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記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第一章 『目指すは英雄』
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第九話 魔法の教え

いつもより少し長くなった。

メルフィナが練兵場で腕を広げている人の元へ歩いていく。


「やあ、メルフィナ!元気にしていたかい!」


声がデカイな。なんか魔法使いなのに体育会系の匂いがする。これがこの人の普通なのか?


「はい。ミュゼール先生。本日もよろしくお願いします。」

「うむ、いつも礼儀正しいのは良いが、もう少し砕けた話し方でも良いぞ!」


普通なんですね。普通に会話してますもの。ミュゼールって言うのか。熱い感じが何とも・・・。


「む、メルフィナよ。今日は人数が少ないな。何故だ。」

「オークが出たといってました。皆そちらに行きました。」


背景にドドーン!って感じの表情をし、膝から崩れ落ち、手を着いて項垂れている。


「・・・・私は・・これしか稼ぎがないのに。」

「先生も偶には外に討伐など行けばよろしいかと。」


まあ一人2銀貨なら10人来れば20銀貨か。そりゃ街の外には行かなくて良いのか。


「・・・外は・・嫌いだ。」


今度は体育座りになって顔を隠すように座っている。かなり落ち込んでいるようだ。

メルフィナに近ずき、ミュゼールさんに聞こえないように事情を聞いてみる。


「メルフィナさん、どういうこと?」

「先生は、街から出ると気弱になってしまいます。」

「・・・・大丈夫なのか、この人が先生で。」

「そんなこと言わないでください。初心者から上級者まで教えられる腕を持つ凄い先生ですよ。」

「マジでか。」


今の状態だと、とてもそんな風には見えないんだが。あ、立ち上がってきた。


「はぁ、しょうがない。4銀貨入るだけでも良しとするか。まだ蓄えはあるし。さて、君の名前は何と言うのかね?」

「ナオヤと言います。昨日冒険者になりました。よろしくお願いします。」

「ふむ、見たところ魔力値は高そうだが、職は魔法使いか?」


・・・・本当に凄い人っぽいな。見ただけで分かるなんて。


「いえ、ギルド職員の方に薦められましたが、冒険者となりました。」

「なに?ギルドカードを見せて貰ってもいいか?」

「はい。」


胸ポケットからカードを出して先生に渡した。

カードには、ステータスの数値は書いてないがメーターが書かれている。自分は分からないが先生は分かるのかな?


「どうでしょう?」

「正直、勿体ないと思うな。レベル3でこの魔力。これなら大半は成長しても魔法使い向きだろう。」


そうか。・・・まあしょうがないよな。これは弱い職から英雄っていう、俺のロマンだからな。


「だが、良いんじゃないか?レベルが上がると別のステータスが上がる奴もいるしな。」

「そうなんですか?」

「魔力が高くとも、剣術の練習をしていればレベルが上がった時、腕力や体力の上がる幅が大きい場合もある。」

「じゃあ、本人の資質だけではなく、訓練でも上がる値は違ってくるんですか?」

「そういうことになるな。でなければ魔法使いの上位職に魔法戦士などは無いからな。」


上位職?初めて聞いたよ?


「あの、上位職って何ですか?」

「上位職は、その者の資質や訓練によってなれるものだ。レベルが上がると勝手に変わる者がいるが、その場合は資質だな。レベルが変わらずとも変わる者は訓練をしたものだな。ちなみに低レベルでも上位職の者もいる。天才って奴だな。」

「じゃあ、冒険者も上位職ってあるんですか?」

「聞いたことはないな。職が冒険者のものはレベル20ほどになると転職するものが多いからな。やはりスキルの威力が弱いのは痛いのだろう。」


そうか~。まあ、うん。転職できるから今は問題ないだろう。


「だからな、謎なのだよ。この街の英雄とは冒険者が職だった。そして皆、魔王を倒しているのだ。どのようにして魔王を倒したのやら。」


女神様、フォレスニア様、大変です。ここの英雄は皆、魔王を倒したそうです。本当に魔王を倒さずとも英雄になれるのでしょうか?今思えば、魔王倒す以外は、何かしら人に被害が出ないとなれない気がします。英雄になるために被害出ろ、とか願ってたら人としてダメな気がします。やはり魔王を倒すしか英雄への道は無いのではないでしょうか・・・



「まあ、英雄のことなど気にしてもしょうがない。さあ、1人2銀貨くれたまえ。そしたら魔法教室を始めよう!」


・・・先生が元気いっぱいです。女神様、今は考えないようにします。


「よろしくお願いします。」

「お願いします。」


メルフィナと2人、革袋から2銀貨をだし、ミュゼールさんに手渡した。


「ありがとう。じゃ、始めよう。メルフィナは雷系を覚えたいと言っていたな。イメージは固まったか?詠唱は大丈夫か?」

「はい。」

「では、やって見せろ。」

「はい。・・・・・」


何やら小さい声で聞こえないが詠唱しているようだ。俺も詠唱やら呪文とか覚えたいのだが。


「ナオヤは、何を覚えたい。」

「俺は魔法の使い方すら分かりません。」

「なに?どういうことだ。日常的にフレイムくらい使わなかったのか?」


フレイム。名前からして火だよな?


「村では魔法を使わずとも暮せていたので。」

「随分と平和な村だったのだな。まあいい。メルフィナの魔法を見たら、初級の知識から教えてやる。」

「よろしくお願いします。」


俺とミュゼールさんの会話中にメルフィナの詠唱が終わったらしい。手を前に突き出し声をあげる。


「・・・・雷よ!サンダー!」


メルフィナの手が光った!

が、雷?と言うか静電気っぽい何かが、手から1メートルくらい伸びたように見えた。

メルフィナは無表情ながら悔しそうな空気が出ている。


「はい、やりなおし。という訳で行ってらっしゃい!」


ミュゼールさんは、持っていた杖でメルフィナの額を小突くと、メルフィナは身体を傾けさせた。


「危なっ!」


何とか倒れるのを受け止めて、メルフィナを見ると寝息を立てていた。


・・・・・何で寝てるん?


「よく受け止めた。流石だな。俊敏性も高かったからな。」

「あの、どういうことでしょう?」

「ん?魔法の修行?」

「寝てるんですが?」

「ああ、そうだね。そこから教えなきゃね。その子を置いてこっちにおいで。」


おいでと言われたら行かなくてはなるまい。メルフィナのしているマントでメルフィナを包んで丁寧に寝かせた。



「で、どういうことでしょうか。」

「うむ、魔法ってのはイメージが大事だ。それは分かる?」


頷いた。確か女神様が言っていた。イメージが大事になりますね。と。


「イメージをな、心の中で固めるんだ。だけど中々上手くいかない。つい色々と考えてしまう。だが夢ならどうだ?」

「夢?・・・夢なら何でも考えれば出来る?」

「そう。夢なら何でも出来る。正直詠唱ってのもイメージを固める一因でしかない。自分がどうしたいかってね。」

「うん?てことは、詠唱って要らないんですか。」

「極端な話はね。まあ、これが魔法初級編での話。ちょっと見てな。2通りのフレイムを見せてやろう。」


ミュゼールさんが『フレイム!』と唱えると手の平から火が噴き出した。


「これが1つ目。次は詠唱ありのフレイムね。」


今度は小声で何か言いだしたが聞こえない。そして『・・・・・フレイム!』と唱えると手から火の球が出て、手の平に留まっている。


「どう?結果はこうなる。」

「えっと、違いは分かりましたけど、どうしてですか?」

「ふふ、火の精にお願いしたの。火を留めて下さいって。詠唱ってのは精霊へのお願い事って感じね。」


つまり精霊っているの?お願いして魔法の形が変わるのか?


「あの、精霊っているんですか?」

「確認はされていないわ。」


・・・・・わけが分からんぞ?


「だから始めに言ったでしょ。イメージって。火の精に詠唱でお願いして形を留めた、ってイメージよ。詠唱によって自分の中のイメージを固定したのよ。」

「つまり、思い込みってことですか。じゃあ、最初から練習して、フレイムは火の球だって思っていれば?」

「火の玉が出るでしょうね。」


なるほど。詠唱には自己暗示って意味も含んでいるのか。


「さて、問題はあなたの職が冒険者ってことね。」

「えっ?」

「何でも覚えるかわりにスキルの威力は3~6割。だからイメージする時は、常に威力が高い様にイメージしないと魔法使いと同じ威力は出せない。威力を同じにする分、魔力の消費も激しい。」


そうか。威力ね。でも威力はイメージと魔力の籠める量で違うのか。


「それは大丈夫ですよ。レベルが上がれば、そのうち問題は無くなりますよ。」

「そうか。じゃあ、見本で見せたフレイムからやってもらおうかしら。壁を用意するから、そこに撃ってね。」

「分かりました。」


ミュゼールさんが『ウォール!』と唱えると地面からレンガの壁が生えてきた。


スゲーな。土系魔法ってやつか。



とりあえず、手を前に構えてみたが・・・・


「・・・・あの、魔法ってどう出すんです?」

「ああ、そうだったわね。初めてだもんね。・・・・そうねぇ、自分の中の空気を手から出すイメージかしら?」

「なるほど。やってみます。」


つまりあれか。アニメ、漫画のように『気』ってのを体中から集めて出す感じか。


「詠唱が必要なら自分で考えてね。個人で詠唱って違うもんだからね。」

「うっす。・・・・行きます。」


もう一度手を前に構えて、体中から『気』を集めて出す!ってイメージをしながら


「行け、フレイム弾!!」


すると手から火の球が飛びだし、壁に直撃した。壁は見事に崩れ去った。


つい弾って付けちゃった。言いたくなるよね。


などと思っていると、途端にどっと疲れて膝を着いてしまった。




「ぷはっ、あはははは!何今の?凄い威力じゃん!」


なんかめっちゃ受けてる。笑ってらっしゃいますがな。


「あ~、面白かった。さてカード見せて。今ので、どの位の魔力消費したか確認するから。」

「あっはい。」


胸ポケットからカードを取り出した。魔力値の赤いメーターが半分近く黒くなっている。ミュゼールさんが後ろから覗きこむ形でカードを見てくる。


あっ、当たってますがな。何とは言いませんが。


「見せてみ~。ほう、凄いじゃない!レベル3で、あの威力を撃って半分で済んでいる。やっぱ才能かしらね。」


才能とは少し違うかなぁ。某週刊雑誌の有名な漫画をアニメで見ては真似してたし、夢でも練習してたし。


「あ、スキル欄にフレイムって書いてる。」

「そう、なら良かったわ。完全に覚えたみたいね。日常で使えるもんだから、しっかりイメージして威力の調整をしなさいよ。」

「はい、ありがとうございます。」


そっか。これで覚えたことになるのか。良かった。


「さて、火系はこれでいいかな。あとはイメージで形に変化も入れてみなよ。」

「変化ですか?」

「私はフレイムに蛇の動きを付けたわ。魔法名はそのままスネークフレイムよ。」


ミュゼールさんがスネークフレイムと唱えると大蛇程の火が出てきた。

そのまま蛇のような動きでミュゼールさんに巻きついていく。


「本当に生きてるみたいですね。」

「そうね。頑張って蛇の動きを観察したもの。」

「熱くないんですか?」

「籠める魔力は抑えてるから、温かいってところよ。」


はぁ、凄いな。・・・・あれ?


「今、詠唱しませんでしたね。」

「そりゃそうよ。自分の中でイメージは固定してあるし、魔法名も付けたし。魔法名さえ言ってしまえば出るように訓練したもの。苦労はしたけど、今の私にとっては簡単に出せる魔法の一つよ。」


なるほど。努力ゆえの結果か。


「変化させた魔法ってスキル欄に載るんですか?新しい魔法ですよね?」

「載ってないわよ。」

「えっ、何でですか?」

「さあ?あくまで私自身はフレイムの一種だと思ってるからじゃないかしら?他の人は乗ってる人もいたし。」


ミュゼールさん自身も知らないのか。まあ、カード製作者ではないもんね。




「さて、次は・・・」

「う・・・んにゅ・・・」


メルフィナの方から声が聞こえた。見るとメルフィナがよろけながら立っていた。


「あら、起きたわね。メルフィナ!どうだ。いけそうか?」

「ふぁい。」


若干寝ぼけながら返事をしている。無表情なのに眠そうって、可愛いな。守りたくなる。

ふらふらとしながら、こちらに近づいてきた。


ミュゼールさんが『ウォール!』と唱えて、地面からレンガの壁を生えさせた。


「じゃあ、やってみな!」


メルフィナは、瞼を擦って眠そうだが小さい声で詠唱しだした。


「さてナオヤ。あんたが次に覚えるのは武器防具を奪う魔法よ。あの俊敏性だ。盗賊向きでもあったろ?」

「よくお分かりで。でも奪うって、何のためですか?あんまり盗んだり奪ったりって、したくはないんおですが・・・。」

「オークやゴブリンといった系統は、武器の扱いに長けてる者もいる。武器と防具の重要性が分かってる。だから武器さえ奪ってしまえば大半は逃げてくれるのよ。」

「なるほど。」

「それに丸腰相手なら怖さは無くなるでしょ。傷の付いてない武器や防具は高く換金できるし。」


一挙両得ってことだな。


「それにね、これを唱えて奪えなければ、あまりにレベル差があるってこと。戦う指標になるわね。」


つまりこれで奪えないってことは、レベルの差があるから、あったら逃げろってことか。俺にとって一番大事なことな気がします。聞けて良かったよ。一応、死にはしないが死ぬほど痛いからな。極力避けたい。


お、メルフィナの詠唱が終わったらしい。


「・・・・雷よ。サンダー。」


気合は無いが、最初と同じようにメルフィナの手が光った。

さっきと同じで静電気っぽいが、壁まで8メートルくらいだ。短時間で距離が凄い伸びた。

メルフィナはそれでも悔しそうだ。


「良し、距離はまあまあ。あとは威力だ。特別にあたしのサンダーの映像付きの夢にしてやる!行っといで!」


ミュゼールさんは、持っていた杖でメルフィナの額を小突く。


「あうっ」


と言いながらメルフィナは身体を傾けさせた。


「またかいっ!」


倒れるのを受け止め、マントでメルフィナを包んで丁寧に寝かせた。


「せめて寝かせてから、やってあげて下さいよ。」


はっはっはっはって、笑ってるんじゃないよ。





「ところで、メルフィナは何で夢へと直行させるんですか?」

「メルフィナは理論タイプだからね。考えるのがダメなんじゃないよ。イメージとのバランスが取れてないのさ。」

「考えすぎてイメージが無いと。」

「そういうことだね。私の見本を見て魔法をすぐ使えるから、魔法使いとしての能力は高いはず・・・なんだがね~。イメージが無いから魔力を込めても威力が伴わないのよ。」


ふむ、威力を出すには籠める魔力とイメージが大事ってことか。


「さて、ナオヤの番だね。やってみようか。」

「よろしくお願いします。」


ミュゼールさんが詠唱しながら『クレイドール!』と唱えると地面から人型の土が出てきた。・・・・・この人型、メルフィナなんですけど。


「すいません、なぜメルフィナなんでしょう。」

「近くに居たからイメージしやすくって。」

「そうですか。・・・・後でこれも教えてください。」

「・・・・悪用しない?」


・・・・いや、一瞬ですが、ゲスなことも思ったけどね。・・・・・しませんよ。俺の崇高な目的のために使いたいのだ。


「しません。誓います。」


この時の俺は澄んだ瞳をしていると思う。


「すごい目がキラキラしてるんだけど、怖いくらいに。まあ悪用しないって言うなら良いか。」

「よっしゃーーーー!!!」

「・・・・なんか怖いなぁ。」


ミュゼールさんがちょっと引いてるけど気にしない。


「はぁ、まあ時間も無いから次いこうか。」

「はい!!」

「うん、気合いが入っててよろしい!じゃあ見てな。」


ミュゼールさんは、メルフィナ型の土人形にナイフを持たせてから離れ、手を突き出し『ロブ!』と唱えると突き出した手のなかに、土人形に持たせていたはずのナイフを持っていた。


「さて、これがさっき言った武器防具を奪う魔法よ。一瞬で相手に近寄り、武器を奪って来るイメージよ。他には指定したものを奪いやすいように、ウェポン・ロブとプロテクト・ロブがあるけど、イメージが固まってればロブだけで十分よ。」

「うっす。ありがとうございます。」


ミュゼールさんは、メルフィナ型の土人形にナイフを持たせながら説明してくれた。


「さぁ、やってみな。相手を丸腰にしてやるって思って!」


相手を丸腰、何もさせない、何もかも奪いとる!!そう強く、強くイメージした。


「行きます。・・・ロブ!!」


うぐぅっ、苦しい!!


結構な魔力を消費したらしい。魔力を籠め過ぎたのか、目を瞑って膝を着いてしまった。でも手にはナイフの感触がある。成功だ。でも何か別の感触もある。これは土か?目を開けると、そこには小さいが土の山があった。


なんだ?


メルフィナ型の土人形を見てみると・・・・・・全裸だった。


・・・・・・・

・・・

「ふぁっ!?」


えっ、あれっ?いや、確かに何もかも奪いとるって思ったけどもさ!全裸の状態はイメージしてないよ!


「あはははははははっ!まさか丸腰に、とは言ったが全裸とはっ!恐れ入ったよ!」


また受けてるし。笑わせるつもりじゃないからね。あと笑うなら静かに笑って下さい。メルフィナが起きて見ちゃったら怒るよこれ。


「いや~素晴らしい。これなら指定せずとも武器防具、その他何でも奪える。優秀優秀。さあカードを確認したまえ。」


胸ポケットからカードを取り出した。


「スキル欄にロブ、ありますね。魔力値はさらに半分になりましたね。」

「ならよし。じゃあ魔力値的にはこれが最後だ。君の覚えたいと言っていたクレイドールを教えよう。」

「お願いします!!」


まだ目が霞むが気合が入る。これさえ覚えればあれが作れる!!


「さて、そうだな。土の系統クレイドール、これのイメージは泥遊びだ。」

「泥遊びですか。」

「そうだ。魔力で土を柔らかい泥にして、何でも形に出来ると思えば良い。手始めに私が2度見せたウォールをやってみろ。」

「わかりました。」

「ああ、魔力が少ないからイメージは砂山でもいいぞ。」

「了解です。」


魔力で土を柔らかくして~。・・・砂山・・砂山ね。


「ウォール」


土が10センチほど盛り上がった。


「うむ、見事。まさか初心者が土を触らずとも使えるとは。」

「えっ?」

「本来土魔法の場合、初心者は土を触って唱えるんだがね。やはり優秀だな。試してすまなかったな。」

「いえ。村で泥遊びは良くしてましたので、イメージしやすかったんですよ。」

「そうか。よし、ではウォールの応用、クレイドールもいってみよう。魔力は少なくなってるし、せっかくだ。全裸のメルフィナ土人形に服を着せてくれ。」


忘れてたよ。早く何とかしないと怒られる。


「了解しました。」

「好みの服にしてもいいぞ~。」

「好みの服なんて・・・了解しました。」


今はこれしか思い浮かばない。

メルフィナ土人形に手を突き出し、目を閉じてイメージを固めた。服のイメージは難しいため、閉じたまま唱えた。


「クレイドール!」


魔力が尽きかけているのか、かなりだるく目が開けづらい。それでも何とか目を開けて確認してみる。


全裸のメルフィナ土人形は、冒険者ギルド案内係と給仕もしてくれるメイドの服を着ていた。


「ほう、ギルド案内係のメイド服かね。」

「はい、メルフィナに似合うかなと。」

「確かに似合っているな。お茶を入れてもらいたい。」

「でしょう。」


ミュゼールさん分かってらっしゃる。最初は苦手な感じだったけど、良い人だとよくわかった。




「さて、カードはどうなってる?」


そうだった。確認しなければ。胸ポケットからカードを取り出した。


「スキル欄にウォールとクレイドールを確認しました。魔力値はほとんど無いですね。」

「そりゃそうだろう。ナオヤの使ったのはどれもクオリティが高かったからな。魔力がよく保ったものだ。今はかなり眠いだろう。」

「はい、かなり。」

「では、今日はもう終わりだな。端に行って寝ていろ。馬車の時間が来たら起こしてやる。」

「ありがとうございます。」



「ん、うんにゅ。」


メルフィナが起きたらしい。


俺は練兵場の端に行き、壁を背にして目を瞑って下を向いた。


今日は魔法を4個も覚えれた。フレイム、ロブ、ウォールにクレイドール。どれも実践に使えそうだ。これから戦い方を考えなきゃな。


そう思いながら意識が落ちて行った。

主人公の秘かな野望に一歩前進。

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