。成人してるし。」
うん、微妙に異世界の倫理感が分かりません。
「あ~俺が気にするからお願いできる?」
「わかった。」
言いながら腰紐を締めなおして、また両手を上げた。
俺は戸をあけてからベットに戻り、メルフィナの背中と足を持ち抱えた。いわゆるお姫様だっこである。
「すまんな、この方が運びやすいんでな。首に手を回してくれ。」
「わかった。」
正直こちらの方が運びやすいってのは嘘だ。どちらも同じ位の運びやすさ加減だ。だが、こちらの方が安全に降ろしやすいのだ。
それに首に手を回してもらうことで、お互いの顔が近くなるのだ!一挙両得だ!むしろ後半が大事だがな!!
そう思ってたら首に痛みが走った。
「なんか良からぬこと、考えた?」
首を抓られたようで、今も抓られ続けている。
「何も考えて無いですよ。」
「本当?」
「ホントウデス。」
「・・・・嘘っぽいのでこのままで。」
マジか。結構痛いんだが。
「わかりました。このまま行きましょうか、お姫様。」
「・・・・よきにはからえ。」
抓ってる力が弱くなった。
お姫様ってのが、ちょっと嬉しかったのかな?
そう思いながら、部屋を出て、階段を降りて行った。
4月入ったので更新頻度落ちると思います。
気長に待っててください。




